ひとりじゃない | 新・ユートピア数歩手前からの便り

ひとりじゃない

近代社会の問題は個々バラバラの個人主義をもたらした点にあると思っていましたが、杉村昌昭さんの『分裂共生論―グローバル社会を越えて 』を読むと、むしろグローバリゼイション(統合主義)の方が切迫した問題のような気がしてきました。確かに、「精神分裂症」という言葉を「統合失調症」に言い換える風潮に端的に示されているように、「分裂は否定的意味で、統合は肯定的意味」というのが我々の共通感覚にさえなっています。そして、何時の間にか世界が主にアメリカを中心とした一つの価値観に統合されつつあるのは、正に危機的状況だと言えるでしょう。しかし、そうした悪しきグローバリゼイションが進行する世界の中で、敢えて分裂する主体性が重要だとしても、やはり分裂のままでは問題の解決にはなりません。だからこそ杉村さんも分裂「共生論」を唱えられるのだと思います。


「統合強制」から「分裂共生」へ――これが杉村さんの主張ですが、私が繰り返し述べている「古き村(全体主義)の統一共同体」から「新しき村(個即全・全即個)のマンダラ共働態」へという主張も同じ論理に基いています。勿論、「分裂共生」という言葉が明らかに矛盾しているように、それは逆説的論理に他なりません。