手をつなぐおじさんの総裁選で蘇った自民崩壊のA級戦犯 | 永田町異聞

手をつなぐおじさんの総裁選で蘇った自民崩壊のA級戦犯

民主党政権がお粗末なのはわかりきったことだが、候補者五人がもっぱら民主党批判を唱和して、それぞれの意見の違いをはっきりさせない自民党総裁選は、「手をつなぐおじさんの会」をことさら強調したショーのようで、気色の悪さといったらなかった。


民主党が喧嘩ばかりしているからといって、いまさら「一致団結箱弁当」を持ち出さなくてもよさそうなものだが、論争なき総裁選に傾けたマスメディアの異様な情熱や、野田首相が間髪を入れず安倍新総裁に祝いの電話を入れたという報道をながめるに、世の中やはり、「体制翼賛」に向かっているのかと、なおさら不気味に思える。


それにしても再び安倍晋三をトップに選ぶ自民党というのは、よほど寛容の精神の持ち主が多いとみえる。


参院選で「私をとるか、小沢さんをとるか」と国民に迫った末に惨敗、「安倍をとらなかった」民意を無視して総理の座にしがみつき、あげくの果ては、国会で所信表明までしておきながら、テロ特措法の延長に反対する小沢に以下のような恨み節を残して、唐突に政権を投げ出した。


「本日、小沢党首に党首会談を申し入れ、私の率直な思いと考えを伝えようと、残念ながら党首会談については、実質的に断られてしまったわけであります。先般、小沢代表は民意を受けていないと、このような批判もしたわけでございますが、大変残念でございました」


厚労省指定特定疾患の難病、潰瘍性大腸炎の持病が悪化したのが辞任の原因だったのだが、参院選と同様、嫌われ者「小沢」の名を出して自らをかばったのである。


もうあれから5年余りの時が流れたというのに、安倍の幼児性、あるいは「人のせい」にする性癖が改善されたとは思えない。


総理経験者として、いささか言動が軽すぎるのも気になるところだ。


彼は昨年5月20日、記者を集めて、菅首相の原発対応に関する、ある情報を吹聴した。その内容は、安倍が出したメールマガジンで知ることができる。




 安倍晋三です。

福島第一原発問題で菅首相の唯一の英断と言われている「3月12日の海水注入の指示。」が、実は全くのでっち上げである事が明らかになりました。

複数の関係者の証言によると、事実は次の通りです。12日19時04分に海水注入を開始。同時に官邸に報告したところ、菅総理が「俺は聞いていない!」と激怒。官邸から東電への電話で、19時25分海水注入を中断。実務者、識者の説得で20時20分注入再開。…しかし、やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです。◇


鬼の首でも取ったような、この文面のはしゃぎようはどうだろう。実際には海水注入は続いており、ガセネタだったことがのちに判明している。


国会事故調報告によると、事実はこうだったようだ。


「12日19時04分に海水注入を開始。19時25分、官邸にいた東電の武黒フェローは、吉田所長との電話により海水注入の開始を認識したが、官邸にて海水注入のリスクについて検討中であったため、吉田所長に対していったん停止を指示した。吉田所長は、テレビ会議システムの発話上、海水注入の中断を命ずるも、実際には継続しており、海水注入は中断されなかった」


その後、筆者の知る限りでは、元総理として一定の影響力をもつ安倍がこの偽情報を公に訂正した形跡はない。人間の品格としていかがなものか。


どの候補者が総裁になっても、似たようなものであるが、もしもマスメディアが喧伝するように自民党政権が復活し、安倍が首相になるようなことがあったら、安倍版「決断できない政治」ショーの再現を、いやというほど見せつけられるに違いない。



 新 恭  (ツイッターアカウント:aratakyo)