情報への作法
こんばんは。
今日のご紹介は、日垣隆氏の著書になります。
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■情報への作法
■日垣 隆(著)
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●橋本大二郎氏の言葉
県内の市町村会のあと、夕方4時から始まった宴会を前に、「日の高いうちから
お酒を飲んでグチをいい合っていても過疎は防げない。デパートや学校を覗い
て若い人たちの話を聞いたほうが、活性化にもつながる」と提言。
(P157 )
これはまさにそうである。
以前、女性向けのフリーペーパーに関する広告を扱っている会社に在籍していた
頃、ターゲットに近い女性にヒアリングしようとしたところ、自分より一回り上の先
輩が、アルバイトや派遣社員の人の意見を聞いてもダメだよ。営業部門のマネ
ージャーの意見を聞かなきゃ。」と言われたことがあるが、これは大きな間違い
である。
実際の購入ターゲットに聞かなくては意味がない。
若い人の意見はないがしろにされる傾向があるので注意したい。
●学校教育のリテラシーに関して
1.試みたいことや必要な目的がまずあって、それを行う最適なツールの一つと
して、教科書があったり、黒板があったり、インターネットを使ったりすればいい
のであって、その逆ではない。
2.インターネットのアクセスができるかどうかではなく、適切な手段を選んでイン
プットとアウトプットを最も効果的に行うのがリテラシー能力なのである。
ジュネーブにアクセスする小学校四年生が日本語で礼状の一つも書けない可
能性については懸念せざるを得ない。
(P113)
これは学校教育に関わらず、仕事などでもそうである。
少し飛躍するかもしれないが、お客さまの望むことがまずあって、それを叶える
ためにプレゼン資料や商品開発などをしなければならないのだが、自分の会
社の都合のいいことばかりを優先させてしまう。
また、検索は出来るのだが、アウトプットであるプレゼンや交渉などが全く出来
なければ意味がないのである。
●山林原野が94パーセントを締める川井村は広大なため、ただ1人の医師だけ
では臨機応変な往診など不可能である。
そこで、木村医師は介護者の知恵もスタッフに共有かつ蓄積され、その経過や
経験が「次」へ着実に生かされていくように「ゆいとり」をプログラミングしたので
ある。
この「ゆいとり」は他のスタッフも閲覧でき、かつ記入することのできる便利なも
のなのである。
(P331~332)
このように共有して一元化できるものは便利であり、現代には溢れている。
ただ一つ懸念があるとすれば、企業の上層部が知りたいための共有ファイルになっ
ていないかということである。
上層部が株主総会や取締役会に使うための情報という観点ではなく、お客さまへ
のサービスや営業力アップという観点で共有システムは作るべきである。
●論評
情報を使うとき、当たり前のことですが、以下の2点に注意しなければなりません。
1.何のために情報を入手するのか
2.その情報は適切なものであるのか
当たり前のことなのですが、意外にこれが出来ておらず、使い方や決断を誤ったり、
捏造事件につながったりしています。
この本は全て日垣先生が現場に足を踏み込んで、一次情報に基づいて書かれています。
読めば読むほど、いかに捏造された二次情報に人が惑わされていることや、間違った情
報の解釈をしがちなのかがよくわかります。
一方で後半の17章の川井村の話や、第23章のソフトボールの話など、情報を上手く共有
した成功例などの話もあり、非常に参考になります。
現代でも利用しているものが多い半面、誤った使い方をしているケースも少なくないのでは
ないであろうか。
ネットワークシステム構築などはその代表例であろう。
本来あるべき姿、使うべき目的を鑑みる上でも、非常に学びの多い本です。
リアルな現場の話も多く出ているので、かなり楽しく読める一冊です。
読書の秋をこのような奥が深い本で楽しんでみたらいかがでしょうか。
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