毛沢東政権下の激動の中国を生きたバレエダンサー、リー・ツンシンの半生を描いた映画「小さな村の小さなダンサー(Mao’s Last Dancer)」が2010年8月に日本公開されました。』映画の旧タイトルは『毛沢東のバレエダンサー』。
少年期より共産主義国家の英才教育を受け、新天地で希望と愛をみつけ、やがて家族との別離を覚悟して亡命を決意するひとりのダンサー。バレエを見たこともなかった少年が家族のためにバレエを始め、そして踊り続けることで国と家族との永遠の別れを決意。自由の代償に苦悩しながら、家族写真を肌身離さず持ち、家族のために踊ることを誓い舞台に立ち続ける...。
リーを演じるのは、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして活躍する、ツァオ・チー。劇中でも『白鳥の湖』をはじめとした、本格的なダンスナンバーを披露しています。また、バレエシーンの構成には、オーストラリア・バレエ団の数多くの作品を手掛けた振付師、グレアム・マーフィーも携わっています。そして彼の恋人役には2000年映画「センター・ステージ」でヒロインを務めたアマンダ・シュル（写真右手）。
【ストーリー】
中国山東省の小さな村に生まれたリー・ツンシンは優しい両親や大勢の兄弟たちと共に、貧しくも楽しい少年時代を過ごしていました。リー・ツンシンが11歳になったある日のことです。村の学校に北京から役人たちがやってきました。彼らは、毛沢東夫人で元女優の江青が文化政策による英才教育で突然、北京舞踏学校の研修生に選ばれ、リーは村中の喜びと両親の涙を背に北京へと旅立ちます。
大都会・北京の舞踏学校に入学したリー・ツンシン。厳しいレッスンと仲間たちとの寄宿舎生活。愛国心をあおる特訓にリー・ツンシンは反発します。彼はバレエを続けるだけの落ちこぼれ生徒でした。
数年後、チェン先生が隠し持っていたクラシックバレエのビデオをリー・ツンシンに貸し与えました。彼は初めて観る本物のバレエの素晴らしさに感動し、生まれ変わったようにレッスンにとりくむのでした。ところが、ある日、チェン先生は江青の文化政策に逆らったという疑惑をかけられ、拘束されてしまいます。それは永遠の別れを意味していました。 ―― 時は移り、江青達四人組は断罪され、国内は改革開放政策が実現されようとしていました。
青年となったリーに思わぬチャンスが舞い込みました。訪中したアメリカのバレエ団の招きで、彼はヒューストンのバレエ団での研修に参加することになったのです。次第に頭角を現し始めたリーダンサーの代役をつとめ、成功を収めます。そして同じダンサーのエリザベスと出会い、恋に落ちます。そんなとき中国政府から帰国を命じられてしまいます。リー・ツンシンは自分の未来を信じ、亡命を決意します。それは家族との別離を意味していました。
アメリカに残る意志を告げたリーは中国領事館に監禁され、強制送還されそうになります。彼の亡命という行為は大きな波紋を呼び、メディアに報道され、中国とアメリカ間の国際問題に発展していきます。
映画「小さな村の小さなダンサー」
【スタッフ】原作＝リー・ツンシン 監督＝ブルース・ベレスフォード 脚本＝ジャン・サーディ 振付＝グレアム・マーフィー
【キャスト】ツァオ・チー／グオ・チャンウ／ホアン・ウェンビン／ジョアン・チェン／カイル・マクラクラン／ブルース・グリーンウッド／ジャック・トンプソン／アマンダ・シュル ほか