施工床という魔術。
床面積って言葉は皆さん御存知だと思います。
当たり前なことなんですが、床面積というのは建物の大きさを示すための尺度です。
建物の大きさも、値段も、全てこの床面積を基準にして表示されます、坪当たり○○万円なんてね。ところが・・・、この基準が実はバラバラだったりする・・・、つまり、違う建物との比較が出来ないことがあるんです。
床面積という物にはいくつかの種類があるんですが、
建築面積、延べ床面積、登記面積、などの法定床面積と、そして・・施工床面積。
その最も基準となる物が建築基準法の面積で、これには建築面積と延べ床面積の2つがあります。
建築面積というのは、完成した建物を上空から見下ろした時、見える形・・つまり屋根が1階、2階と重なって見えるはずですが、その見える形の面積のことで、この面積に「階」はありません。
もちろん、単純に言えばそういうことなんですが、細かい算定基準がたくさんあります。それはここでは置いといて、これを元にして建ぺい率などが定められることになります。
延べ床面積というのは、各階床面積の合計で、各階の「床と天井がある部分」の「壁の芯(壁の中心線)で囲まれた範囲」を全て足した物が延べ床面積です。
この延べ床面積を元に容積率などが定められるんですが、この延べ床面積にも当然これも細かい算定基準はあるものの、吹き抜けやバルコニー、外部廊下などは含まれないんです。
そこで、法律を網羅するためにはこれらの面積だけで十分なのですが、建物の値段を出すのにはバルコニーだって造ってるじゃないか!と工務店や住宅メーカーなどが勝手に造った面積があります。
それが、吹き抜けやバルコニー、外部廊下などの建物を造るときに床が発生したり、吹抜けのように床はなくても全体の構造体が必要とされる部分を、延べ床面積に足した面積で、施工床面積と言います。
つまり、この施工床面積という物には法律的な裏付けなどはまったくありません。
それどころか、昔、十数年前まではこんな面積は存在すらしませんでしたし、どの部分をどこまで面積に入れ、どこは除くのかというのは、各社が勝手に造っていますから・・・、なんの根拠もないんです。
ということは、この施工床面積をベースに表示された坪単価・・というものは、建物価格の比較をするのにはなんの役にも立たない・・・ことになります。
冗談ではなく、通常工務店やゼネコンが言う施工床面積というのは先程書いたのが一般的ですが、とある会社では施工床にはアプローチから犬走りまで含む・・、とあるメーカーなどは陸屋根まで含めるところまであります・・。
陸屋根の上は歩けるので床がある・・ということだそうですが・・・、
アホか!屋根じゃん!
なんでそんなことをするのか、というとそれは坪単価を安く見せるために他なりません。
2000万円の家が、A社では施工床面積50坪になり坪当たり40万円ですが、同じ家がB社では施工床面積が60坪になるので坪当たり33.3万円になる・・・ということなんです。
そこで坪単価33.3万円の家!と宣伝をする・・わけですね。
まあ、嘘ではありませんがね。
なんでこの家がこんなに安く造れるんだろう?と思った家は、よく話を聞くと例外なくこの魔術を使ってますね、当社基準の面積による・・ってのが曲者です。
アトリエ繁建築設計事務所HP
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