金沢21世紀美術館 「イェッペ・ハイン 360°」 | 金沢アートグミ特集ページ

金沢21世紀美術館 「イェッペ・ハイン 360°」

金沢21 世紀美術館で開催中の
「イェッペ・ハイン 360°」展にいってきました。

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イェッペ・ハインはデンマーク出身の若手作家で、作品を通じ、
空間と人とに新たな関係・体験を与える作品が特徴です。
”人-時間-空間”をテーマとした新たな知覚体験、という傾向は、
金沢21世紀美術館で以前展示された、
オラファー・エリアソンと共通するところがあります。

今回の「360°」という展覧会のタイトルは、
妹島和世+西沢立衛/SANAAによる丸い建築・展示室の魅力を引き出す事、
またハインの作品に多様される「回転」というキーワードの、2つの意味合いがあります。

気になった作品を何点か紹介します。


イェッペ・ハイン《光のパビリオン》2009年
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コードで繋がった電球が天井からぶら下がる作品。エクササイズバイクを漕ぐことで
電球がゆっくり動きます。展示室内に壁があり、バイクを漕ぐ人の様子は見えなくなっていて
偶然その展示室にいた鑑賞者間にコミュニケーションが生まれる仕掛けになっています。
ちなみに、なかなか漕ぎやすいバイクです。


イェッペ・ハイン《見えない迷宮》2005年
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赤外線信号を使った仮想の迷路の作品。ヘッドホンのような赤外線受信機を
かぶり体験するのですが、受信機が振動することによって壁の存在が分かります。
壁にあたったら進路をかえて、見えない道を歩きます。
目に見えないのに空間に道がある状況に冒険心くすぐられる他、
皆が受信機をつけて展示室を歩き回る光景はなかなかに面白いです。


イェッペ・ハイン《回転する正方形Ⅱ》2011年
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展示室3では、壁に掛けられた額の中で白紙の紙が高速度で回転する作品と、
気付かないほどゆっくりしたスピードで大きな壁が展示室内を左右に動く作品
《見えない動く壁》が設置されています。
正方形の作品に気を取られていると、戻るときにさっき通った道が
なくなっていて驚きます。完全に「壁」だと思って意識していなかったのに、
作品だとわかると何だか空間の感じ方が変わります。


イェッペ・ハイン《籠と鏡》2011年
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鉄の棒でつくられた大きな籠の中央に、大きな丸い鏡が釣り下がっている作品。
1分1回転でぐるぐるとまわる鏡は次々と展示室にある物、
そこにいる人を360°映し出します。
カメラを15°ずつ360°回転させて金沢21世紀美術館の展示室を撮影した
新作《360°ギャラリー、金沢21世紀美術館》も同じ展示室壁面に
飾られているのですが、元々回転しているその作品も、
その時同じ空間にいた人も、自分も、
鏡に映り、消え、また映り、と頭がぐらぐらします。


イェッペ・ハイン《映してください/考えてください、金沢21世紀美術館》2011年
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「オラファー・エリアソン — あなたが出会うとき」の展示と比較すると、
エリアソンの時は空間や意識が作品でダイナミックに
変化する感じがしましたが、今回の展覧会では空間の変容を
あまり感じることはなく、鑑賞する自分と作品と空間がフラットにつながっている感覚がありました。

確かに360°回転すると、また同じ状態に戻ります。
一見すると違いがなく、意識していないとわからない。
けれど実は確かに回転している。
作品という形で鑑賞者への様々な仕掛けがあり、
自分でそれに気付き、可笑しがり、楽しむことができる。

東日本大震災の影響で設営の際、作家が来日できず
ベルリンから送られてきたマニュアルやビデオミーティングを通じて
作品を組みたてたそうです。

プレスガイダンスの際に流れたメッセージで
「私の作品は、人と人の間に、空間と空間の間に、公共空間の間に
コミュニケーションや対話、幸せをもたらすことと、大きく関係している」
と語ったイェッペ・ハイン。
シンプルで軽やかな作品は年齢を問わず楽しめる展覧会です。
8月末までの長期展示、ぜひ行って体験してください。

All the works in the images:Courtesy:Johann König,Berlin,303 Gallery,New York and SCAI The Bathhouse,Tokyo

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イェッペ・ハイン 360°
金沢21 世紀美術館
4⽉29日(金)~2011 年8⽉31日(水)
10:00∼18:00 (金・土曜日は20:00 まで)
月曜休(ただし、7/18、8/15は開場、7/19は休場)
[当日]一般=1,000 円、大学生・65 歳以上=800 円、小中高生=400 円
主催:金沢21 世紀美術館 [公益財団法人金沢芸術創造財団]