自分の物なんだから何やってもいい・・ってことでもない。




通常、我々が建てる建物というのはお客さんは一人です。

まあ、一人というか一家族とか一つのの会社とかですが・・



お客さんが一人の場合、要望は明確になります。



こうして下さい!

こういう家がいいです!

と、はっきり言ってもらえるわけです。



こういう建物は我々の側からしてもやりやすい・・

そして、やりがいがでる・・

のです。




お客さんの要望を元に、こうしてはいかがですか?

こんな建物はどうでしょう?

などと提案もしやすくなります。



その客さんにそれを気に入ってもらえればいいのです。





住むのが誰かわからない建物の場合はそんなわけにはいきません。

お客さんの購買層を推測して好み嗜好などを予測する所から始めなければいけません。



それをはずしたりすると・・

売れないわけですから大変です。



ただ、お客さんの中にはとんでもないことを要望してくる方も・・いらっしゃるのです。



自分が住む家なんだから自分がいいっていってんだからいいだろう!

というわけなんですね。


お客さんは一人ですからその要望は絶対です。




でもね、そんなわけにもいかんのですよ・・ということもある。






昔、師匠がやった仕事で・・

どっかで見てきた雑誌か何かですっごい格好いい吹き抜けの手摺りがあったそうで・・

吹き抜けの手摺りですから何と言っても安全が第一なはずなのですが。



ところがその手摺りデザイン性ばかりで、安全性などかけらもありゃせんわけです。



何のための手摺りなのかまったく意味不明なスカスカどころか横棒一本の手摺りのみ。



まあ、その横棒が妙に凝っていて格好いいわけですが。

小さなお子さんがいらっしゃるのに落ちたら大怪我じゃすみません。




でも、お客さん、どうしてもそれにしたい!




で、代案を考えるのです。。

ああしたら?

こうしたら?




でも、どうしても気に入らない!



このままがいい、の一点張りです。


私がいいって言ってんだからいいじゃないですか・・





でも、そういうわけには行きません。





危険とわかっている建物など絶対に作れない。

それが師匠の建築家としての信念です・・。





そこですったもんだのあげく・・

師匠は言い放ちました。




では、この仕事はお引き受け出来ません。




この雑誌の方にでもお願いして下さい。





格好いい!

いっぺんでいいから言ってみたい・・





まあ、当時はバブル期・・

仕事はなんぼでもあったから言えたのかもしれませんが。





そういう人だからこそ、今そんなこと言っていても、万が一にでも何かあるとすぐクレーム?

そんな経験を何度も積んできた師匠であったわけです。






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