数年前だったか、山本ふみこさんのエッセイに棕櫚の箒が紹介されていた。
棕櫚(しゅろ)とはヤシ科の植物で、細い繊維を使って箒を作る。
エッセイの内容は忘れてしまったが、どうしても手に入れてみたくなって、京橋にある白木屋傳兵衛さんに走った。
紹介されていたのは、1万円ほどする高級なもので、直前に銀行によって現金を下ろしたのを覚えている。
細い路地を入ったところにお店があり、中には、掃き心地をためすための置き畳みが。
さっそく、棕櫚の箒が欲しいんですが。と店員さんに伝えると、フローリングとジュータン?だったら棕櫚は細かい粉が落ちるから江戸箒がいいよ。と言われた。
江戸箒は、昔懐かしい?学校の掃除などでよく使われていたうすグリーンのもの。
ホウキグサやホウキモロコシが原料となるらしい。
どうしても棕櫚の箒が欲しかったので、でも、やっぱり棕櫚にしますとか適当な事をいって、紹介されていた1万円のものを見ていたら、こっちで十分。と4,500円のものを進められた。
昔から使われてきた和の道具。
製法や原料がエコだったり、用の美が追求されていることから、現代では、やたらと芸術品扱いされる風潮もある。
あとで白木屋傳兵衛のHPで職人さんの話を読んだが、あくまで使われてナンボ。芸術品として特別扱いされることには抵抗があるとのこと。
半値以下のほうを商売っ気もなくすすめてくれた店員さんの言葉にも納得がいった。
結局、4,500円の棕櫚の箒とはりみと呼ばれるちりとりを買った。
はりみは柿渋で表面をコーティングしてあるので、静電気がおきず、ゴミがくっつくこともない。
今朝、ふと思い出して箒とちりとりで掃除をしてみた。
休日の朝、箒で床を掃くオトは、優しかった。
掃除機では、こうはいかない。
BGMとして流していた音楽も邪魔せず、シュッシュというリズミカルなオトは朝の神社やお寺を想起させる。
カジノオト。に癒されるなんて、なんて日本的な繊細な感覚なんだろう。
たまには、いいですね。箒。