“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(なごみちゃん編31)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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31、四人の勇士

 


八神さん、逢坂さんが深々と一礼し、
会見場へ入った瞬間、たかれた取材陣のフラッシュ。
途切れることなく点滅する目眩ましの嵐は、
まるで荒野の戦場で放たれる閃光弾のように一瞬で彼らを包み込んだ。
しかしそれをものともせず、胸を張って沈着冷静に前を向く二人を、
私と友ちゃんは、テレビの液晶画面の前で祈るように両手を合わせる。
関係者からそれぞれにマイクが渡され、逢坂さんが言葉を発した。

 


倭 「皆さん。本日は、お忙しい中、
  お集まり頂きましてありがとうございます。
  先月からの一連の報道で世間の皆様を大変お騒がせし、
  また多くの仕事関係者方々やファンの皆様に、
  多大な御迷惑、御心配をおかけしましたことを、
  心よりお詫び申し上げます。
  誠に申し訳ございませんでした!」

 

 

再度二人が深々と頭を下げると、このまま倒されるのではないかと、
恐怖を覚えるほどの凄まじいフラッシュがより多く光りだす。
そして頭を上げると続いて八神さんが口を開いた。

 

 

新 「既に芸能界を引退した私が、
  今日、逢坂倭と共に会見を開かせて頂きましたのは、
  あの日起こった事実を皆さんにお話するためです。
  SNSや週刊誌等で取り立たされる件も、
  デマや事実と大きく異なる点があります。
  私どものわがままではありますが、
  この場をお借りしまして時間の許す限り、
  皆さんの質問をお受けいたします。
  どうかオミットすることなく、事実の報道を心よりお願い致します」

 


司会者から注意事項を穏やかに伝えられた後、
各社の記者が待ってましたとばかりに次々と質問を投げかけた。
それに対して、逢坂さんも八神さんも、
とても誠実に丁寧に回答をしていく。
画面に釘付けの友ちゃんは「そこまで謙らなくても」と憤慨している。
流出した動画の一部始終、
私と八神さんが襲われた事、逢坂さんが私たちを病院へ連れて行ったこと。
そして加害者との話し合いで既に決着したことなど、
誰が聞いても勘違いすることのない解りやすい説明だった。
もちろん、私のテレキネシスのことは伏せたままで。

 


この会見を予定していたから、
そして会見後、報道陣が殺到することを予測しているから、
八神さんは暫く連絡が取れないと言ったのかしら。
彼の言葉の重さと目の前の映像がリンクする。
20分が経過した頃、ある記者が理不尽な質問をぶつけ始めた。
途端に緊迫感が漂い、会場にどよめきが起こる。

 


A記者 「週刊ルポルタージュの多下田と申します。
   よろしくお願いします」
新・倭「よろしくお願い致します」
A記者 「えーっ。まず、道明寺さんへの質問です。
   先程逢坂さんのご説明で、道明寺さんが女性を救ったとありましたが、
   本当はあなたが逢坂さんの恋人を横取りし、
   それが三角関係の感情のもつれに発展して、
   今回の傷害事件に至ったということではありませんか?」
倭  「はい!?」
新  「倭。抑えろ」
A記者「道明寺さんは俳優を引退されて数年が経っていますよね」
新  「はい」
A記者「逢坂さんは、戦隊シリーズでは知る人ぞ知る売れっ子俳優で、
   今秋には時代劇にも出演かと噂されています。
   それに嫉妬しての犯行ということはありませんか?」
倭  「さっきから黙って聞いていれば好き勝手なことを」
新  「倭。俺への質問だ。勝手に出番を奪うなよ」
倭  「でも、あの言い方じゃ新が」
新  「俺は平気だ」
A記者「道明寺さん、真実をお答えください。
   中にはその女性は女優さんではないかという報道もありますよね」
新  「その報道はあくまでも噂で偽りです。
   映像に写っていた女性は私の恋人で、女優ではなく一般の方です。
   実名を上げることはもちろん、
   彼女に関する詳細は一切明かしません。
   まぁ、多下田さんが仰る通り、今では私も一般人みたいなものですが、
    今後一切彼女に関する報道は謹んで頂きたいです」
A記者「しかし、それが事実を曇らせる結果になりかねませんよね。
   それでも話されないのですか?」
新  「はい。今もこれからも、話す気は一切ありません。
     今日、私どもは事実をお話するために会見を開いています。
   それでも事実が曇るとは、逆にどういうことでしょう。
   それこそ、真の報道の在り方が問われるのではないですか?」
A記者「そ、それは……
   質問は、以上です」
司会者「それでは次の方は。
   はい。前列のあなた、どうぞ」
B記者「ニュースリリース社の山節です。
   その女性の件ですが、
   二人が拉致監禁したのではないかという報道も浮上しています。
   本当のところ、それ以上のこともあるのでは?」
新  「それ以上のこととは?
   失礼ですが、私どもに何を言わせたいんです」
B記者 「だから、監禁とくれば強制わいせつも疑われるでしょう?」
新  「それは、あなたならそうするってことでしょう。
   そんな事実は全くありません」

