佛法山 大巌院 | Blog 安房国再発見

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館山市大網に、浄土宗の寺院、大巌院(石川龍雄住職)があります。


慶長8(1603)年、安房国の領主・里見義康が32石を寄進し、

雄譽霊巌 (おうよれいがん) 上人が開祖となり、開かれました。
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雄譽は、千葉の大巌寺の3世で、ここは現在の淑徳大学ゆかりの寺院です。

館山の大巌院を開いた後、江戸城の真正面に霊巌寺を開き、

霊巌島(霊岸島=現東京都中央区新川)の地名の由来となりました。

霊巌寺は明暦の大火で焼失した後、深川(江東区)に移転し、現存しています。

さらに、京都知恩院 32世として中興の祖となり、

御影堂や日本一の大きな梵鐘を建造しています。

幕府御取立の重要人物だったと思われます。


左下は、大巌院にある雄譽上人の墓(館山市指定文化財)。

京都知恩院、東京霊巌寺、千葉大巌寺、ここ館山大巌院に分骨されています。

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ところで、大厳院には国際的な史跡があります。

雄譽上人が建立した「四面石塔」 (千葉県指定文化財)には、
東西南北の各面に、朝鮮ハングル・中国篆字・和風漢字・印度梵字で

「南無阿弥陀仏」と刻まれているのです。
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しかもこのハングルは、現代韓国人は読めず、

建立当時もすでに使われていなかった古ハングル「東国正韻式」とのこと。

韓国の大学の張榮吉(チャンヨンギル)教授は、この碑を見て、

「これが韓国にあれば国宝級。あるいは国際宝」と驚嘆しました。


NPO法人安房文化遺産フォーラム の愛沢伸雄代表は、

かつて高校の世界史教員だった時、この地域教材をテーマとして、

日朝関係史にかかわる調べ学習の授業を実践 しました。


碑が建立された元和10(1624)年は、秀吉の朝鮮侵略で拉致してきた人々を

朝鮮に帰還させる「第3回朝鮮通信使」、つまり「回答兼刷還使」と呼ばれている外交事業でした。

また、文禄の役から「三十三回忌」にあたる年でもあることが分かります。

こういった歴史を学んだ高校生たちは、

異国で亡くなった朝鮮人や戦没者を供養し、平和祈願をこめて

建立した石塔ではないだろうか、とまとめレポートを記しました。


※詳細は、愛沢伸雄著

『足もとの地域から世界を見る~授業づくりから地域づくりへ』

に収録されています。ご希望者はコチラ


歴史教育者協議会 を通じて報告されたこの授業実践は、

国内外から高い評価を得て、その後の日韓交流 につながっています。


さらに来月には、ソウル平和博物館主催の韓国教員平和研修が、

来夏には、第9回日中韓青少年歴史キャンプが、館山に訪れる計画です。


ぜひ、地村保志さん夫妻や蓮池薫さん夫妻、曽我ひとみさん夫妻、

横田めぐみさんのご両親らにも、「四面石塔」に参拝いただき、

拉致被害者の早期帰還と日朝関係の回復をともに祈りたいと願っています。


大巌院の本堂に入ると、雄譽上人の筆による「大巌院」の額書があります。
宝珠様式と呼ばれる書体は、高位の方だけが使用を許可されていたようです。
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後に、弟子が聞き語りで著した「雄譽霊巌伝記」によると、

朝鮮通信使がこの書を褒めた、との記述があります。


その頃、江戸霊巌島にいた雄譽上人が刷還事業に関わっていたと仮定すれば、

たとえば日光参拝の折、海路で館山に寄港した可能性も否定しきれません。

もしこれを裏付ける史料が見つかれば、歴史が変わってきます。

ナゾは深い!!


ところで、大巌院の本堂には、素晴らしいステンドグラスが施されています。

創建400年を記念し、奉納されたものです。仏教寺院では全国でも珍しいのではないでしょうか。
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とくに夕方、西陽の差し込むと涅槃図が美しく輝き、まさに西方浄土の様相です。
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朝陽のさしこむ東面には、蓮華の池が鮮やかです。
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葵の御紋のついています。左は何でしょう?

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左下は、お経の版木です。ここは壇林といって、お坊さんの学校だったのです。
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文化の薫り高い大巌院は、素敵なまちかどミニ博物館です。

住職夫人の石川順子さんのステンドグラス作品をはじめ、

世界的に活躍する王子江 (オウスコウ)画伯の仏画や、

南房総市の正林寺の大串大慈 住職の作品などが展示されています。
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日韓関係史ガイドつき「四面石塔」見学をご希望の方は、

NPO法人安房文化遺産フォーラムのスタディツアー をお申込みください。