有川浩と覚しき人の『読書は未来だ!』

あくまで一作家の一意見であることをご了承ください。
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初めまして。
あるいは、いつもお世話になっております。
作家の有川浩です。

この度、佐藤さとるさんの『だれも知らない小さな国』(通称『コロボックル物語』)シリーズを引き継いで、『だれもが知ってる小さな国』を上梓し、書店回りをしてきました。

書店回りというものを、皆さんご存じでしょうか。
新刊発売に合わせて、作家が書店さんを訪問し、サイン本を作らせていただくという販促活動のことです。
私は、2012年に『ダ・ヴィンチ』が主催する読者参加型の賞「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR」を受賞したのを機に、地方まで含めた書店回りを積極的に行うようになりました。
書店さんに支えていただいたお礼奉公ができたら、という思いからです。
私のサイン本が、書店さんにとっての武器になるうちは、続けたいと思っています。

(サイン本は、購買意欲をそそる商品のように思われますが、実は書店さんにとってのリスクもあります。売れなかった本を取次に返本する際、サインは汚損と見なされるので、返本できなくなるのです。売り切ることができなかったサイン本は、書店さんにとって不良在庫になってしまいます)

さて、私はたくさん書店回りをしてきましたが、今回の書店回りでは、かなり出版界にとって厳しい未来が見えてきました。
完全に私の肌感覚によるもので、データも根拠もありません。
ですが、出版界の最前線である書店さんを取り巻く状況は、思った以上に厳しくなっています。
皆さんが「リアル書店」で思いがけない本と出会う機会は、思いのほか早く減ってしまうかもしれません。

今月の『本の旅人』は読んでいただけたでしょうか。(2015年11月号/角川書店)
「本を買うということ」という特集です。
久世番子さんが「新刊書店で新刊を買うことの意味」を、分かりやすく的確に漫画にしてくださっています。
私も『三匹のおっさん ふたたび』の文庫の後書きを特集に提供しました。
こちらにも引用します。


 東北の震災の何年か前、仙台に書店回りに行きました。ある書店さんで、中学生が社会勉強の一環としてアルバイトをしていました。
 何か話をしてほしいと店長さんに頼まれ、アルバイトの中学生たちに私の本を一冊見せました。定価千六百円の本です。
「この本は一冊千六百円です。さて、この中で著者の私がもらえる印税はいくらでしょう」
 出版業界に詳しい方はご存じかもしれません。十%、百六十円也です。
「店長さん、書店さんはこの本を一冊売って、いくらの収入になりますか?」
 店長さんは淀みなく二話と同じ理屈を説明してくださいました。
 出版社が取りすぎ、と思われるでしょうか。しかし、出版社は本を売るために宣伝しなくてはいけません。宣伝にはお金がかかります。次の本を作るための資金も必要です。
 ベストセラー作家の本はたくさん売れてるからもういいじゃん、と思われるかもしれません。ですが、そういう作家さんの売上げで新人作家の本を出し、育てるのです。あるいは、それほどたくさんは売れないかもしれないけど、必要とされている分野の本を出せます。ベストセラーが売れるおかげで出版社は皆さんにいろんな本を届けられるのです。
 私も新人の頃は、同じ出版社の売れている作家さんの売上げで本を出させていただきました。
 いつか、その投資から、あなたの大好きな作家さんが生まれるかもしれません。
 一冊の本にはいろんな経費が載っています。未来への投資も載っています。
 皆さんが新刊書店で買ってくださる本は、未来の本への投資でもあります。本を一冊買うごとに、どうか誇ってください。「私は未来の本に、未来の作家に投資したのだ」と。
 いつも未来の本への投資をありがとうございます。この本は借りて読んだという方も、きっと他の作家さんの本で、あるいは他のジャンルの本で投資をしてくださっていると思います。
 読者さんが買い支えてくださるおかげで、出版業界の私たちは本を出せています。ありがとうございます。
 それではまた、次の本で会えることを祈りつつ。

                                     有川 浩


私は、こうしたことを読者さんに伝える特集を無料もしくは格安の媒体(広報誌など)で組んでほしい、と5年ほど前からいろんな出版社にお願いしていました。
今回、角川書店が初めて私のお願いに応じてくれたことになります。