 

 

友  「これじゃあ、まるで犯罪者への尋問よね」
なごみ「ひどい!この記者。
   含み笑いしながら失礼なこと言って。
   なんだか、だんだん腹が立ってきた。
   どの記者も誠実に答えてる二人にひどい質問ばかりして」
友  「今までだって会見なんてこんな感じだったじゃない。
   有る事無い事面白可笑しく記事を書いて、
   雑誌を買ってもらえれば儲けものって思ってる」
なごみ「そうだけどさ。
   あーっ!私が一緒に居れば、こんなひどい質問なんてさせないのに」
友  「……だからだよ」
なごみ「だからって?」
友  「なごみがそう考えるから、八神さんは会見のことを言わなかったのよ」
なごみ「……」
友  「そしてお互いを庇い合うために、
   敢えて二人で会見を開いたのよ。多分だけどね」
なごみ「新。逢坂さん」

 

 

安心感を与えてくれる朋ちゃんの言葉に私の胸はキュンと切なくなる。
尚も続くとんちんかんな記者の質問にも、
八神さんは泰然自若たる態度だ。

 


B記者 「しかし実際に、女性のご家族からは捜索願も出されていて、
   警察が動いていたという確かな情報もありますからね。
   火のないところに煙は立たないって言いますよ」
新  「それも、連絡の行き違いのよるもので、
   ご家族にも連絡をしてお会いして話は収まっています」
B記者「では、道明寺さんが仰っしゃりたいのは、
   今まで報道されたものはすべてフェイクニュースだと?」

新  「はい。そうです。
   平穏な生活の中に降って湧いたように起きた問題、
   実際に経験された方もいるでしょう。
   いつもの通勤電車の中で横柄な客に絡まれる。
   家族との楽しいドライブ中に、身勝手なあおり運転に遭う。
   住み慣れた我が家で寛いている最中、
   突然かかってきた詐欺師からの電話。
   もし、突然そういう災難に見舞われたらどうします。

 

 

飛香の愛


   それが皆さんの大切な恋人やご家族に降り掛かったら、
   私と同じことをしませんか?
   自分の大切な人を守るために咄嗟に取った行動が、
   悪意ある者から面白半分で世間に晒され、
   事実が簡単に捻じ曲げられた。 
   そしてそれを真ともに受けた者は瞬く間に拡散する。
    まるでウイルス感染です」
倭  「僕からもいいですか」
B記者「はい。どうぞ」
倭  「皆さん。道明寺の包帯の巻かれた右手を見てください。
   昨日抜糸が済んで痛々しさが残るこの手が全てを物語っています。
   これはあの日、彼女を守った時に負った傷なんです。
   それでもこの場で僕たちが嘘をついていると思いますか?」

 


逢坂さんの言葉で友ちゃんの表現は悲しみでいっぱいになる。
私は、俯き今にも泣き出しそうな彼女の肩にそっと手を添えた。

 

 

倭  「僕も今回の報道で芸能生活を絶たれてしまうかもしれない、
   破滅するかもしれないと正直思っていました。
   ここにいる道明寺も同じで、俳優業は引退したものの、
   現在はプロカメラマンとして活躍しています。
   でも僕たちは、親友と親友の愛する人を守ることを最優先しました。
   これはやむにやまれない行動でした。
   それからあの時あの場所に、本当の危険人物は別に居ました。
   僕たちはその人物から逃げるためもあって、
   すぐさま車に乗り込み、救急病院に向かったのです」
B記者「本当の危険人物とは……
   それは他の誰かも、あなた方を狙っていたということですか?」
倭  「そうです。
   最初に流出した動画の撮影者です。
   この件に関しては事務所と協議の上、
   警察に被害届を出している関係で、
   これ以上お話することはできませんが、
   時がくれば皆さんにお話する機会を持ちたいと思います」
B記者「しかし、そんなことをこの場で暴露して良いのですか?
   今後もお二人とも身の危険があるってことですよね」
C記者「警察が動いているということは、
   既に犯人が確定しているってことですか!」
D記者「逢坂さんや道明寺さんの今後の仕事に支障が出ますよね!
   所属事務所は何とおっしゃってますか!逢坂さん。
   道明寺さんは今後芸能界復帰の可能性は!」
司会者「皆さん、お静かにお願いします!」


