(モデルルーム・リビング)

 

 

不動産屋
「こちらがリビングになります。」

 

優子
「(リビングを見回す)うわぁ、すごい!広ーい!!」

 

 

光一
「うん。たしかに広いな。」

 

 

不動産屋
「そうですね。天井が高いので広く感じられるかもしれませんね。」

 

優子
「ねぇ、ここいいんじゃない?」

 

 

光一
「すぐに決めちゃダメだよ。家を買うかどうかは慎重にならないと。」

 

 

不動産屋
「じっくり決めていただいて構いませんよ。高額なお買いものですから。」

 

 

光一
(あたりを見回す。)

 

 


(光一、部屋の隅っこに、赤い服を着た小人がいることに気づく。
 小人、自分の身長はあるかというくらいの木づちを持ち、壁を殴り続けている。)

 

 


優子
「うわ、すごーい!海が見える!」

 

 

不動産屋
「そうですね。海から近いので、リビングから海が一望できます。」

 

 

光一
(目をこすってよく見るが、確かに小人が木づちで壁を殴っている。)

 

 

優子
「ねぇ、光一、ここいいんじゃない?」

 

 

光一
「うん、・・・あの、すみません。」

 

 

不動産屋
「はい。なんでございましょうか?」

 

 

光一
「えーと・・・、(小人を指さし)この人は何ですか?」

 

 

不動産屋
「この人・・・?
 あぁ、こちらは『モデルルームの妖精』でございます。」

 

 

モデルルームの妖精
(光一たちの話に耳を貸さず、ひたすら壁を殴り続けている。)

 

 

光一
「モデルルームの・・・妖精・・・?」

 

 

不動産屋
「この辺りのモデルルームには必ず現れるみたいですね。
 モデルルームの妖精を見ると、幸せになれるって言われているんですよ。」

 

 

光一
「いや、とても幸せになれるとは思えないんですけど・・・」

 

 

優子
「ねぇ、そんなことより海見えるよ!海!」

 

 

光一
「いや、海もいいんだけど、モデルルームの妖精がいるんだよ。」

 

 

モデルルームの妖精
(殴った壁を触ってみる。首をかしげ、再び壁を殴り始める。)

 

 

不動産屋
「何か気になることでも・・・?」

 

 

光一
「いや、モデルルームの妖精がモデルルーム壊そうとしてますけど・・・」

 

 

不動産屋
「大丈夫ですよ。この家は頑丈なんで、簡単には壊れません。」

 

 

光一
「いや、家の頑丈さより、モデルルームの妖精がいること自体、気になってるんですけど・・・」

 

 

優子
「不動産屋さん、キッチンはどんな感じになってます?」

 

 

不動産屋
「ご案内しましょう。こちらへ。(キッチンに向かう)」

 

 

優子
(ついていく)

 

 

光一
(妖精が気になる。)

 

 

モデルルームの妖精
(光一と目が合い、親指を立てて笑顔。
 再び、壁を殴り始める。)

 

 

優子
「光一、行くよー。」

 

 

光一
「う、うん・・・。」

 

 


(キッチン)

 

 


不動産屋
「こちらがキッチンです。」

 

 

優子
「うわぁ、対面式だー。」

 

 

光一
(あたりを見回す。)

 

 


(光一、部屋の隅っこで青い服を着たモデルルームの妖精を見つける。
 妖精、さきほどと同じ木づちを持って、壁を殴り続けている。)

 

 


光一
「ここにもいる・・・」

 

 

優子
「光一、見て見て!対面式だよ!」

 

 

光一
「いや、対面式もいいけど、妖精がいるんだよ!」

 

 

優子
「いいじゃない、妖精。カワイイじゃない。」

 

 

モデルルームの妖精
(一心不乱に壁を殴り続けている。)

 

 

光一
「いや、カワいくないよ。ものすごくバイオレンスだよ!」

 

 

不動産屋
「お客様。この家は頑丈ですから。」

 

 

