卵アレルギーとインフルエンザの予防接種。 | 子肌育Blog アトピーに負けない生活。

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●卵アレルギーとインフルエンザの予防接種。


ども、こんにちは。橋本です。


少し前に、麻疹のワクチン接種についてお話しました。


麻疹は重い病気です。


卵アレルギーがあっても、お医者さんと相談して、1歳を過ぎたらなるべく早く予防接種を受けてください。 ということを伝えたかったんですね。


そして、その記事に、こんなコメントをいただきました。


「インフルエンザの予防接種も卵で出来ているらしいですが?」という質問です。


たしかに、日本で作られているインフルエンザワクチンは、卵を利用して作られています。


ただし、「卵を利用して」作られているのであって、インフルエンザワクチンは、「卵から出来ている」わけではありません。


こんな説明だけだとわかりにくいので、少しインフルエンザワクチンの作り方について、お話しますね。


まず。


基本的に、ワクチンは、ウイルスを人工的に増やし、注射できる状態にしたものです。


んで、ウイルスは、生きた細胞の中でしか、増えることができません。


そのため、ワクチンを製造するには、ウイルスが増える場所として「生きた細胞」が必要となります。


インフルエンザワクチンでは、ウイルスを増やす場所として、ニワトリの卵を使います。


インフルエンザのワクチンは卵を使って作られる


作り方は、まずインフルエンザウイルスを鶏卵に入れて増やします。


鶏卵といっても、スーパーで売っているような鶏卵ではなく、「発育鶏卵」といって、中に未熟なヒナが育っている状態の卵です。


まだ、卵黄とヒナの中間のような状態。


そこから増えたウイルスだけを取り出し、ウィルスについている卵の成分を取り除きます。


で、ここまででわかるかと思いますが、卵黄を使う作り方からいって、ワクチンに卵白は含まれません。


一般的に、卵アレルギーでは、卵黄より卵白で強いアレルギー症状が出ることが知られています。


さらに、日本のインフルエンザワクチンは、世界的にも高い基準の品質管理の下で製造されています。


そこで、参考になる報告があります。


日本で作られている4社のワクチンのうち、2つのワクチンを調べ、インフルエンザワクチンに卵白が含まれる確率は、限りなくゼロに近い。1)


卵アレルギーは大半が卵白アレルギーであり、日本製のインフルエンザワクチンには卵白は含まれない。つまり、卵アレルギーの子供でも問題なく接種できる。という報告です。


そしてもう1つの報告。


卵白に対してアレルギーをもつ子供のグループ(104人)。


もたない子供のグループ(98人)。


両方のグループにインフルエンザワクチンを接種して、アレルギーなどが出るか比較したテストがあります。2)


結果は、重大なリスクがみられず、両グループに特別な差はなかったと報告されています。


インフルエンザワクチンの製造工程


とはいっても、インフルエンザは、どんどん新型がでてきますよね。


香港なんちゃら型とか、スペインなんとか、とか。


それに対応した新型ワクチンについては、一部海外から輸入されることもあります。


海外製の場合は、検証したデータが少ないので、卵アレルギーのことも慎重に考えないといけません。


インフルエンザがどれぐらい流行しているか、流行しているのは症状が重いインフルエンザか。子供の卵アレルギーの程度はどれぐらいか。


ときにはテストをして、総合的にみながら、接種するか、しないかを決めます。


そして、今後のワクチン開発について。


将来的には、卵を使わない「細胞培養」という方法でのワクチン製造が増えると予想されます。


「細胞培養」によるものは、すでに一部では製造、使用がはじまっていて、犬や昆虫の細胞を使う方法が開発されています。


この製造方法では、もちろんワクチンに卵の成分が混入する確率はゼロ。


そうなれば、卵アレルギーに関しては、まったく気にする必要はないわけです。


さて、まとめです。


日本で製造されたインフルエンザワクチンについては、卵アレルギーをおこすリスクはかなり低い。


新型対応の海外製ワクチンで、卵を使って製造したワクチンの場合、接種は慎重に。


もし海外製ワクチンの使用しなければいけないときは、設備、人員のととのった大学病院などで。


「細胞培養」によって製造されたものは、卵アレルギーをおこすことはない。


インフルエンザの流行状況、重症度。子供の卵アレルギーの程度。ワクチンの製造方法、製造国。


すべての事情を総合的に考えて、お医者さんと相談して決める。


こんな感じが、卵アレルギーとインフルエンザ予防接種のおおまかな現状ですね。


インフルエンザの予防接種は、無理をして打つ必要はありません。


しかし、より危険なインフルエンザが流行した場合は、早めの接種が必要な場合もあります。


重い病気である麻疹の予防接種とは、わけて考えてくださいね。


参考文献:
1) 三宅 健, 三宅 千代美: インフルエンザワクチンには卵白蛋白は含まれていない. 小児科臨床, 54(1): 37-42, 2001.
2) 河原秀俊,森澤 豊,勝沼俊雄,大矢幸弘,斎藤博久,赤澤 晃: 卵白CAP-RAST陽性患児におけるインフルエンザワクチン接種後即時型副反応に関する検討. アレルギー, 51(7): 559-564, 2002.