黒子が店にやってきた | 荒井修のブログ

荒井修のブログ

ブログの説明を入力します。

今月の歌舞伎座で、勘三郎の道成寺が評判をとっている。

今日その道成寺の中啓という扇が仲見世に届けられた。

数年前に私が納めた扇子であり、要をしめてほしいと言うのだ。

そして中村屋一門のいてう君が浅草歌舞伎の楽屋から黒子の衣装のまま、その中啓を持って店に来た。

腰には頭巾も挟まれたままで、大変珍しい目立つ衣装なのに、参詣客でいっぱいの仲見世では芝居の中の黒子同様、誰の目にもついていなかったようだ。

いてう君は歌舞伎座と浅草の掛け持ちであったようだが、昼が浅草でその後歌舞伎座に行くのでこんな事が出来たわけだが、浅草の町でいつも歌舞伎が行われていれば、こんな風景も日常的に見られるようになり、まさに江戸の芝居町という風情になるのだろう。

僕はすぐに要をしめ、次の幕間に黒子の衣装で再び修理が出来上がった扇子を引き取りに来た、いてう君の後姿が江戸時代からのお使いのようで、なんだかうれしかった。

今晩の道成寺を見た人達に勘三郎の道成寺は、一門がこんな風に支えていましたよと伝えたかった。