小沢発言で普天間混迷深まるという日経記事を検証する | 永田町異聞

小沢発言で普天間混迷深まるという日経記事を検証する

今日の日経新聞、普天間基地問題に関する記事は、新聞の安直な作文法の見本といえるものだ。


参院選が近づくなか、小沢幹事長が普天間移設地選定に口を出し始めて、混迷を深めているというような内容である。


この記事のたった一つの材料は、今月1日、社民党の又市副党首と小沢幹事長が会談したさいの、小沢が発言したとされる以下のひとことだ。


「沖縄県議会の決議もあるし、鳩山君は県外、国外と言ってきたわけだから県内移設に決めたら政権のイメージダウンは大きい」


さて、この「ひとこと」を誰が聞いたかというと、もちろん、又市か、同席した両党の側近をおいてほかにない。


小沢は週一回の定例会見以外では、ひとことも報道陣にしゃべらない。だから、記者たちは会談後、小沢以外の人物から話し合いの内容を取材する。そのなかで、小沢発言が伝えられたのだろう。


キャンプ・シュワブ陸上案が浮上し、「県外、国外」が遠のいて苦境に立つ社民党の副党首が、選挙協力の話で民主党の最高実力者に会えば、当然、こういうたぐいの話をするに違いない。


「幹事長、鳩山首相は県外、国外と言ってきたわけですから、いまさら県内移設というのでは参院選に大きなマイナスですよ」


それに対して、小沢幹事長が相手の気持ちを斟酌し「そうだな、県外、国外と言ってきたからね」と相槌を打っても、少しも不思議ではない。


又市あるいはその側近が、会談終了を待ち受けていた記者団に中身を聞かれたとすれば、小沢が県内移設に難色を示したというニュアンスの伝え方をする。そこにも、さしたる違和感はない。


両党の間で、どんなやり取りがあったか分からないが、人は誰かに何かを伝えるとき、自分に都合のよい言葉だけを引っ張り出すものだ。


政治家にはいくつもタイプがあって、この相手にこう話したらこう伝わると計算しながら言葉を選ぶ人もいれば、逆に全くそんなことは頭にない人もいる。もちろん、伝わり方は予測できるが、そんなことどうでもいいと考える豪胆なタイプの人も少なくない。


小沢一郎はそれらよりもっと複雑で厄介な心理構造をかかえた人物であるかも知れず、伝聞による小沢発言が、小沢の意図によるものか、又市かその周辺が自党に都合のよい解釈を記者たちに披瀝したものかは、今の時点では確認のしようがない。


ただはっきりしていることは、小沢はメディアに対してある種のニヒリズムを持ちながらも、与党幹事長として史上初めてフリーランス、雑誌、外国人ジャーナリストに記者会見を開放し、そのなかでの発言のみ、自らの発言として認知しているということだ。


その意味では、伝聞にすぎない小沢発言を、「その通りだ」と小沢が認めるわけはないのであって、「普天間移設先を決めるのは官邸だ」という、首尾一貫した態度をいまだ崩していないと受けとめるのが妥当であろう。


そこで、今日の日経記事の中身に目を凝らしてみたい。この記事では、「与党関係者によると」という書き方で、小沢・又市会談の情報源を示している。おそらく又市自身が記者団に話したのだろうと筆者はにらんでいる。以下、原文のまま日経記事を掲載する。


与党関係者によると、小沢氏は1日に社民党の又市征冶副党首と選挙協力を巡って会談した際、「沖縄県議会の決議もあるし、鳩山君は県外、国外と言ってきたわけだから県内移設に決めたら政権のイメージダウンは大きい」と懸念を示したという。小沢氏自身は発言を否定しているが、県外・国外を主張する社民党への配慮がうかがえる。


(中略)小沢氏には、連立離脱に動く可能性が捨てきれない社民党の主張を盾に自らの存在感を誇示し、「政治とカネ」を巡る幹事長辞任論を封じる狙いがあるとの見方もある。

(以上、日経記事)


「社民党の主張を盾に存在感を誇示」して、「幹事長辞任論を封じる」。これはいったいどういう理屈であろうか。筆者の頭では理解できない。もっと噛み砕いた説明をしてもらいたいものだ。


それはさておき、この記事の意図はリード(前文)に書いてある。概略はこうだ。


「普天間基地移設問題が迷走を深めている。鳩山首相が5月末決着に向けて覚悟を表明。ところが沈黙を保ってきた小沢幹事長がここへきて県内移設に難色を示した」


選挙しか考えない小沢がしゃしゃり出て混乱させている。そんな構図の記事が書きたかったのだろう。小沢とくれば「政治とカネ」をひとこと文中に入れたいということで、先述の筆者に理解できない文章がひねり出されたと思われる。


社民と国民新党の意見が分かれ、鳩山首相の迷いが深まるなか、小沢が介入していっそう問題が難しくなっているという風な記事を一本書いて、仕事をした気になってビールでも飲みたい気持ちは、記者OBとしては分からぬではないが、新聞だけはいつまで経っても進化しないとつくづく思う。


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