欠陥・・その2。





いずれにしても、どの欠陥もこれを「絶対に回避する方法」という物は存在しません。

だって故意にやられたらどうやったって防ぎようがない、知らないのは誰も自分がいけないなんて思っていないのですから・・。



ただ、そのリスクを出来うるだけ回避する方法を考えなければなりません。

まず、現場の法定監理者・・現場監督ではありません、何かあったときに責任を取る人、確認申請に名前をのせる人です・・を第三者にする。

第三者というのは工務店やメーカーに紹介された第三者監理事務所などではもってのほかです・・

彼らは工務店やメーカーから仕事を紹介して貰うことで生計を立てている人達ですから、絶対にその工務店やメーカーに不利になるようなことなどしません。

つまり、施工者とはまったく別の利益システムで動いてる人に頼む・・欠陥が発生すると困る人を作る、ということです。



次に、設計者と施工者を分離する。

これによってどちらかのミスや手抜き、無知をもう一方が監視することが出来ます。

もっとも双方が無知であればどうしようもありませんが・・。

設計者監理者でもあればゆうことがありません、監理者は欠陥の責任を負うことになりますし、さらには自分の設計した建物が手抜きされることを喜ぶ設計者など絶対にいない・・はずだったのです、今までは。



大手ゼネコンに工事を頼んだり、大手メーカーで建てるなどというのも一つの手です。

もちろん大手ですから相応に高価にはなりますが、「看板」を掲げている会社というのは欠陥などという風評がたつのを極端に嫌いますし、駄目だとなればどんどん入れ替える人材も資金も豊富にあります。

又、監査機関なども必ず別組織で造っていますので、これはかなり有効に監視をしてもらえます。



性能表示などをとるのも、そこそこに有効です。

ただ、性能表示の検査などたったの4回しかありませんし、検査でわかった欠陥の修正後は見にも来ませんから、そんなことで防げるリスクなんてしれてますが・・。

これは、欠陥が出た場合の処理のために入っておいた方がよい・・ってことになるかもしれません。






ようするに、設計を始めてから工事が完成するまでの間に・・



いかに、工事施行者・・実際に造っている人とは無関係・・利潤が施工者とは無関係の監視者を造るかということです。

つまり、欠陥が発生すると責任が発生して困る人を造る・・ということ。

まあ、一番簡単なのが設計監理施工を別にするということなんですが・・



ところが、これらもが通用しない事態が出てきた・・わけです。

何しろ監視するべき立場の人間が「利潤とは別の何か」のために監視を放棄してしまうのですから。

たぶん、「格好良くしたい」とか「有名になりたい」とかのために。



ようするに、ちゃんとした建築家に頼んだつもりが工務店とつるんでいて、ろくに現場にも行かなくて手抜き・・で欠陥

それどころか、はなから建物など設計する能力もないのに偉そうな顔をしてデザインスケッチだけで建てさせて・・失敗

なんてのが増えている・・ようなのです。




困りました、あまりにも悲しい。

そんな人達こそ実は「賞」なんかをたくさん取ってたりする。

っていうのは語弊がありますね、「賞」などには欠陥だろうが失敗だろうがまったくそんなことは考慮されない ・・っていうかそんなことわかんない。

そして、ちゃんと造っている建物は目新しくはならないので、「賞」の審査員などの目には止まりにくいんです。





先日、某所で天井高が4mもある家を見ました。

居間も寝室も廊下もみんな天井高4m。

なんでもシンプルイズベストだそうで、一切余分な物がなく壁と床と天井しかない、枠や巾木や廻り子などが一切ない、それが全てホワイトです。

写真ではたいそう綺麗です・・が実際は・・

床と壁の間がすいて部屋の向こうが見えます・・光が隙間から入ってくる。

巾木も何もないからです。

建具の廻りが黒くすすけて、角が全て欠けています。

手掛かりがないのに汚れやすい安い壁材で、枠も何もないからです。

中立ちの壁は微妙に斜めに傾いてすでに反ってきています。



こういったシンプルな収まりにしたいのなら、壁中に枠の覆い込みや壁を先施工してアンカーしてから床を張るなどの特殊な工法や、木で4mの立ちを作るには反り止めを考えるか下地をLGSの厚板にするなどなど・・・つまりお金がかかります。

人と違う物をきちんと作るにはお金がかかるんです。

たぶん・・・知らないんでしょう。

書いてありましたね、安価でもこれだけの物が出来るんですって・・出来てないんですけど、ただこうしたいからって造るだけなら子供でも出来ます。

一つ確かなこと・・この人はこの家に欠陥があるとは思っていない、ということ。



そして、工務店もそれを指摘したりはしない・・出来ないんですね。

っていうか、指摘しない工務店しか使わないんですね。

本当に困りました・・悲しい話です。






実は10ほど年前まで、愛知県の設計事務所数は8000台をうろうろしてました。

もちろんこれは登録数ですから、実際には登録だけしてやっていない人や無関係な企業などが便宜を求めて登録したりしているのを全て含めていますから、実際に設計業務を行っている設計事務所は1/2とも1/3とも言われています。

設計事務所登録制になってから何年?よくしらないのですが、少なくとも建築士法が出来て建築士と言う物が出来てからもう50と数年。

つまり40年以上の間に9000の設計事務所・・

それが、バブル崩壊後たった10年ほどの間に、それまでの全設計事務所数以上の設計事務所登録上愛知県にできあがりました。



なんでか、よくは知りませんが、バブル後の不景気による設計事務所の大量倒産もあるのでしょう、ネットやITなどの進歩により仕事がしやすくなったこともあるのでしょう。

昔は1人で設計事務所を開くことなど不可能に近かったのですが、今はCAD・外注システム・MAIL・携帯電話などの進化によって、むしろ1人の設計事務所の方が多いかもしれません。

そういったこともあるのでしょう。

ただ、一つ確かなことは、数が多いということ、急激に増えたということは、経験を積まず能力もなく出来た事務所も多いということです。

能力のない事務所は自分が能力がないなどとは絶対に言いません。

きっとこういう人達の方が口がうまいのでしょう。





しかし、こういった欠陥にならないためには、いったいどうしたらいいんでしょう?

建築家なんて名乗っている人達が自ら欠陥を造る後押しをするなんて・・。






アトリエ繁建築設計事務所HP
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