跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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歴史ファンの皆さんとともに歴史ミステリーにチャレンジし、その謎を解き明かすページです(無断転載禁止)

 「この世をば わが世とぞ思う 望月の」

 

 藤原道長が絶頂期に詠んだとされる有名な和歌(上の句)です。

 

 その道長全盛期の1世紀半ほど前に、やはりわが身の栄華を歌に託した公卿がいました。

 

 藤原良房です。

 

 娘が清和天皇に嫁ぎ、皇族を除き、臣下として初めて摂政になった人物として高校の教科書に登場します。

 

 藤原不比等(前号で詳述)を藤原摂関家の事実上の始祖とすると、良房は道長につながる一族の栄華の礎を築いたといえるでしょう。

 

 その良房は伴(大伴)氏をはじめとする古代の有力氏族を排斥して藤原氏の政治的地位を高めたとされてきましたが、最近の研究で濡れ衣であった可能性が高くなってきています。

 

 それでは彼はどうやって権力を掌握していったのでしょう。

 

 古代史の謎の一つとされる「応天門の変」の真相を探りながら検証してみましょう。

(つづく)

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 女帝である持統天皇との密約説も見逃せません。

 

 彼女は天武天皇の皇后で、夫の死後、息子の草壁皇子に皇位を継がせようとしましたが、皇子が若くして亡くなったため、中継ぎとして自ら即位し、孫の文武天皇にバトンを繋ごうとし、成し遂げます。

 

 その企てに不比等が協力したのです。

 

 こちらは証拠があります。

 

 「正倉院宝物」の黒作懸佩刀の由緒書に「草壁皇子が常に身に着けていたものだが、それを不比等が賜り、文武が即位した際に不比等があらためて天皇に献上した」とあるからです。

 

 これすなわち、不比等が草壁から文武へバトンを渡す役割を担っていたことを示すものです。

 

 当然、そのバックには持統がいました。

 

 以上、不比等の人間関係をみてきますと、落胤説はないにせよ、こうして妻や娘や女帝との華麗なる“女性関係”をフルに活用して右大臣まで昇りつめたことになります。

 

 ただし、彼に政治的力量がなければ、女性たちの信頼を勝ち得なかったはずです。

 

 よって、不比等こそが藤原摂関家の事実上の始祖といえるでしょう。

 

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 32歳でようやく裁判官になった藤原不比等がどうやって朝廷で力をつけていったのでしょう。

 

 まず彼が天智天皇の隠し子だという説があります。

 

 不比等の母、車持国子君(くるまもちのくにこのきみ)の娘与志古(よしこ)は、天智天皇の胤を宿した後に鎌足に下げ渡されたという伝承があります。

 

 『竹取物語』で、かぐや姫に求婚する車持皇子のモデルが不比等だとされるのは、この天皇落胤説にもとづいています。

 

 しかし、これを史実とするだけの確実な証拠がありません。

 

 次は、県犬養橘宿禰三千代(あがたのいぬかいたちばなすくねのみちよ)を娶ったことによる妻のおかげ説です。

 

 彼女は、天武天皇から持統・文武・元明の歴代天皇に女官として仕え、天皇家の信任厚い妻のコネを利用したとされる考え方です。

 

 確かに不比等は娘の宮子を文武天皇の夫人(ぶにん=妻)とすることに成功し、その宮子が首皇子(おびとのおうじ=のちの聖武天皇)を産んで、不比等はその外祖父となりました。

 

 また、もう一人の娘(安宿媛=あすかべひめ)がその聖武に嫁ぎ、臣下の娘で初めて皇后になったのです。

 

 こうした婚姻戦略に妻三千代のコネが大きくものを言ったのは間違いないありません。

(つづく)

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