愚痴のこぼし方 | 悪態のプログラマ

悪態のプログラマ

とある職業プログラマの悪態を綴る。
入門書が書かないプログラミングのための知識、会社の研修が教えないシステム開発業界の裏話は、新人プログラマや、これからプログラマを目指す人たちへのメッセージでもある。

ITpro の「新入社員諸君への提言 」という記事を読んだ。

新入社員を迎える「上司・先輩へのお願い(2ページ目)」として、

 ぜひ,いい話をたくさん聞かせてあげてほしい。しかし,現実は全く逆になっていないだろうか。特に,ビジネス環境が厳しい昨今ではともすれば愚痴っぽい話が多くなる。話題に出てくるのは,「会社の経営状況が厳しい」,「他社の製品に比べて当社の製品は劣っている」,「うちの上司はダメだ」など,新入社員の夢を砕いてしまうものばかりだ。彼らは入社前に聞いた勧誘の話とは相当異なることにあ然としてしまうだろう。


とある。

私が新入社員だった時も、職場では「いい話」よりも「悪い話」を聞く方が多かった。特に、ワンマン社長への不満、給与面での不満、長期の出向が多いことへの不満など。そんな雰囲気を受けて、新人同士の会話もネガティブな話が多かったように思う。

今でも、毎年のように入社後1ヶ月もしないうちに辞めてしまうような新人がいるが、先輩達の「悪い話」が、彼らの背中を押しているということは否めないだろう。


しかし、私は「悪い話」自体を全て否定する気にはなれない。

引用元の記事は、

 以前,営業担当の役員をしているときに,ベテランや中堅の社員が若手を相手にして,会社の愚痴を言っているのを聞くと,必ず「会社の良いと思う点と悪いと思う点を両方すべて挙げなさい」と指摘したものだ。良い点がたくさんあることが分かっていて悪い点(改善点)を指摘するのは認めた。

 だが,良い点を挙げられず,悪い点だけを強調する場合は,退社を勧めることにしている。悪いことだけしか思い浮かばない会社に勤めているのは当人にとって不幸だし,その愚痴を聞いて感化されるかもしれない若者はかわいそうだ。会社にとっても迷惑である。


と続くのだが、そこまで言うのは、いささか乱暴ではないだろうか。

社員が会社の良い点を見つけられない理由の何割かは、その個人の特性(批判的な性格など)によるものだろう。しかし、他の何割かは会社側にあるはずだ。彼が会社に何を求めているか、ということを聞く前にクビを切るのは、会社にとって、もったいない話である(引用中、自分が「認めた」人の指摘だけを「改善点」と書いているのは意図的なのだろうか)。


もうひとつ、愚痴や不満には、それを口にすること自体が、ストレス解消になるという側面もある。また、職場の中で「愚痴の言い合い」をすることによって、結束力が高まるようなことすらある。

要するに、「悪い話」をするなら、相手を選べということである。冒頭のような影響を考えると、新入社員に対して話すのはあまり好ましくないだろう。また、話の内容にもよるが、社外の人間に話すのもよろしくない。会社として非公開の情報は社外の人間に漏らさない、というのが、社会のルールだからだ(当ブログのように、匿名で悪態をつくようなことはあるかもしれないが)。

愚痴や不満は、同僚に向かって言うのが無難である。もし可能なら、上司に向かって言う方が理想的だ。まともな上司であれば、それを「相談」として受け止めるだろう。場合によっては、対策に取り組んでくれるかもしれない。そうなれば、ストレスの解消のみならず、悪い状況の改善にも繋がる可能性も出てくる。


では、新人に対して、悪いことは隠しておけというのか? という人もいるかもしれない。確かに、後から知ったほうがショックが大きいということもある。

もし、新人に伝えておきたい「悪い話」があるのなら、なるべく最後はポジティブに締めくくるようにしたい。悪い状況があるのなら、そうした状況に対して、自分(あるいは会社)はどのように対処しているのか、といったことを付け加えて話すようにするのである。例えば、ただ「うちの上司はダメだ」と嘆くだけではなく、「そんな上司とはこう付き合え」と付け加えてやれば、新人のためになるだろう。

「対処なんてやってないよ」というのであれば、いい機会なので、考えてみるといいだろう。自分の力ではどうしようもないこともあるかもしれないが、それなら「自分が社長ならこうする」というような想像でもいい。

愚痴を言うのは誰でもできるが、それだけでは問題解決能力は育たないのだから。





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