神々の遺品 (双葉文庫)/今野 敏

¥730
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☆☆☆
1997年、海軍少将ジョーンズはシド・オーエンと名乗る若者から実働部隊の組織を要請される。オーエンはピラミッドに宇宙人、オーパーツと言ったおよそ現実離れした話を語り、それらを研究するセクションOを統率する立場にあると言う。実働部隊はセクションOの秘密を守るために必要なものであるらしい。マンガかアニメのような話を聞かされたジョーンズは門前払いしようとするが、国防長官から「彼の言葉は私の言葉だと思ってくれていい」という連絡を受け渋々引き受ける。
それから3年後、セクションOとは関りない日々を送ってきたジョーンズだったがある時、思い立ったようにセクションOについての調査を始めると、セクションOもシド・オーエンも軍のあらゆる情報をひっくり返しても見当たらないことに愕然とする。何らかの陰謀を疑い調査を始めるジョーンズだったが…。
その頃、日本では私立探偵石神の元に行方不明になった東堂の捜索以来が出されていた。捜査を進めると2つの事実が明らかになった。東堂はピラミッドとオーパーツに関するwebサイトを運営しており、そのサイトの内容が書き換えられていたこと、そしてUFOとピラミッドに関する著作を持つ三島殺害事件の容疑者になっていたこと。
全ての事件を結ぶUFO、ピラミッド、オーパーツ、海を挟んで同時期に発生したこの事件はどのようなつながりを見せるのだろうか。

うん、あらすじが長い!すいません。基本的にあらすじもamazonなどの文章を流用しないで自分で書いてるんですが、今作は話がかなり広がるのでまとめるのが難しかったです。

以前このブログで紹介した「蓬莱」が衒学的な趣向をこらした面白い本だったので本作も同じテイストを期待したのですが、どちらかというとダン・ブラウン系の作品でしたね。途中宗教とかも絡んでくるし。まあ衒学的なことには変わりないのですが。
ただ正直ダン・ブラウンの作品や「蓬莱」に比べると、まとまりがない作品でしたね。ロズウェル事件やエリア55なんかも出て来て素材としちゃあ面白いと思うんですが、結構トンデモ学説みたいなのを羅列されちゃった感じで。あんまりこの辺のことに詳しくない方に判りやすく言うと、都市伝説の規模がでかい版みたいな感じです。「あそこにもあそこにも宇宙人の痕跡が!」とか「聖書にはこんな裏メッセージが!」みたいな。当然根拠は色々出てくるんですが、参考文献を見るまでもなく、それ信じて大丈夫?みたいなものが多くて。本文中でも一部についてはデマかもしれない、といった指摘はされているんですがね。
1番の問題は作者自身がこういったネタを咀嚼し切れてないことですね。「蓬莱」やダン・ブラウン、あるいは京極夏彦なんかの作品はもろもろの薀蓄を作者自身が理解した上で、ある程度強引に自分なりの結論を導き出して書かれているんですよね。それが学説的に正しいかどうか?という問題はあるとしても少なくとも登場人物が自分達なりの結論を出しているわけです。でも本作を読むと参考文献の情報載の羅列って感じで、その辺が作品のまとまり感もなくしちゃってる感じなんです。正直日米の事件がつながる後半も少々強引な感じがするし。ストーリーとして破綻があるわけではないし、テーマも面白いんですが、どうもネタが先行しすぎちゃった感じですね。個人的にはアメリカをのみを舞台にした方が良かった気がしますね。
もう少しCIAとかその辺を絡ませた陰謀と心理戦みたいな形にした方が話が絞れて良かったと思います。日本とアメリカの話はリンクしているようであまりしていなかったし。それにアメリカパートの話の方が面白かったですし。キャラも魅力的でしたね。

とりあえず3つ星です。でもこの人の本、絶対5つ星がある気がするんで引き続き読んでみます。本作はネタに振り回された感じでしたが、キャラとか舞台設定とかアクションシーンとか本当上手いんですよね。