実は単行本を買っていながら、ずっと読んでなくて、積ん読の本の山に埋もれて未だに発掘できておらず、
電子書籍を改めて買って読みました。
実に面白かったです。
特に人と人との断絶こそ、僕の書きたいテーマでもあるので、
こんな書き方が、と非常に勉強になりました。
本作を読んで、面白くなかったとの声と、
凄く主人公に共感したの声と、感想は二極化しております。
たぶんエンタメ系的なストーリー展開の面白さを期待して読むと、
ヒロインらしからぬ古倉さんに感情移入しにくいから、つまらないでしょうね。
悪人の白羽さんとも同棲しながら男女の関係にも恋愛関係にすらならないし、
パターンをことごとく外した小説ですから。
僕は、この本は主人公が自分をコンビニ人間として覚醒、成長する異化小説と評価します。
普通の世界という主人公には、異界へどう切り結ぶかを発見していく物語なのだ、と。
とても、勉強になりました。
そして、続いて、村田さんのデビュー作の『授乳』の冒頭の、
ただならぬ描写の訴求力にもノックアウトされています。
ネットで検索すると、
村田さんの、インタビュー記事があって、
そこで、こう述べられておられます。
「(自分が教わった芥川賞作家の宮原)先生がおっしゃることってすごく純粋で、高飛車じゃないんです。「読書は、音楽に譬えれば、演奏だ」という小沢信夫さんの言葉を引用して、作家が書いているのは楽譜で、読者は演奏家だ、って。こういうふうに演奏してくださいというのを、隅々まで決めるんじゃなくていい、それより描写を深めることでいろんなふうに演奏してもらえるから、という。それから、読者を下に見てはいけない、ともおっしゃっていました。読者を常に想定して書いたほうがいいけれど、読者は上にいるものだから、上に向かってそこに届くように書かないと、小説が下品になるって」
『授乳』の描写はもちろん、『コンビニ人間』も、
読み手がいかようにも読める作品に、たしかになっていると僕は感じました。
ああ、ここに目指すべき道が続いているな、 と感じとれました。
有り難いことです。
長くなるので、
この話題を明日に続けます。