政治献金関与をやめる経団連はどこへ向かうのか
カネの力でこの国の政策決定に関与し続けてきた日本経団連は、もはや観念せざるを得なくなったようだ。今年から傘下企業の政治献金の取りまとめをやめるという。
2008年に経団連から政界に流れた献金は、自民党へ26億9900万円、民主党へ1億900万円。
この巨額資金を野党となった自民党に渡してもメリットはない。
一方、政権を握った民主党は企業・団体献金の禁止などを盛り込む政治資金規正法改正案を今国会に提出するかまえだ。
民主党への献金を増やしたくてもできない状況といえる。「相手がいらないというのに渡しても仕方がない」(日経)と幹部からため息が漏れるのもうなずける。
政権交代で漂流しはじめた経団連に、大転換の兆候が最初に現れたのは事務局の人事だった。
昨年11月、経団連専務理事だった田中清が東京経営者協会に飛ばされたのだ。
昔と違い、経団連は事務局が全てのお膳立てを整え、会長らトップはその上に乗っかるだけの官僚的組織になっている。
そして田中といえば、事務局の中で自民党工作を一手に引き受け、政権党と財界のカネのパイプを握って裏で実権をふるっていた人物だ。次期事務総長の最有力候補だった。
経団連は反民主党的な旗を降ろし、徐々に新政権に近づく必要があった。鳩山首相の温室効果ガス削減宣言にエールを送った桜井正光率いる経済同友会に水をあけられているという焦りもある。
事務局から極端な自民党色を排除したかったのが田中人事の狙いだろう。
経団連の苦境は、御手洗会長の後任人事の難航というかたちでもあらわれた。財界総理といわれた名誉職なのに、御手洗の意中の人物、中村邦夫パナソニック会長はかたくなに就任を固辞し、最終的には本命とは程遠い米倉住友化学会長にお鉢が回ってきた。
今後、米倉氏がどのような方向に経団連を引っ張っていくのかは未知数だが、政治献金より、シンクタンクとしての機能を重視する方向に転じるのは確実だろう。
これで、経済団体主導ではなく、経営者と政治家の個人的な関係を重んじる米国スタイルになっていくのかどうか。
いずれにせよ、すでに様々な業界団体から献金減額という現実を突きつけられている自民党にとって、経団連の後ろ盾を失うことは党の存亡にもかかわりかねない。
資金不足の野党としてのぞむ初の国政選挙である今夏の参院選を戦い抜くのは並大抵のことではないが、これも長い間、豊富な資金力で戦ってきたがゆえの試練である。
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