鳩山首相「ぶら下がり会見やめたい」はもっともだ
いわば広告のキャッチコピーのように、ワンフレーズをテレビを通して印象づけるのが巧みだった小泉純一郎が、首相時代に始めたのが、いわゆる「ぶら下がり会見」なるものだ。
一日中、首相の動向を追うのが仕事である内閣記者会の面々だけが、会見に参加できる。
この記者クラブに配属されるのは、駆け出しの政治記者であることが多い。首相の言動を仔細に本社デスクに報告するのが主な仕事である。
今日の毎日新聞に「鳩山首相『ぶら下がり』」やめたい」という見出しの記事が載った。
筆者は早朝、反面教師として貴重な番組「朝ズバ」でこの記事が紹介されたとき、「ぶら下がりをやめるのはいいことだ」と思った。つねに、記者の質問内容が空疎だからだ。
読者や視聴者は、政治家が誰のどういう質問に対していかに答えたかという、一連の流れとして情報を捉える必要がある。そうでなければ答えた人の真意はわからない。
ぶら下がり会見のうち、報道されるのは、概ね恣意的に切り取られた片言隻句である。
それが政局や世論に影響を及ぼすことなどおかまいなしに、「断片情報」について、いかにも重大であるかのごとく議論される。
さて、この毎日の記事だが、鳩山首相が「ぶら下がりをやめたい」と側近にもらしている理由として、「フリーの記者も参加するオープン会見の回数を増やしたいとの希望からだ」と、ここまではきっちり書いている。
ところが、そのあとに続けて、こういう背景説明を付け加えている。
過去の安倍、福田、麻生各政権でも、内閣支持率が下落すると、ぶら下がりの回数制限などが検討されてきた。発信する中身ではなく、やり方にこだわるのは、総じて政権が「下り坂」に入った時だった。
この部分を強調すると、見出しの「鳩山首相ぶら下がりやめたい」は、「オープン会見を増やしたい」という意図から離れ、首相が会見から逃げようとしているような、ネガティブな印象に誘導される。
「朝ズバ」の、みのもんた氏は懲りもせず、今日も、もののみごとにそれをやってのけた。反面教師の面目躍如である。ジャーナリストらニュースにかかわる人間は、この姿をもって自戒する必要がある。
ところで、3月27日の当ブログ でも書いたが、鳩山首相が、雑誌、外国メディア、フリー記者に記者会見を開放したのは、この国においては画期的なことであった。
海外ではオープン会見など当たり前のことだが、日本では、記者クラブという既得権ギルドと官庁のなれ合い談合のぬるま湯を守るため、自民党政権のもとでかたくなに情報閉鎖がおこなわれてきた。
小沢幹事長や岡田外務大臣が率先してオープン会見を始め、われわれ視聴者はインターネット中継で、さまざまな視点からの質疑応答の模様を見ることができるようになった。
記者クラブメディアだけの会見は、どうしても同質の質問が多く、その結果、報道の内容が横並びになりやすい。
フリーランスや外国のジャーナリストが加わることによって、さまざまな物の見方が提示され、そのネット中継からわれわれが得られる情報の質は格段に向上しつつある。オープン会見を増やすことは大歓迎だ。
一方、小泉元首相のワンフレーズポリティックス実現のために編み出された「ぶら下がり会見」は、一見、国民への情報開示サービスのように見えるかもしれないが、実態としては内閣記者会特製「失言拾い」の場になっている。
毎日新聞の記事には、さらに「複数の側近議員は引き続きぶら下がりを行うよう進言している」とある。これは内閣記者会、あるいは加盟社がそう望んでいると解釈したほうがよさそうだ。
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