大人げない大人になれ! | つれづれに…

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成毛眞さんといえば、パソコンのWindowsで有名なマイクロソフト・ジャパンの元社長。(現在は、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。様々なベンチャー企業の取締役や顧問を兼任されています)

成毛さんが社長を務めていた1990年代は、パソコンの急激な低価格化と個人への普及を背景に、飛ぶ鳥を落とす勢いであったマイクロソフト。成毛さんもIT系の雑誌をはじめ、メディアへの露出も多かったですね。インタビュー記事などからも、相当面白そうな人だ、と感じていました。

著書には、「本は10冊同時に読め!」などがあり、その考え方には個人的に共感するところがありました。 そんな成毛さんの最新作が「大人げない大人になれ!
(私が好まない「~になりなさい」というタイトルではなく、「なれ!」っていうのがとても良いですねぇ!)

成毛さん自身が自他共に認める大人げない方(?)なので、いったいどんな内容なのか、と思わず読んでしまう私。
うーん、期待を裏切りませんねぇ。ニコニコ


本書は、成毛さん自身のことももちろんですが、成毛さんが今までであった「とんでもなく大人げない人たち」のエピソードがたっぷり楽しめます。

例えば、成毛さんが初めてマイクロソフトの米国本社にいった時のこと。

   最初に目に入ってきたのは、口から血を流して廊下に
   倒れている社員だ。

   この会社は大丈夫なのかと不安になったことを覚えている。
   (中略)
   まさかと思ったがそのとおり、廊下に倒れていた男が
   ビル・ゲイツ本人であった。


血に見えたのはハンバーガーのケチャップ、そして倒れているのではなく仮眠していただけ…あせる
(ちなみにビル・ゲイツが来日したとき、彼はSPやスタッフの目をかいくぐり、いきなり失踪。マクドナルで列に並んでハンバーガーを買っているところを発見された…)

また、健康のために始めたはずのゴルフだったのに、意地になって練習場に通い詰め、一時期にはプロゴルファーでも考えられないくらい大量の打ち込みを毎日欠かさず行い、なんと1年でシングルプレイヤーになったソフトバンクの孫正義さんや、

マイクロソフトの伝説のプログラマー稲川幸則はフェラーリ好きが高じて、フェラーリを何台も所有し、
   今度はどのモデルを買ったんだ?と聞けば
   フェラーリの米国支社ごと会社ごと買っていた…

とか、
サーファーで無類の女好き、自らのマリファナやLSDの使用経験を公言したノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリス(多分、日本なら完全にアウトですね)の逸話などなど。

こういった人たちを称して、成毛さんはこう語るのです。

   子供の持つ好奇心やユーモア、
   夢中になって突き進む真っ直ぐさが、
   大人にこそ求められているものなのである。


そんな成毛さんが、「大人げなさ」がなぜ大切なのか?を語るときのキーワードが「ネオテニー」。
ちょっと専門的になりますが、「ネオテニー」とは、動物が胎児や幼児の持つ特徴を保持したまま成長する過程を指したもの。そして、このネオテニーは、体や脳の発達が遅れる一方、器官の特殊化や機能の固定が遅れるので、多様な環境に対応しやすくなり、生物の進化で重要な役割を演じているのだそうです。
(その意味では人間は他の動物に比べて成熟するまでに極めて長い時間がかかる動物ですね。だからこそ、変化に対し知恵で順応出来たのかも知れません。)
つまり、変化出来る(成長出来る)期間をできるだけ長く取れば、環境に柔軟に対応していける、という主張ですね。

   成長可能な期間とは、
   学習可能な期間と考えることが出来ると思う。

   これまでに得た、わずかばかりの知識や知恵に
   満足していてはならないのである。
   子供のように、好奇心や柔軟性、何かを学ぶことへの
   意欲を保持することが必要だ。

   大人になるということは、自らの歩を緩めてしまうことに
   なりかねないのである。


いつまでも子供の発想を持ち続けることこそが、変化に対応するための「ネオテニー」だと言っているのです。

そのために重要なのが「夢中になること」。
実際、著者はファイナルファンタジーⅪにハマリ、会社にもあまり行かず(社長なのに…)、プレイ時間は2年間で6,000時間を超えた(単純計算で1日8時間以上…ガーン)そうです。
外界との連絡もシャットダウンしていたため、部下がゲームの世界の通信機能を使って会議の招集連絡をしたという嘘のような逸話がある…
著者は、その考えをビジネスにも持ち込み、ゲーム感覚でマイクロソフトの戦略を考えていたそうです。

   自分を最大限に活かしたいと考えるのであれば、
   夢中になれることを探すか、
   仕事自体を夢中になれるものに置き換えてしまうのがいい。


そして、過激な発言は、まだまだ続きます。

   思い切って一貫性を犠牲にせよ!
   我慢するな!

あげくには

   目標を持つな!
   期限ギリギリ体質は悪くない!
   キャリアプランは持たない!

結局は、自らに課した目標やプラン自体が、自分自身を制限してしまうのだ、と著者は語るのです。
さらには英会話についても、いらない!といいます。

   英会話などというものに時間を浪費してはいけない。
   英語を話すことが避けられない状況に身をおけば、
   自動的に上達するものだ。
 
   むしろ、外国のエリート層と話をしていて恥をかくのは、
   自国の歴史や文化を知らなかったときだ。


読書についても(著者の蔵書数は半端ではありません! 自宅と別荘は本とレコードで埋まっているそうです)、

   読書についての勘違いが二つある。
   一つは、本は始めから最後まで全て読まなければならない。
   もう一つは、読んだ内容は覚えていなければならないということ。
   子供の頃にこんなことを考えながら本を読んだ人はいないはずだ。
   
あ、これ先日の「右矢印べんり速読術 」と同じこと言ってますね。

さらには「失敗しない方法」について、

   自分が失敗と認めなければ、それは失敗ではなく、
   いつかは成功につながっていくのである。

と語る。
そのためには、

   鈍感であることは、相当に重要な要素であると思う。
   にぶければにぶいほどいいのである。
   失敗しないための方法があるとすれば、
   自分に大きな刺激を与えて、感覚のセンサーを
   バカにしてしまうことがいい。

うーん!得意げ

さらに、タイムマネジメントについても、

   私がたったいま思いついた時間術を授けたいと思う。
   飽きたり、他のことをしたくなってきたら我慢せずに
   すぐ次のことへ乗り換える。その名も一点集中浮気型時間術。

うーん、なるほど! 「一点集中浮気型時間術」かぁ、と読んでいると、最後に突然

   この項を飛ばし読みもせず最後まで読んでしまったあなたは
   すでに数分の時間を無駄にした。
   私もこんなふざけたことを考えて時間を無駄にした。
   今後はそんなことがないようにしたいものである。

と締めくくる…あせる


うーん、このノリ気持ちイイ! この爽快感は何なのでしょう?

でも、読んでいるうちに気がつきました。
これってまるで釈迦の教えのよう(だいぶトーンは異なりますが…)。
何かにこだわらず、ただ今この時を生きる。
そこには、「大人げ」という色眼鏡は存在せず、あるがまま、感じるがままの世界がある。
妙に納得してしまいました。

さらに本書の最後には、著者おススメの「大人気なさを取り戻す」本の紹介!
どこまでも、面白い人です。しかし実は熱く、そして真剣です。

   若者の使命は新たなことに挑戦していくことである。
   そのためには、将来を楽観的に信じなければならないし、
   過去の独善的な考えに支配されてはいけないと思うのだ。