現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展 | アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】

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アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-アントニオ・ロペス展


ポスターのメインビジュアルに使われている 《マリアの肖像》 に心惹かれて、
現在開催中の “現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展” へ行ってきました。
Bunkamura ザ・ミュージアムにて、6月16日まで開催され、
その後、長崎県美術館 (6/29~8/25) 、岩手県立美術館 (9/7~10/27) と巡回するようです。

美術展の主役は、もちろんアントニオ・ロペス。
でも、多くの方が、

「アントニオ・ロペスって??スペイン人っぽいイメージはあるけど・・・」

と思われていることでしょう。
試しに、 “アントニオ・ロペス” という名前を、Googleで検索してみると、
リーガ・エスパニョーラのサッカー選手がヒットしたり、クラッシックギターがヒットしたり、
果ては、 『TIGER&BUNNY』 というアニメのキャラクターがヒットしたり・・・と、
どれが正解の “アントニオ・ロペス” なのか、よくわかりません (←?)

今回の美術展で取り上げられているのはアントニオ・ロペスは、
1936年生まれの現代スペインリアリズムを代表する作家のアントニオ・ロペスです。
2008年にはボストン美術館で、2011年にはスペイン国内の2か所で大規模な個展が開催されており、
世界的に最も著名な現存アーティストと言っても過言ではありません。
ちなみに、ビクトル・エリセ監督によるドキュメンタリータッチ映画・・・

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『マルメロの陽光』 の主人公を務めているのが、アントニオ・ロペス。
毎年なかなかマルメロの木の絵を完成することが出来ない彼の姿が丹念に描かれた映画です。
会場には、マルメロの木の絵も展示されていますので、
これから足を運ぶ方は、映画を見てから行くと、より楽しめることでしょう。


さてさて、そんなアントニオ・ロペスの待望の日本初の個展。
初期の作品から最近の作品まで代表作約65点が展示されているそうです。

「さぞかし、ポスターの 《マリアの肖像》 のような超レアリズムの作品ばかりなんだろうなァ♪」

と、期待しすぎてしまったせいでしょうか、
会場冒頭の初期の作品コーナーで、少々肩すかしを凝らってしまいました。

「お、思ったよりフツーの絵だ・・・。」

いや、決して、下手な絵でも悪い絵でもないのです。
ただ、スペイン・リアリズムの巨匠の美術展と聞いて、
頭の中がそのイメージで固定されてしまっていただけに、
初期のシュルレアリスム的な作風の作品に激しく違和感を覚えてしまいました。
麦茶と思って飲んだら麺つゆだった・・・みたいな感じです (笑)


その後、お目当ての 《マリアの肖像》 と出合って、
溜飲は下がったのですが、そうそうモチベーションは上がりません。
そんなこんなで、惰性で歩を進めていたのですが、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-グラン・ビア


もう一つのポスターに使われている 《グラン・ビア》 が目に飛び込んできた途端、
一気に眠気 (?) が吹っ飛びました!!

「こんなにもリアルな風景画があっただなんて?!」

これまでにも、名だたる巨匠によるリアルな風景画の数々を目にしてきました。
絵の前に立つと、その絵の中に吸い込まれそうな感覚になる風景画や、
リアルに奥行きが感じられ、どこまでも絵の奥に世界が続いていそうな風景画には出会ったことはあります。
しかし、アントニオ・ロペスが描く風景画は、
その絵の前に立つと、絵の中に奥行きを感じられるのは当然として、
僕の横や後ろにも絵の世界が広がっているかのような印象を受けるのです。
これまで見た風景画が、普通の映画ならば、
アントニオ・ロペスの風景画は、サラウンドシステムを採用した映画のよう。
臨場感がハンパではありませんでした。


また、画像がなくて恐縮ですが、個人的なお気に入り作品は、
《バリェーカスの消防署の塔から見たマドリード》 という風景画。
大画面に、マドリードの風景がパノラマのように描かれているのですが。
この絵の最大の特徴は、普通の風景写真のような描き方でなく、
まるで魚眼レンズで見た光景かのように、画面の一部が大きく歪んている点にあります。
その歪み部分には、全く違和感を覚えず、
むしろ歪んでいることで、本当に自分の目で見ているかのような錯覚を覚えました。
風景画を観賞しているというよりも、
アントニオ・ロペスの目線でマドリードの風景を一望しているかのような。
こんなにも作家の目を、強く意識させられる風景画は他にはない気がします。

《グラン・ビア》 以降に登場した絵画は、
風景画にしろ、静物画にしろ、室内を描いた絵にしろ、どれも興味深いものばかり。
美術展の最後には、アントニオ・ロペスが、
特に近年になって制作しているという彫刻作品が展示されており、
彼の芸術活動の幅広さを実感することが出来ました。


リアリズムはリアリズムなのですが、
さらに、その1歩も2歩も先に進んでいるアーティストだったように思います。
そのリアリスティックな姿勢が、男性にウケているのでしょうか。
いつになく男性のお客さんが多いのが印象的でした (もちろん女性客も多かったですが)
星星





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