百鬼夜行 陰 (講談社文庫)/京極 夏彦

¥940
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☆☆☆
さて京極堂サイドストーリーその1です。
発行順に読むのが1番良いとされている京極堂シリーズですが、今作は「塗仏の宴 宴の始末」の後に発行されています。
つまり今作で描かれているサイドストーリーは「姑獲鳥の夏」「塗仏の宴 宴の始末」に絡んだものということになります。
内容的にはそれぞれの作品に登場する犯人や被害者及びその周辺人物といったキャラクターの物語です。

さてさてサイドストーリー第1弾の本書では主要キャラである京極堂、榎木津、木場修は登場しません。(関君はラストの短編の主役です)
京極堂シリーズは自身の育った環境やトラウマなど様々な要因によって個人個人が持つ特異な世界観を、京極堂が言葉によって解体していくことにより異質な事件を誰の目にも分かるように再構築し、解決に導いてきました。そしてこの作業こそを憑き物落としと呼んで来たわけです。(この辺りについての詳細は京極堂シリーズまとめをご覧ください)
しかしながら今作では京極堂が登場しません。ということはつまり憑き物落としがされないわけです。

すると様々な事情から彼らの心に歪みや狂いを生み出し彼らの目に妖怪となって現れる存在は解消されることのないまま物語は終わりを告げるわけです。
本編を読んでいる方が読めば、彼らがそのような状況に陥った理由、その後の凶行、そして憑き物落としに至る経緯と併せて楽しむことが出来ますし、本作のみ読まれた方にとっては文字通りの妖怪小説、ホラー小説が楽しめます。

要約すると
特異な心理状態に至るまでの経緯(本編)

特異な心理状態が見せる妖怪(本書)

それによって及ぶ凶行(本編)

憑き物落としによる解消(本編

となるわけです。

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