卒業論文紹介:日本の第9条とスイスの永世中立を比べて | AT POMONA COLLEGE

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LA郊外のリベラルアーツカレッジでの大学生活

みなさんこんにちは!そして、ご無沙汰しております。。。
前回の更新から一ヶ月も経ってしまったというなんとも許せないこの状況ですが、、、近況報告(そして言い訳)ということで、今日は(このブログに手を回しきれなかった最大の理由だった)卒業論文について少し話したいと思います!

ポモナでは、4年生になると基本的に “senior capstone” と言って卒業論文 (senior thesis) や senior projectをやることになっています(中にはPoliticsなど capstoneのない専攻もありますが)。 秋学期か春学期のいずれかで終わらせる専攻が多いですが、Historyや(私の専攻の)International Relationsのように、まるまる一年間をかける専攻もあります。

そんなわけで一年間かけて書き上げた卒業論文ですが、つい先日final draftを提出しました。

こんな感じです:



題名は、ご覧の通り、

Why Foreign Policy Principles Persist: Understanding the Reinterpretations of Japan’s Article 9 and Switzerland’s Neutrality

です。

題名そのままですが、内容は、書き始めの時は安倍政権の平和安全法制のためかなりタイムリーな話題だった日本の憲法第9条と、それと並行して、スイスの永世中立についてでした。

具体的なリサーチ・クエスチョンは、「なぜ、日本とスイスは(時代遅れな外交政策であるにも関わらず)憲法第9条と永世中立を破棄・置き換え(policy abandonment)ではなく、繰り返し憲法の解釈変更(policy reinterpretation)をするのか」という内容でした。

日本の憲法第9条についての議論はみなさんご存知かと思いますが、簡単に説明すると、 日本は憲法成立以来、 自衛隊の保持・海外派遣・そしてつい最近は集団自衛権への参加と、徐々に military capability(軍事能力?)を拡大してきています。そして、拡大するたびにその活動を合憲とするために憲法第9条の解釈を変更しています。そして繰り返し解釈を変更し続けた結果、戦争放棄・戦力の不保持を規定する憲法第9条の存在にも関わらず、集団自衛活動にまで参加できる自衛隊を保持している、という(解釈がどうこうという話はさておき)おかしな状況にあるわけです。
そして、スイス。実はスイスも似たような状況なんです。スイスの場合「問題」の外交政策は永世中立(permanent neutrality)です。スイスも、長年にわたって neutrality の意味をいろいろと変えてきています。もともと、軍事・政治・経済を含めた全面での中立性(absolute neutrality)だったのですが、その後軍事・政治面限定の中立性(integral neutrality)に変更し、最近では国連の平和維持活動や他国との軍事演習に積極的に参加する(正直どこが中立なのかよく分からない) “active neutrality” という解釈に変わっています。

スイスでは日本の第9条のようにneutrality を憲法内で定義していないと行ったように多少の違いはもちろんありますが、全体的な傾向としては共通する点がたくさんある!ということで、二国を比較することにしました。

リサーチの結果、いろいろ発見しましたが、一番面白かった発見は
① 政府は政府内・政党間などの議論よりも世論(public opinion)に圧倒的に敏感で、国民一般のサポートがないと感じると、政府は憲法改正を自粛することが多い(でも法律による解釈変更は結構気軽にしてしまう)ことと、
② 世論も、第9条・永世中立放棄は反対していても、解釈変更によって新しく増えた軍事能力・戦力自体は賛成の場合が非常に多い、という不思議な矛盾があることでした。

(リサーチクエスチョンの答えにあんまりなっていませんが。。。そこは気にしないでください)


と、そんなわけで一年間かけてぼちぼち70ページの卒業論文をなんとか書き上げました。(100ページ以上書いている生徒もいましたが)70ページも書こうと思うともちろんとっても時間がかかるわけですが、実際、卒業論文を書く全過程の中で一番大変だったのは、まず、research methodの形成と、あとは情報収集でした。特にスイスなんて、資料がどれもこれもフランス語かドイツ語でしか存在しないから(中学生の時以来全く触っていない片言のフランス語を使い、ドイツ語の教授と協力しながらなんとか資料をかき集め解読し 。。。)大変でした(笑)(←資料が英語じゃないことくらいもっと早く気づけよ、って感じですよね。)リサーチをしていた時間と、実際卒論を書いていた時間を比べると、きっと8:2くらいだったんじゃないかなと思います。

まぁ、それでもなんとかこなして、ようやく安心して卒業できそうなところまで来ました。

卒業論文は1、2週間後に大学のウェブサイトにアップされる予定なので、その時また報告するので良かったら読んでみてください!(もちろん英語ですが)

それでは、また。これから残りわずかではありますが、卒業するまではちゃんとブログを更新するようにするので引き続きよろしくお願いします。


ゆき

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