何をやっているんだ!俺は!
あれほど欲望に負けちゃ駄目だ、理性を決壊させるわけにはいかないと思っていたはずなのに。
これではダークムーンごっこの時の二の舞じゃないか!
経験なんて無いであろうキョーコに役に乗じて大変なことをするところだった。
そう反省しながらも、役になりきってこのまま受け入れかねないキョーコに危機感を覚える。
確かに役柄的には間違ってはいないが、それで傷つくのは素のキョーコなのだ。
あまりにも危うい行動に釘を刺さなくては。
蓮は身体を起こし、芝居の終わりを告げるべく声を掛けようとした。
「もが…。」
「蓮。」
しかし、またそれを阻むようにキョーコは蓮の言葉を遮った。
見下ろすと泣きそうな表情で蓮を見上げるキョーコと目が合った。
「私ってそんなに魅力無い?」
その台詞はキョーコの役としての言葉だったはずだ。
それなのに蓮にはキョーコ自身がそう言っているように聞こえた。
「…そんなこと無いよ。」
こんなにも俺を翻弄してやまない君に魅力が無いわけが無い。
君の魅力に気付かない、そんな馬鹿な男を想っているの?
その男は不破?
君はまだあいつの呪縛にとらわれているのか?
「なら、して。」
そう言ってキョーコは蓮に手を伸ばす。
俺は誰かの代わり?
誰かの代わりでもいい、他の男に奪われるくらいならその前にキョーコに自分を刻み込みたい。
他の男を想っているのなら、なおさらキョーコを奪い去ってしまいたい。
たとえ役に乗じるという卑怯な手段でも。
もうその誘惑に抗うことは出来なかった。
「いいよ。でも…。」
それでも、なけなしの理性で初めてであろうキョーコの意思を確認する。
「後悔しない?」
いや、もっと卑怯なのかもしれない。
キョーコ自身が蓮を受け入れたという言質を取りたいだけなのだから。
「しないわ。」
まっすぐ蓮を見て言ったキョーコは蓮の首に腕を絡ませた。
それに応じるように蓮はキョーコを抱き上げ、寝室へと向かっていった。
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