川口市立アートギャラリー『アトリア』にて、39@アート関連企画『川口の新人たち』展が開催中です。


さる3月8日、3人の出品作家が自作の前でアートワークについてインタビュー形式で語るトークイベントがあり、油彩の山本智之さん、銅版画の馬場知子さんと共に、アートムーヴのメンバーで造形作家のKaolyさんが出品者としてマイクを取るので見届けに行きました。




最新作『lnnerPower』Ⅰ+Ⅱ+Ⅲと30人程の聴衆を前に、緊張しきった面持ちのKaoly先生。

順は3番目でトリだというのに、2人の作家の落ち着いた語りに比べて、今から虫歯でも抜かれるようなガーン表情のKaolyを、同じくアーティストで親友でもあるヒサヨシさんが優しく気遣いながらインタビューします。

以下一問一答




ヒサヨシ(以下ヒ):鉄を鍛造するという作品を手掛けるようになったキッカケは?

Kaoly(以下K):大学の頃に先生にそうすすめられたからです。
(筆者私見:零点!もっと気のきいた答えがありそうなもんだ がーん )




ヒ:去年まで、川口アートファクトリー(KAF)を拠点に創作していましたが。


K:それまではアカデミックな環境で勉強をしていただけでしたが、KAFでは初めて外の世界を知り、大勢の人と知り合って大きな刺激を受けました。



ヒ:一貫して鉄を素材にして立体の制作をしていらっしゃいますが、数年前から石や木を組み合わせた融合的な作品を発表しています。


K:鉄という素材をより深く理解するために、あえて他の素材を使っています。
木はあくまで鉄を生かし…引き立てるためのものです。
(筆者:視線が泳いでいる。恐らく自分で自分の言ってる事を信じていない。)




ヒ:今回の新作もそうですが、タイトルに『パワー』や『エネルギー』等、生命力を感じさせる言葉を選んでつけているようですね。

K:目には見えないけど確実にある、ある種の…『力』を表現したいと思っています。
自分の中の『力』を……その存在を確認したい。
(筆者:目が泳いでいる。かなりわけがわからなくなっている)




ヒ:(心配そうに)制作が辛いと、たまに弱音をはく事もあるよね。
そんなに辛いのに続けられるモチベーションは何ですか?


K:さっきも言った自分の中の力の確認、…何て言うか…… 
野生の力!! (!?)
鉄を使って作品を作る事を通して、自分の中の野生を確認したいんです!
(『確認』に力をこめて)



ヒ:今後とも彫刻を続ける?


K:…今後どころか今の自分がやっている事が彫刻かどうかも自信ありません。
続けた結果は彫刻かもしれないが……違うかもしれない。まだわからない。
(もうグダグダ)





普段は人一倍ほがらかなKaolyが作品について質問されると急に困惑した表情を見せるのは、これが初めてではありません。
いつも作品について質問されると、なんとか説明しようと努力するけれど、喋りながら自分の話に首を捻り出し、おしまいには「今のなし!」とか言い出すのです。
だから彼女のオロオロっぷりは、悪いけど筆者には意外ではありませんでした。



彼女の作品が常に強い信念によって極限まで研ぎ澄まされたものであり、ハンパな実験作品などとはものが違うのは一見して明らかです。それなのに、「これは何をあらわしていますか?」といった当たり前の問いに作家自身が詰まってしまう。

これはいい加減なことを言って誤魔化したくない誠実な人柄にもよるでしょうが、


理論で説明すべきでない作品も有り得るからではないでしょうか?




近代以降アーティストの社会性が飛躍的に拡大し、アートが深く認知されるようになった今日、ちょっと不思議な逆転現象を感じています。


続く