光一
「いや、頑丈だからって家のあちこちで壁を殴り続けられていたら、さすがに心配ですよ。」

 

 

モデルルームの妖精
(壁を殴ることをやめ、キッチンの冷蔵庫に向かう。
 冷蔵庫からスイカを取り出す。
 ポンポンとたたいてみて、満足そうな笑顔。
 しかし、木づちで殴ってみても、スイカが割れない。
 ちょっと考え込んだのち、スイカを持ち上げ、壁にたたきつけ、スイカを割る。)

 

 

光一
「ちょっと!モデルルームを!!」

 

 

モデルルームの妖精
(割れたスイカに塩をかけ、食べ始める。)

 

 

不動産屋
「お客様、どうなさいました?」

 

 

光一
「いや、モデルルームの妖精がスイカを壁にぶつけて・・・」

 

 

不動産屋
「申し訳ございません。すべて私共の責任でございます。」

 

 

光一
「いや、どう考えても、あなたのせいじゃない・・・」

 

 

不動産屋
「後で掃除しておきますので・・・」

 

 

優子
「不動産屋さん、寝室はどうなってます?」

 

 

不動産屋
「ご案内いたします。こちらへ(寝室に向かう)」

 

 

優子
(ついていく)

 

 

光一
(モデルルームの妖精をニラむ。)

 

 

モデルルームの妖精
(スイカをかじっているところで、光一の視線に気づく。
 スイカの中から、適当なサイズのものを選び、光一に差し出す。)

 

 

光一
「いや、食べないよ!」

 

 

優子
「光一、行くよー。」

 

 

光一
「う・・・、うん・・・。」

 

 


(寝室)

 

 


不動産屋
「こちらが寝室ですね。」

 

 

優子
「ここもいい部屋ー。」

 

 

光一
(モデルルームの妖精を探す。)

 

 


(部屋の隅っこに黄色に服を着たモデルルームの妖精が3人いる。
 妖精たち、ノミ、ハンマー、ドリルで壁を壊そうと奮闘中。)

 

 


光一
「やっぱりいた・・・」

 

 

不動産屋
「防音設備はしっかりしているので、非常に静かです。」

 

 

優子
「ホントだ、なんの音もしない!」

 

 

光一
(目を閉じてみる。)

 

 


(妖精たちが壁を破壊する音が響き渡る)

 

 


光一
「うるせぇ!!」

 

 

モデルルームの妖精
(道具を置いて一目散に部屋の外に逃げていく。)

 

 

優子
「気に入ったわ!光一、この家にしましょう!」

 

 

光一
「家は申し分ないんだけど、モデルルームの妖精たちが・・・」

 

 

不動産屋
「大丈夫です。
 モデルルームの妖精たちは非力なんで、家が壊れるほど危害を加えることはないです。」

 

 

光一
「いや、そうかもしれないけど・・・」

 

 

優子
「いいじゃない。壊れないんだから。
 不動産屋さん、この家買います!」

 

 

不動産屋
「ありがとうございます。
 では、再び、リビングの方へ(案内する)」

 

 


(リビング)

 

 


不動産屋
「では、ご購入ということでよろしいですか?」

 

 

優子
「いいよね?」

 

 

光一
「うん・・・まぁ・・・(あたりを見回す)」

 

 


(モデルルームの妖精たち、リビングの真ん中にある大黒柱を全員でノコギリを使って切断中。
 また、反対側では、大黒柱にロープをつないで、大勢のモデルルームの妖精たちがロープを引っ張っている。)

 

 


光一
「っ!!」

 

 

不動産屋
「では、ご購入の手続きに移らせていただきます。」

 

 

モデルルームの妖精
(チェーンソーを持ち出し、大黒柱をあらゆる方向から切断していく。
 また、家のあちこちから妖精が出てきて、ロープを引っ張る仲間に加わっていく。)

 

 

光一
「!!」

 

 

不動産屋
「続いてローンの話になりますが・・・」

 

 

優子
「光一、聞いてる?」

 

 

光一
「あ、あぁ・・・」

 

 

