原安三郎コレクション 広重ビビッド | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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サントリー美術館で開催中の “原安三郎コレクション 広重ビビッド” に行ってきました。

サントリー
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


こちらは、日本財界の重鎮として活躍した日本化薬株式会社元会長・原安三郎氏が、
その生涯で蒐集した浮世絵コレクションの中から、歌川広重が最晩年に制作した 《名所江戸百景》 と、
日本各地の名所を描いた 《六十余州名所図会》 を中心に紹介する企画展です。
これまでにも原安三郎コレクションが紹介されることはあったそうですが。
この2つのシリーズが全点公開されるのは、今回が初めてとのこと (前後期で入れ替えあり) 。
とても貴重な機会なのです。


・・・・・とは言っても。
《名所江戸百景》《六十余州名所図会》 も、
《東海道五十三次》 ほどではないですが、広重の代表的なシリーズ。
取り上げられる機会は少なくなく、他の浮世絵展で幾度となく目にしています。
(原安三郎コレクションのではないですが)
それだけに、会場に入るまでは、

「あぁ、《名所江戸百景》《六十余州名所図会》 ね。ふ~ん」

くらいにしか思っていませんでした。

ところが!

会場


展示されている浮世絵を観た瞬間に、一気に目がシャキーンとしました。

ビビッド  ビビッド


「ビビッド!!」

その色の美しさ、線のシャープさ。
まさしく、ビビッドでした。
正直なことを言うと、“広重ビビッド” という展覧会タイトルに関しては、
「ちょっと狙いすぎでしょ (笑)」 と、ニヤニヤが止まらなかったのですが。
いやいや、“広重ビビッド” とは、言いえて妙。
これほどまでに、しっくりくる展覧会タイトルは無いかもしれません。

また、余談ですが、ビビッドというワードから、朝のワイドショーを連想してしまい、
「TBSから何か物言いは入らないのだろうか?」 と、密かに心配していたのですが。
こちらのパネルによれば、原安三郎氏は、

原


株式会社東京放送 (現・株式会社TBSテレビ) の設立にも関わっていたとのこと。
それなら、全く問題ないですね (笑)


さて、話を戻しまして。
原安三郎コレクションが、ビビッドな理由。
それは、これらの浮世絵が初摺だから、
しかも、特に早い時期に摺られたものだからに他なりません。
摺りの作業に広重が立ち会って指示しているからこそ、色が美しく、
版木の線がまだ摩滅していない状態だからこそ、線がシャープなのです。

見てください、このグラデーションの美しさを!

広重  歌川広重 《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》
大判錦絵 安政4年(1857) 原安三郎コレクション



見てください、この雨の繊細な表現を!

広重  歌川広重 《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》
大判錦絵 安政4年(1857) 原安三郎コレクション



浮世絵ファンならずとも必見の展覧会です。
2ツ星!
星星


個人的には、今回は、《名所江戸百景》 よりも、《六十余州名所図会》 のほうに惹かれました。

旅


錦帯橋や厳島神社など、現在でもなお人気の観光スポットが描かれているのは、純粋に楽しかったです。
ちなみに、広重自身が、オープニングのサザエさんばりに、日本各地を旅していたわけではないそうで。
江戸時代のガイドブック的なものを、元ネタにしていたようです。


さてさて、タイトルこそ “広重ビビッド” ではありますが。
歌川国芳や葛飾北斎の名所絵も一部展示されていました。
国芳ビビッド!北斎ビビッド!

国芳  北斎


北斎に関しては、現存数が少ないという 《千絵の海》 が、

千恵の海  葛飾北斎 《千絵の海 五島鯨突》
中判錦絵 天保3年(1832)頃 原安三郎コレクション



なんと10図、完全コンプリート状態で展示されていました。

10図


こちらも必見です。


 ┃会期:2016年4月29日(金・祝)~6月12日(日)
 ┃会場:サントリー美術館
 ┃
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_2/index.html




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