それから30分、質疑応答は続けられた。
会見を終えて頭を上げた八神さんと逢坂さんは、
清々しい表情を浮かべ、やり遂げた感が窺える。
私と友ちゃんには二人の勇姿がとても光り輝いて見えた。
どんな意図で彼らがこういう場を作ったのか、
本当の気持ちは聞いてみないと分からない。
けれど、大切な誰かを守るための勇気ある行動と強い思いに、
私の胸は激しく打たれた。

 


 

友ちゃんを駅まで送った後、
私は東條さんにお礼を言うために咲路へ向かった。
あんな会見を観た後だからか、動揺する心を鎮めたくて、
寂しくて心細くて、一人で新居に居たくなかったのだ。
お店に入るといつものようににわかさんが笑顔で迎えてくれた。

 

にわか「なごみさん、いらっしゃい。
   お引越しは終わりましたか?」
なごみ「はい。お陰様で友達が手伝ってくれたので、
   思ったよりも早く終わりました」
にわか「それは良かったですね。
   ……なごみさん。何かあったのですか?」
なごみ「えっ」
にわか「とても寂しそうだから」
なごみ「はぁ。流石、にわかさんだな。
   なんでも分かっちゃう」
にわか「それは、私も同じ気持ちだからですよ」
なごみ「にわかさんも?
   (あぁ、倭さんのこと)
   にわかさんも観たんですか?」
にわか「はい。お二人が心配だったので」
なごみ「そうですよね。
   (にわかさん、倭さんが好きなのかな)」
にわか「こだわりあんみつ、食べます?
   いつもの甘味屋さんで買ってきたんです。
   なごみさんと一緒に食べようと思って」
なごみ「わぁー、嬉しい。いただきます」
にわか「良かった。
   今用意しますからお席にどうぞ」
なごみ「はい」

 

 

店内に東條さんの入れるコーヒーの豊かな香りが漂って、
我が家に戻ってきたような心地よさを感じさせてくれる。
入った時は気が付かなかったけれど、
カウンター席にスーツ姿の男性が一人座っていて、
東條さんと親しそうに話している。
しかし私の姿を見るとその男性はニコッと微笑んで手招きする。
私は軽く会釈して近寄った。

 


