ブログラジオ ♯12 The Lodgers | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

以前にちらりと予告しておいたが、今回はカウンシルである。
ポール・ウェラー率いるザ・スタイル・カウンシル。
ブロウ・モンキーズを紹介した時にちらりと触れている、
ブルー・アイド・ソウルの代名詞と形容したグループである。
もっとも、たぶん本人たちは、
自分たちの音楽をそんなふうに括っていたりはしないと思う。

ポール・ウェラーは、まずジャムという三人編成の
バンドを率いてシーンに登場してくる。
このジャムという存在は、折からの市場の潮流の中、
とりあえずはパンクというジャンルに分類されることになる。
代表格は、ピストルズ、あるいはクラッシュ辺りだろうか。

どうにもあまりいい表現にならないのだけれど、
とにかく自分たちには訴えたいことがあるんだ、
だから演奏の上手い下手なんて多少は目をつぶってさ、
まずは曲を、俺らの言葉を聞いてくれ、みたいな
そんなニュアンスを前面にアピールして
ムーヴメントは展開する、もしくはさせられていく。

だが曲りなりにもプロである。
本当に下手糞な訳ではないだろう。
演奏ができないなんてことは絶対ない。
ただまあ、決して丁寧ではない。
それにアレンジにもさほどの工夫は見つけられない。
そういう訳で個人的にはそんなに興味も面白みも
ほとんど感じなかった。
だから恐縮だが僕はピストルズも
スージー・アンド・ザ・バンシーズもあまりきちんと
聴いてはいない。クラッシュも代表曲の幾つかが
どうにかわかる程度である。
London CallingとI Fought The Lawだっけ?
いや確かに、特に後者はいい曲だとは思うけれども。

いや、今回はカウンシルである。話を戻そう。
このジャムのオリジナルアルバムは全部で7枚
枚数を重ねるごとにバンドのサウンドは
確実に変化していく。
念のために告白しておくと、僕自身はベスト盤を聴いて
代表曲の変遷をたどっただけなので、
所詮その限りでの印象でしかない。
だがそれでも、初期の攻撃的な様相が次第に影を潜め
メロディーラインの美しさや、
コーラスワークへのこだわりが
際立つようになってくることはわかる。
ほとんど解散直前のTHE GIFTというアルバム辺りからは
ブラス・サウンドまで導入されている。
ちなみにこの一枚だけはちゃんと聴いた。
Town Called Maliceがすごく好きだった。

たぶんだから、やりたいことをやるためには
今のままでは無理だと思ったんだろうなあ。

カウンシルとはすなわち委員会。
様式の決定会議といったことにでもなるのだろうか。
その宣言通り、彼らはトラックごとに、
様々なジャンルの要素を取り上げ、
それを自分たちのサウンドに昇華していくという
アプローチでアルバム制作を重ねていく。
ジャズあり、ファンクあり、トラッドあり
もちろん純正エイトビートのロックンロールも当然あり。
ボサノヴァやワルツのリズムにだって挑戦する。
かくして出来上がった二枚目のアルバムが、
『僕たちの大好きな店(Our Favorite Shop)』
手元の日本盤には、何でも揃う音のお洒落な専門店、
なんて捻りのないコピーがつけられてもいるけれど。
あの頃本当にみんな聴いてたよね、これ。

The LodgersはそのOur Favorite Shopからのチョイス。
バブル全盛のお祭りみたいなあの時代に
もてはやされない訳がないであろう完成度。
全編なんというか、音がきらきらしている。
ミラーボールが派手に回っている感じ。基本銀色だけれど、
時々キラッと金色が光る、本当にそんな手触りなのである。
スタイリッシュ、もっとありていにいえば、オシャレ。
それでいて非常にクールだし。
中でもこの曲ともう一つ、Shout to the Topは
頭二つくらい抜けているといっていい。
で、このロジャーズというタイトル、
訳せば間借り人、賃貸契約者とでもいうような意味なのである。
そういえばボウイのアルバムにもあったっけ。
もっともあちらは単数形だったけれども。
さて、そこでこの最高にクールでオシャレなナンバーの、
そのド頭から登場し、曲中幾度も繰り返される、
長音を多用したハーモニーの極めて美しい印象的な旋律に、
いったいどんな言葉が載せられているのかというと。

この辺りには住まない方がいいよ。
どうにも家賃がね、なんだか馬鹿にされてるくらいに高いんだ。

なるほどな、と思いました。
この痛烈なクリティシズムこそ、
実は彼の本質なのかもしれない。そうも思わないでもない。

前回のカルチャークラブの場合と少し似て、
カウンシルにも、D.C.リーという女性が、
ほとんどの楽曲にコーラスとして参加し、
もちろんステージにも一緒に立ち、
いわばアナザー・ヴォーカリストとでも表現すべきような
ポジションを勤めていた時期があった。
How She Threw it All Awayという彼らの後期のナンバーは、
おそらくはグループを離れてしまった彼女のことを
歌ったものなのだろうと、当時勝手に想像していたのだが、
まあ本当のところは今もわからないままである。

という訳であまり気の効いたトリビアも見つからないので。
あるいは、このアルバム聴いたら絶対パンクの評価が変わるよ、
といったようなご教示とか
逆に、この作品も知らないでパンクを語るなというご叱責が
もしおありだったら、
寄せていただけると嬉しいかもしれない。


Our Favourite Shop/Polygram UK

¥819
Amazon.co.jp