モデルルームの妖精
(チェーンソーによる大黒柱の切断完了。
 一方からロープで引っ張り、残った妖精たちは反対側から大黒柱を押す。
 徐々に動き始める大黒柱。)

 

 

光一
「!!」

 

 

不動産屋
「最後に駐車場の話になります。」

 

 

優子
「光一、聞いてるの?」

 

 

光一
「優子、やっぱり考え直した方がいいかも・・・」

 

 

優子
「何言ってるの?」

 

 

モデルルームの妖精
(一方から引っ張る。一方から押す。
 どんどんズレていく大黒柱。)

 

 

光一
「っ!!」

 

 

優子
「光一?」

 

 

光一
「・・・!!」

 

 

優子
「光一ってば!」

 

 

光一
「う、うん。」

 

 


(ついに倒れる大黒柱。)

 

 


光一
「倒れたーーっっ!!」

 

 


(バンザイをしたり、飛び跳ねて喜ぶ妖精たち。)

 

 


優子
「ちょっと光一?」

 

 

光一
「不動産屋さん!大黒柱、倒れましたよ?
 妖精たちは家を壊さないって言ったじゃないですか?!」

 

 

不動産屋
「えぇ?(大黒柱を見る)あぁ、ホントだ。倒れましたね。
 でも、大丈夫ですよ。」

 

 

光一
「大丈夫、って・・・大黒柱ですよ?」

 

 


(倒れた大黒柱をとりかこんで、はしゃぐ妖精たち。)

 

 


黒い大男
「(部屋に入ってくる)こぉら!お前らぁ!!」

 

 

モデルルームの妖精
(方々に逃げ去る。)

 

 

黒い大男
「(倒れた大黒柱を見て)まったく、派手にやってくれたよなぁ。
 でもよぉ、俺がやってきたからには大丈夫だからよぉ。
 よっこらせっと・・・」

 

 


(黒い大男、大黒柱のあったところに立ち、天井を支える。)

 

 


光一
「えーと・・・この人は・・・?」

 

 

不動産屋
「はい。彼は大黒柱の精霊です。」

 

 

大黒柱の精霊
「まぁよぉ、俺が支えてればよぉ、この家は大丈夫だからよぉ。
 安心してくれよな。」

 

 

光一
「はぁ・・・。」

 

 

大黒柱の精霊
(天井を支える)

 

 

光一
「・・・。」

 

 

大黒柱の精霊
(天井を支え続ける)

 

 

光一
「・・・え?この人はずっとこのままなんですか?」

 

 

大黒柱の精霊
「まぁよぉ、俺くらいになるとよぉ、それくらい平気なんだよな。」

 

 

光一
「いや、あなたは平気かもしれないけど、僕らがイヤなんです・・・。」

 

 

大黒柱の精霊
「朝昼晩三食と風呂と寝室があれば、贅沢は言わないからよぉ。」

 

 

光一
「思いっきり、ここの住人になる気じゃないですか。」

 

 

モデルルームの妖精
(そーっと、大黒柱の精霊に近づく。)

 

 

大黒柱の精霊
「晩御飯にバーニャカウダなんか出してくれたら、言うことないよな。」

 

 

光一
「『言うことないよな』じゃねぇよ!」

 

 

モデルルームの妖精
(一斉にハンマーで大黒柱の精霊を叩く)

 

 

大黒柱の精霊
「痛っ!!こらぁ、オメェらぁ!!」

 

 

モデルルームの妖精
(方々に逃げていく。)

 

 

大黒柱の精霊
「まぁ、こんなやりとりが毎日続くと思うけど、気にすんなよな。」

 

 

光一
「気にするよ!」

 






 


【コント・セルフ・ライナーノーツ】

会社で仕事中に隣の部屋から「ガリガリガリガリ」って音が聞こえてきて、

誰かがビルを壊そうとしていたら面白いだろうな、と考えたところから広がったコントです。

どうでもいいですが、大黒柱の精霊のしゃべり方は松山千春さんのイメージです。

 

 


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