なごみ「こんにちは。
   (この人、誰だっけ?
   どこかで見たような顔……テレビ関係の人?)」
神道 「いらっしゃい、なごみさん」
なごみ「えっ。何故私の名前をご存知なんですか」
東條 「なごみさん、カウンター席に座って。
   ちょうどコーヒーができたからね。はい、どうぞ」
なごみ「ありがとうございます」
東條 「彼は神道と言って、
   私の元上司でスターメソッドの社長さんだ」
なごみ「あの大手企業の!」
神道 「今は元じゃないだろ。
   そして東條大雅とは悪友で、君の彼氏の上司でもある」
なごみ「(えっ。なんで新とのことを知ってるの?
   東條さんが話した。
   それとも……新が話した、なんてことは、
   絶対にないな)」
東條 「口は悪いけど無茶苦茶人間は良いから安心して」
神道 「口が悪いだけ余計だろ。まぁ、図星だが」
なごみ「初めまして。天羽なごみと申します。
   よろしくお願いします」
神道 「神道生です。こちらこそよろしく」
東條 「なごみさん、部屋は片付いたかな?」
なごみ「はい。とりあえずは。
   後は少しずつ整理してしようと思ってます」
東條 「そうだね」
なごみ「東條さん。
   おうちの件とお心遣い、本当にありがとうございました」
東條 「礼なんていいよ。
   これで安心して生活できるね」
なごみ「はい」
神道 「例の件か」
東條 「そうなんだ。……なごみさん。
   昼の新と倭の会見、観たんだね」
なごみ「えっ。な、なぜ分かるんですか?」
東條 「君は感受性が豊かだからね。
   すぐに分かるよ。
   新のこととなると特に」
なごみ「え、えーっ。
   東條さん、八神さんはあの会見があったから、
   私と暫く連絡が取れないと言ったんでしょうか」
東條 「えっ。あいつ、そんなこと言ったの?」
なごみ「はい」
東條 「困ったやつだな」
神道 「まったく。あの不器用者が」
東條 「それもあると思うけど、それだけじゃないよ。
   今日の記者会見はここにいる新道社長の指示もある」
なごみ「えっ」
神道 「今月から“咲路”はスターメソッドの傘下に入ったんだよ。
   逢坂倭は先月いっぱいで所属事務所を辞めて、うちの俳優部門に入った」
なごみ「そうなんですか!」
東條 「あぁ。ちょうど契約更新月だったから、違約金も払わずに済んだしね。
   倭にとっては良かったよ」
にわか「まさに神道さんが私たちの神ですね。
   本当に神様のお導きだと思います」
なごみ「にわかさんは何時それを」
にわか「私も今日聞かされました。
   そうそう。みなさん、美味しいあんみつです。
   どうぞ召し上がってください」
東條 「ありがとう、にわかちゃん」
神道 「それから、今回の拡散された動画に対して被害届を提出した。
   プライバシー侵害、肖像権侵害。
   それに逢坂と八神にはパブリシティ権の権利もあるからな」
なごみ「パブリシティ権……
   (確か、有名人を守るための法律だったわね)」
神道 「無断で他者をスマホで撮影し、撮影した動画を許可を得ずにSNSに投稿して、
   相手に精神的苦痛と社会的損害を与えたわけだからな。
   ただでは済まされないってことだな」
なごみ「ということは、木下依弦を訴えるということですか?」
神道 「そうなるな。
   彼は横領でフリッシュ製薬会社から提訴されるらしいね。
   昨日、フリッシュの田部社長とも会って話したんだが」
なごみ「はぁ……
   (うちの社長と会うって、神道社長ってどんな力の持ち主なんだろう。
   とてもアクティブな人なんだろうけど)」
東條 「それから、木下だけでなく“三諸庵”当主、日下伽月も訴える」
なごみ「そんな……かづきさんは東條さんにとって」
東條 「元妻であっても、悪事を働けば裁かれる」
なごみ「東條さん」

 

 

東條さんが一瞬見せた悲しい瞳。
かつて愛した女性を罪に問う。
それは私の想像を遥かに超える辛さだろう。
どんなに平気そうに笑っていても、彼の心は泣いていた。
東條さんと神道さんの話から、問題が大詰めにきていることを知った私。
何時になったら八神さんと会って話ができるのだろう。
このまま数ヶ月も会えなくなるなんてことはない?
想像しただけで目にじわりと涙が浮かぶ。

 

 


カウンターの奥から出てきた東條さんは、
私の様子を覗き込むように見ると、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。
そして優しく微笑んで、宥めるように話しだした。

 

 

 

東條 「なごみさん、仕事は何時から?」
なごみ「来週から復帰です。
   あまり嬉しくはないんですけど」
東條 「そうか。
   だったら今夜、私に付き合ってくれるかな。
   一緒に配達に行ってほしいんだ」
なごみ「配達、ですか」
東條 「そう。
   お得意様からコーヒーの配達を頼まれていてね。
   今回はオードブルのオーダーも入ってるんだよ」
神道 「オードブルか。
   花見もピークで夜桜見物も今が一番多いだろう」
にわか「そうですね。
   桜と言えば、六義園のしだれ桜は見事ですね。
   流れ落ちる滝のような光景は毎回感動します」
なごみ「そうなんですね」
東條 「店はにわかちゃんと神道に任せるから、
   君はこれから私とドライブね」
なごみ「はい。分かりました」

 

 

私の傍には心温かく頼もしい人たちが居てくれる。
常にできない理由は考えず、何事にも動じない強さを持つ八神さん。
自分に自信を持ち、いざという時はプライドを折って仲間を守る逢坂さん。
過去は引きずらず、弱い者を守り支える東條さん。
大将の威容を持ち、決断力と行動力を兼ね備える神道さん。
頼りない私を守るように存在してくれる四人の勇士。
なのに何故、私はいまだ強くなれないのだろう。
力のコントロールもできず使いこなせない。
そしてたった少しの我慢もできず、
八神さんに会えない寂しさにすぐ打ちのめされる。
這い上がることのできない蟻地獄に落ちた気分の私は、
東條さんの温情にすがりつくのがやっとだった。

 

 旅立ち


(続く)

 

この物語はフィクションです。
  
  

 


 

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