どうして出版社にお願いしていたのかというと、作家個人の立場で「新刊書店で本を買ってください」というお願いはしづらいからです。
作家が直接こんなお願いをしたら読者さんの反感を買ってしまわないかと心配でもありますし、なかなか個人単位で声を上げることはできません。

ですが、今回の書店回りで、出版社が動いてくれるのを待っているだけじゃ駄目だ、と痛感しました。
誰かが動いてくれるのを待っている間に、最前線で本を売ってくれている書店さんは、どんどん消耗を強いられているのです。
汚損扱いになってしまうサイン本を引き受けるのは勇気がいることなのに、それでも「これだけサインしてください、売りますから」と何十冊も、何百冊も新刊を積み上げてくれる書店さんがたくさんありました。

誰かがやってくれるのを待っている場合じゃない、自分が動かなくてはと思いました。
「新刊書店で読者さんが本を買ってくださることが、まだ見ぬ未来の作家や本に繋がるのです」ということを、誰かを待たずに自分が発信するべきだと思いました。
支えてくれる書店さんだけを最前線で戦わせていてはいけないと。

だから、今までやっていたblogとは別に、このblogを始めることにしました。

今のエンタメ業界では、不思議なことが起きています。
近年、ドラマや映画に、原作物が増えたと思いませんか?
実は、映像の世界では、オリジナル作品の企画が通りにくくなっています。
失敗したくない、外したくない。だから、コンテンツの精度が保証されている原作物が増えているのです。
小説にしろ、漫画にしろ、出版界のコンテンツ力は他の業界から評価され、当てにしていただいているのです(個人的には、当てにしていただける作品をいくつか出し得たことを誇りに思っています)。

それなのに本は(特に小説は)、売れていないのです。
「映像化」の帯がついて、初めて一般の方に「お?」と気づいていただける本の何と多いことか。
コンテンツ力を当てにされているのに、販売の現場では映像側に売り文句を助けていただいている。
まるで、蛇が自分のしっぽを追いかけて、わっかになってしまうような現象が起こっています。

出版界も映像界も、「買い控え」という嵐に悩まされているのだと思います。
でも、買い控えの現象が起こってしまうのは、買い控えるお客さんに責任があるのではありません。
買い控えによって、エンタメの未来が縮小してしまうという美しくない楽屋裏を、業界がお客さんに説明してこなかったためだと思うのです。
特に出版界は、あけすけにお金の話をするのははしたないという風潮が強く、結果としてお客さんに「お金を出していただくことの大切さ」を伝えることを怠りました。
「買ってくださってありがとうございます、助かります」と感謝の気持ちをお伝えすることを怠りました。

しかし、
「お金を出して新刊を買わないと、好きな作家の次の本が出ない」
「DVDのレンタル待ちばかりでは好きな役者に次の仕事は来ない」ということを意識したら、ちゃんと買い支えてくださるお客さんは、たくさんいると思うのです。
「カッコ悪いから言いたくないんだ、言わなくても分かってよ」というのは、売り手の怠慢です。
怠慢がエンタメ界の縮小に繋がり、出版界では最前線の書店さんを真っ先に苦しめているのです。

お客さんのご理解をいただくための発信をしつつ、面白いコンテンツを作るのが、エンタメ界で商いをしている者の義務だと思います。
書店の現状を見るに、遅きに失した感はありますが、それでも何もやらないよりはいいと信じて。
そのために、まずはご挨拶とご説明を。
そして、自分が面白いと思った本や映像作品のご紹介、エンタメにまつわるお話をしていけたらと思います。

blogをしっかり更新するのはなかなか難しいかもしれませんが、手軽なTwitterなども駆使しつつ、少しでも頑張れたらと思いますので、面白そうだなと思っていただけたら、書店さんに、映画館に足を運んでいただけたら幸いです。
(Twitterのアカウントは、こちらです。→https://twitter.com/arikawahiro0609
ドラマの視聴も、好きな原作者や役者の支えになると思います。

どうぞ、出版界の未来に、エンタメの未来に、皆さんのご理解をお願いします。

有川浩 拝

(Twitterのリンクミスをご指摘いただき、貼り直しました)

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