サスペンスドラマさながら!「戦国時代の民衆」事件簿④[村人らによる陰謀] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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この事件が単純な構造でない点はいくつかあります。

 

まず、訴人(原告)になるべき亀源七が訴人となるのを拒んでいること。

 

次いで、裁判後しばらくたってその亀七自身が不自然な死を遂げていることです。

 

また、右馬の家を検断(家宅捜索)した際、源七が失くしたと思っていた犂のヘラが出てきました。

 

このヘラが、右馬が源七のものを盗んでいたという嫌疑の傍証となったわけですが、陰謀のにおいがプンプンします。

 

つまり、こういうことではないでしょうか。

 

亀源七が原告となるのを拒んだのは、右馬の主張どおり、事実は彼の思い違いであることがわかっていたからです。

 

しかし、“村の利権”を守ろうとする村民らはこれを口実に、右馬を排除しようとしました。

 

だから村人の誰かが源七の家から犂のヘラを盗み、右馬の家に置いて彼を犯人に仕立てあげたのです。

 

亀源七はこの話が冤罪であることを知っていただけに良心の呵責に悩み、領主に真実を話そうとしました。

 

ところが、村人らがそのことを知り、口封じのために源七を殺したのではないでしょうか。

 

当時、名探偵がいたら、おそらくそう推理するでしょう。

 

右馬が村人らによって無実の罪をきせられ、この世から葬り去られた可能性は極めて高いと思います。

 

 

(つづく)

 

【著者新刊情報】『江戸東京透視図絵』(五月書房新社。1900円+税)

編集者「町歩きの本をつくりましょう。町を歩きながら、歴史上の事件を“透かし見る”という企画です」

筆者「透かし見る?」

編集者「そうです。昔そこであった事件や出来事のワンシーンをイラストレーターの先生に描いてもらい、現実の写真と重ね合わせるんです。つまり、町の至る所に昔を透かし見るカーテンのようなものがあると考えてください」

筆者「それってつまり、“時をかけるカーテン”ですね。そのカーテンがタイムマシンの役割を果たしてくれるんですね!」

編集者「まあ、そんなところでしょうか……」

筆者「やります、やります。ぜひ書かせてください!」

という話になって誕生したのが本書。新しいタイプの町歩き本です。

 

【著者新刊情報】『明智光秀は二人いた!』(双葉社、1000円+税)

明智光秀はその前半生が経歴不詳といってもいいくらいの武将です。俗説で彩られた光秀の前半生と史料的に裏付けできる光秀の後半生とでは大きな矛盾が生じてしまっています。そこでこんな仮説をたててみました。われわれは、誰もが知る光秀(仮に「光秀B」とします)の前半生をまったく別の人物(仮に「光秀A」とします)の前半生と取り違えてしまったのではなかろうかと。この仮説に基づき、可能な限り史料にあたって推論した過程と結論を提示したのが本書です。 したがいまして、同姓同名の光秀が二人いたというわけではありません。最近では斎藤道三について「父と子の二代にわたる事績が子一人だけの事績として誤って後世に伝わった」という説が主流になっています。そう、斎藤道三も「二人いた!」ということになるのです。

【著者新刊情報】『超真説 世界史から解読する日本史の謎』(ビジネス社、1600円+税)

 日本史が世界史の一部であることはいうまでもありません。そこで大真面目に「世界史から日本史を読み解いてみよう」と考えました。その結果を最新刊に凝縮させました。 弥生・古墳時代から現在に至るまで、日本は東アジアはもとより、ヨーロッパやイスラム諸国からも影響を受けながら発展してきています。弥生時代の「倭国大乱」から明治新政府による「日韓併合」まで、日本史を国際関係や世界史の流れから読み解きました。

 

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