「米国益にとっていい取引だ」と日米同盟の本音を語ったメア日本部長 | 永田町異聞

「米国益にとっていい取引だ」と日米同盟の本音を語ったメア日本部長

米国務省日本部長、ケビン・メア氏の「沖縄の人はごまかしとゆすりの名人だ」という発言が物議をかもしている。


こういうのを日本語では「味噌も糞も一緒」ということくらい、日本語に堪能なメア氏はご存じのはずだ。


基地問題の解決をあえて引き延ばし地元振興策名目に国からカネを出させ続けて稼いでいる建設業者や利権政治家がいることは否定できないが、あたかも沖縄県民全体がゆすりたかりの集団であるかのごとき、粗雑な講義では、品格が疑われても仕方がない。


昨日の夕方だったと思うが、メア氏の発言内容の全貌がしだいに明らかになってきた。昨年12月3日、国務省での講義の概略を聴講した学生がまとめ、日本の新聞各紙がネットで報じたようだ。


これを読んで筆者は、まったく別の記事にしてみたいという意欲をそそられた。同じ講義でも、どの部分に焦点を当てて切り取るかによって、記事は大いに違ってくる。


筆者が注目したのはこのくだりだ。


「憲法9条を変えるべきだとは私は思わない。憲法が変わることは米国にとって悪い。日本に在日米軍が不要になるからだ。憲法が変われば米国は日本の国土を米国の国益を促進するために使えなくなる。日本政府が支払う高価な受け入れ国支援は米国の利益だ。我々は日本でとてもいい取引をしている」


筆者ならこれを報道したい。さて、どういう記事になるか。ためしに新聞記事風に書いてみた。


◇前在沖米総領事のケビン・メア米国務省日本部長は、昨年12月の学生向け講義で「我々は日本でとてもいい取引をしている」と、いわゆる思いやり予算で在日米軍基地を米国の国益のために使うことができるメリットを強調した。


また、メア氏は「憲法9条を変えるべきだとは私は思わない。憲法が変われば米国は日本の国土を米国の国益を促進するために使えなくなる」とも語り、米国の永久軍事基地として日本をとらえていることも示唆した。


沖縄から8000人もの海兵隊員がグアムに移転するにもかかわらず、沖縄の新基地建設にこだわり続ける米国の本音が、「抑止」というより「米国の利益」にあることを、これほどあからさまに米国務省の高官が口にしたのは異例だ。◇


以上のような米側の本音は、専門家から見れば珍しくもないことだろうが、タテマエ論ばかりが横行する日本のマスメディアは、もっとこの本質の部分に向き合うべきではないだろうか。


おカネと遊興街のついてくる日本の基地、とりわけ沖縄で得た基地既得権を米国は決して手放したくないだろう。


面積でいえば、在日米軍の75%が集中している沖縄。その苦難の歴史は終戦の年の3月、米軍が上陸して始まった。


米軍は日本軍と地上戦を繰り広げた末、琉球列島米国軍政府を設立し、1950年代に入って基地建設を本格化した。中国に共産党政権が誕生し、朝鮮戦争が勃発したことがその背景にある。


米国は72年に施政権を日本に返還したが、その後も自由に基地を使用し続けることが沖縄返還協定の前提となった。返還後5年間、6500万ドルを米軍施設の改善や移転費として日本に提供させる約束をとりつけ、日本政府は国民に分からぬよう、防衛予算にひそかにもぐりこませてこの金額を支出した。


これが常態化したのがいわゆる「思いやり予算」という駐留経費負担であり、78年度から毎年、国家予算に計上され続けてきた。


思いやり予算は、78年に62億円だったものが年々増加し、2010年には1881億円にまで膨らんだ。


世界最強の第7艦隊の母港を提供し、米本土以外では最大の燃料備蓄、弾薬庫がある日本は、いうまでもなく、米国の世界軍事戦略にとって欠かすことのできない国である。


しかし、日本はいつまでも米国の言うことを唯々諾々と受け入れ、「抑止力」というタテマエのもと、その軍事拠点であり続けていいのだろうか。


メア氏の発言をきっかけに、米国恐怖症の菅政権であきらめかけた対等な日米同盟関係の構築を、いま一度、真剣に考えてみる必要があるのではないか。


新 恭  (ツイッターアカウント:aratakyo)