素敵な詩人を見つけました | 読書と、現代詩・小説創作、物語と猫を愛する人たちへ送る部屋

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小説や詩の創作、猫また大学通信を書いています。Twitterは、atlan(筆名:竹之内稔)@atlan83837218 放送大学在学中。「第8回新しい詩の声」優秀賞を受賞。
 京都芸術大学の通信洋画&文芸コース卒業/慶應義塾大学通信卒業/東洋大通信卒業/放送大大学院の修士全科生修了。

ああ、いいな、と、思う詩と詩人を見つけました。
伊藤芳博さん。
大人になった少年をモチーフに描く詩が特徴のようです。
児童文学が好きで、現代詩も書く僕には同質なものを感じます。

現代詩人の会のwebページにご本人が載せたであろう詩を引用しますね。

      「絵本」

いつも

隣の庭の犬をなでてから家にもどる子どもが

文字よりも先に

絵本の中から飛び出してくる

子どもは僕の指の間をすり抜け

机の下に逃げ込み

砲弾は僕の耳をかすめて

壁にめり込む

母親は

突然のできごとに

泣き叫び

物語は

(母親が知らないうちに)

書き換えられる

次のページには

温かい食事が用意されていたというのに

温かいミルクを飲みながら

僕は

次の場面に

母親を引きずり込む

絵本を閉じる

あとは僕も知らない

子どもは

どこへ行ってしまったのだろう

砲弾の跡も消えていくようだ


僕が書きたいと思っている異化現象を含みつつ、

ありがちな私的な感情の吐露に留まらない世界の広がりもあって、

とても素敵な詩でした。


なぜか、特に目立った賞を受賞されておられないようで、

全詩集も大手の出版社から出ておりません。

それでも、必死で探して、いくつか早速、購入しました。

到着して読んだら、また報告しますね。


詩に関して一つ不思議だなと僕が思うことは、

たとえ素人の駆け出しの人も含めて千人の詩人がいれば、千人分の作品世界かあって、

ほんと詩人ごとに、独自性が現れます。

なのに、小説になると、皆、普通の書き方、普通の作品しか書けない。

(もちろん、最初からオリジナリティのある書き方・文体を持つ天才は必ずいるのでしょうが。)


僕自身が、ここで何度もかいているように、

2年半前までは、詩が書けなかっただけに、その差は何だろう、ととても不思議です。


よく言われる詩は一瞬のダンスで、小説は時間の長くかかる歩行だ、という喩えでは、

到底、納得できません。


脳のどこかにある詩を書くスイッチを僕が押したから、

詩を書けるようになったのだとすれば、

どこかに、本当にオリジナルな小説を書くスイッチがあるように思うんですよね。


きっと、それは赤いボタンで「触るな、危険」と書かれた、たった一つのものじゃなくて、(笑)

いくつもボタンが並んだ中のパズルのように複雑な配置で、さらに決まった順序で押さないと、

解除・発動しない連動スイッチになってるんでしょうね。


一生をかけて、探し続けるほかない、と思っています。