[SB2次]真実を君に 26 | 三日茶坊主

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撮影でのキョーコの演技に、自分の手中にあると思っていたものがすり抜けていくような、そんな焦燥感にかられた尚は帰りがけのキョーコを捕まえた。
あの演技の真意を問いただそうと発した問いには、役作りでの結果でああなっただけという返事で、他意はないと安心出来るものだった。

しかし安心したのも束の間、キョーコに掛かってきた電話に綻ばせた表情と、続いて聞こえてきた名前に再び胸がざわめいた。

胸のむかつきを解消しようと、以前のように携帯を取り上げてやろうと伸ばした手は空振りに終わった。だが、キョーコの意識が完全に電話の相手から離れ、尚にだけ向いた事で気分は浮上した。

キョーコが敦賀蓮に懐いてはいても所詮この程度なのだ。やはりキョーコの中での大きさは自分が一番なのだと。

ところが、そんな尚の考えをあざ笑うかのように、突然キョーコはパッと赤くなり、今まで言い争っていた尚を忘れたように携帯に意識を奪われた。

「なっ!それは二人の時だけって…。」

『二人の時だけ』?
…どういうことだ!?

そのまま電話相手とやり取りしたキョーコは、電話がかかってきた時の自然に浮かんだ笑顔とは違う営業スマイルを貼り付けて去って行った。
そんなキョーコを見て、尚はようやく自分の間違いに気付いた。

『ショーちゃんさえ居ればいいの』と言っていた頃のキョーコがもう居ないのは分かっているつもりだった。
それでもそうやって過ごしてきた時間の積み重ねで、関係は変わってもキョーコの中で尚の占める割合が一番大きい事を疑った事はなかった。
だから、キョーコは自分のものだと思ってきたのだ。

しかしキョーコの演技から、尚がその全てだったはずのキョーコの世界は、尚が知らないところでどんどん広がっている事に気付いた。
電話でやり取りしているキョーコを見て、その広がったキョーコの世界で大きな割合を占める男の存在も。
そして、もう自分には向ける事がなくなった自然な笑顔をそいつには向けるのだと言うことも。

いつまでも自分のものだと思っていたけれど、既にキョーコは尚の手の中には収まってはいなかったのだと。

そう、ようやく気付いた。