[SB2次]孤独の華 7 | 三日茶坊主

三日茶坊主

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屋外の人気のないベンチまで来ると久遠は振り返った。

「さっきの…、聞いた?」

返事は予想出来ていたけれど、話のきっかけが欲しくて確認した。
予想通りに頷くキョーコ。

「噂の通り俺は、ヒズリ総合病院の医院長の息子で…、跡取りだった。」

ベンチに座り話し出した久遠の隣に、キョーコはおずおずと座った。

「“だった”…?過去形ですか?」
「そう。今、俺は勘当されているから。」

気まずそうな表情になるキョーコを安心させるように微笑むと、久遠は前を向いて淡々と話し出した。

「俺の父がやっていたヒズリ総合病院は大病院でね。父は本当に患者の為を考えて信念を持って医者をしていて、患者が助かるように色々な技術をどんどん取り入れて、それで結果的に大きくなった病院なんだ。

俺は父に憧れて、同じように医者を目指した。

でも“偉大な医者の息子”、“大病院の跡取り”という肩書きで見られるようになって、その肩書きゆえの周囲の人間からの期待というプレッシャーと、嫉妬からくる悪意に段々俺は追い詰められていったんだ。

それでも家族に迷惑を掛けないようずっと耐えて、抑圧された思いは少しずつ俺の中で蓄積されていった。

そしてそれは、ある日とうとう爆発した。」

一旦言葉を切った久遠は、キョーコに顔を向け再び話し出した。

「君が気付いたように、俺には人とは違う力があった。」

そう言うと久遠は右手を前に差し出し、手のひらを上に向けて開いた。
ぐっと眉間に力を入れるような仕草をした瞬間、ぼっと手のひらの上に火が点る。
それを感情の籠もらない目で見た後、軽く手を握ってあっさりと消して見せた。

「あの頃はまだこんな風に制御も出来なくて、ただひたすら力を抑え込んでいるだけだった。

そしてあの日、爆発した感情と一緒にこの力も暴走した。

自棄になっていた俺は、炎の中でこのまま消えてしまおうとしていた。
そんな俺を助けようとして母は炎の中に飛び込んで来て、力の制御出来ない俺は母が炎に巻かれていくのをどうすることも出来ずに、ただ見ていることしか出来なかった。

結局、母を助けることが出来なかった俺だけが助けられて、俺はこうして生き残ってしまったんだ。」