蓮の家で色々あった翌日、キョーコはジェリーウッズを見つけ声をかけた。
「おはようございます。ミューズ。」
「キョーコちゃん、おはよう。」
挨拶をしてから、キョーコはさっそく気にしていた事を切り出した。
「あの、ミューズ。
昨日の“他言無用”のお話なんですけど…。
すみません、私、他言無用と言われていたにもかかわらず、ミューズから聞いたこと本人に話してしまいました。
ごめんなさい。」
約束を破ってしまったと勢い込んで謝るキョーコ。しかし、ジェリーウッズからはあっさり許しが下った。
「本人ならいいわよ。
…なるほど、それで蓮ちゃんと付き合う事になったのね。」
「ぐっ、げほっごほっごほっ…。
なっ!な、な、な、なんっ、何で…。」
真っ赤になって、パクパクと口を開け閉めするものの上手く言葉が繋げないキョーコ。
その様子を見てジェリーウッズは一人納得している。
「やっぱりそうなのね。」
「カマかけたんですか!?」
「相手に関してはね。
女の子は恋して愛されてると肌ツヤ良くなって顕著に綺麗になるから、彼氏が出来ればだいたい分かるわね。
プロの美容師ならみんな気付くわよ。」
「うっ、そうなんですか…。」
「キョーコちゃんが綺麗になる切欠になったんだったら美容師冥利に尽きるわね。
だから約束破ったとか気にしないでね。」
「はい。」
その時、蓮のハリウッド進出の話題で盛り上がっている女の子達の話し声が聞こえてきた。
キョーコはそちらに目を向けぽつりと零した。
「本当に私なんかが彼女で良いんでしょうか…。」
不安そうな面持ちのキョーコに、ジェリーウッズは力強く言った。
「蓮ちゃんはキョーコちゃんが良いって言ってるんでしょ?大丈夫よ。
それでも自信がないなら付ければ良いのよ。
女の子はね、いっぱい愛してもらえばもっともっと綺麗になれるの。
きっと蓮ちゃんならずっと大事にしてくれるから、キョーコちゃんはもっと綺麗になれるわね。
だからキョーコちゃんは、自信を持って蓮ちゃんの隣に居ればいいわ。
きっと幸せになれるから。」
大丈夫、頑張りなさいと背中を押された気がした。
そうだ、何もしないでウジウジ悩む位なら頑張ってみよう。
今度こそ逃げないで、蓮に追いつけるように、肩を並べられるように。
キョーコは明るい笑顔で応えた。
「はい!ありがとうございます。」