クーデター (角川文庫)/楡 周平

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「クーデター」(川瀬雅彦シリーズ第1弾)楡周平

日本海の北朝鮮領海付近でロシア船が爆発炎上。その動きを窺っていた米海軍原子力潜俳艦が巻き込まれ航行不能となった。漂流する原潜を挟み、「北」と日米韓の緊張が一挙に高まるなか、謎の武装集団が能登に上陸、機動隊を殲滅してしまった。報道カメラマン川瀬雅彦は現場に急行するが、折しも米国大使館と警視庁で同時爆破テロが勃発。これは戦争なのか!?日本を襲う未曾有の危機。(amazonより)

川瀬雅彦シリーズの第1弾です。書評に入る前に楡周平の川瀬雅彦シリーズと朝倉恭介シリーズについて簡単に説明させていただきます。

まず以下をご覧ください。

朝倉恭介シリーズ       川瀬雅彦シリーズ
「Cの福音」           
  →               「クーデター」
「猛禽の宴 続・Cの福音」      ←
  →                「クラッシュ」
「ターゲット」              ←
  ↓
「朝倉恭介 Cの福音・完結編」

上を見ていただければお分かりになるかもしれませんが、以前ご紹介した「Cの福音」から始まるマフィアの朝倉恭介シリーズと本作「クーデター」から始まる報道カメラマンの川瀬雅彦シリーズはそれぞれ独立したシリーズとしても読めますし、「朝倉恭介VS川瀬雅彦シリーズ」というより大きなくくりで読むことも出来ます。本作の時点では、まだ両シリーズの接点は存在しませんが、やがて両者は邂逅し敵対する関係になっていくのでしょう。

さて本作の書評です。
本作はテロを物語の中心に据えたストーリーなのですが、内容もそれに違わぬかなりコンバットな感じです。合わせて国際情勢や日本人論などがかなりイデオロギー的に語られるので福井晴敏ファンの方なんかは結構好きな感じだと思いますね。自衛隊問題なんかにもかなり実際的な軍備やシステムについて触れながら語られていますし。またアクションシーンについても前作に引き続き描写力の高さが際立ちますね。はっきり言って巧いです。

全編通して不満が少ない秀作ですが、個人的にはハードボイルド臭さが少々鼻につきますね。キャラ設定などは別に気にならないのですが情景描写などの地の文にこれでもかというくらいハードボイルドを詰め込んでいるため、どうして長くなりすぎるきらいがあるんですよね。ただ人が立ってビルを眺めているだけの光景が何でそんなに長くなるんだろう…という感じで。もう1点がエンディングに向かっていくスピードが大ラスで急に加速しすぎる点ですね。だらだら書くよりはいいのでしょうが、それにしたって、という展開もあったりしてその辺はちょっと気になりました。

全体的には相当数の場面と視点で構成されているのにも関らず非常にバランスよく書き分けられており、全く飽きずにスピード感をもって読むことが出来ました。
このシリーズは読破してみようと思っています。

Cの福音 (角川文庫)/楡 周平

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