蓮の家へ役作りの相談にやってきたキョーコ。蓮相手に読み合わせをし、気になった部分があればその都度アドバイスを貰いながら役を固めていた。
一息入れようと蓮がコーヒーを入れ直して戻ってくると、キョーコは台本を開いたままソファに寄りかかって眠ってしまっていた。
ここ数日は、連日ハードスケジュールだとは聞いていた。
その上、こんな深夜まで蓮相手に役作りを兼ねて読み合わせをしていたのだ。
疲労がピークだったのだろうとは理解できる。
理解はできるが、しかし、こうも警戒心もなく安心して眠られると、やはり男として見られていないのではないかと落ち込んでしまう。
はぁっと息を吐き、気持ちを切り換える。
キョーコをこのままにしておいては風邪を引いてしまうだろう。
起こして、ゲストルームで寝るように言わなくてはならない。
しかし、以前起こしたように髪を軽く引いてみても、頬をつついてみても、肩を揺すってみても一向に起きる気配はなかった。
仕方がないので、蓮は開きっぱなしになっていた台本を閉じてテーブルの上に置き、キョーコを抱き上げた。
そして、ゲストルームに運びベッドに寝かせ布団をかける。
それからキョーコの顔を覗き込んだ。
やはり、起きる気配もなく熟睡しているようだ。
ふと、キョーコの口元に目が奪われる。
ピンクに色付いた柔らかそうな唇。
誘っているかのように軽く開いている。
その時、蓮の耳元で悪魔が囁いた。
あれだけ揺すっても起きなかったのだ。キスくらいしても気付かないんじゃないか。
蓮はその囁きに負けて、そっとキョーコの頭の横に片手をついて体重をかける。
そうして、そろそろと顔を近づけていった。
その時…。
「…うん?」
キョーコがゆっくりと目を開いた。
敦賀君、ピーンチ!
どうする!?
1.誤魔化す
2.そのままする
3.固まる