藤井財務相辞意の真相 | 永田町異聞

藤井財務相辞意の真相

藤井財務大臣が、健康上の理由で辞意を固めたという。


同じ高齢でも、主計局に予算編成を丸投げして「母屋でおかゆ、離れでスキヤキ」とぼやいていればよかった塩爺とは違う。百家争鳴のなかでの政治主導はよほど骨が折れたに違いない。


ただし、素直に「体調不良」だけを、理由として受け入れられないのが、永田町界隈を往来する人々の性癖であり、経験的常識でもあろう。


メディアは当然、「政権に打撃」「背後に小沢一郎との確執」と、条件反射のように騒ぎ立てる。小沢をからませれば、それだけニュースバリューはあがる。


誰も藤井氏の心の中まで見通せるわけはない。おそらく通常国会での予算審議に耐えられる心身の状態ではないのだろう。


それでも、話のタネに、あえて辞意に至るストーリーを組み立ててみると、こうなる。


問題の核心は財務省にある。権力のど真ん中はどこか、その在り処を見つけたら、しっかりと食らいつく。それが財務省のすごさだ。


民主党政権が誕生した後、財務省は政権中枢へ二つのチャンネルを使って、アプローチした。


ひとつは、勝栄二郎主計局長と鳩山首相のライン、いまひとつは、香川俊介総括審議官と小沢幹事長のラインだ。


勝海舟の曾孫に当たる勝栄二郎は、若手官僚だったころ、鳩山の友人、大武健一郎(元国税庁長官)主催の勉強会を通じて鳩山と知り合い、おたがい一目置く間柄となった。


一方、香川俊介と小沢一郎とのパイプは、勝・鳩山関係よりもはるかに太い。竹下政権で官房副長官だった小沢の秘書官だったのが香川であり、仕事を通じた信頼関係が築かれている。


歴史的政権交代のあと、やがて予算編成作業が本格化し、その過程で、真の権力の所在を確信した財務省は、丹呉泰健事務次官を先頭に、民主党幹事長室を重視しはじめる。香川・小沢ラインの優勢は明らかだった。


税収大幅減で財源がないにもかかわらず、マニフェストにうたった暫定税率廃止にこだわり続ける鳩山首相。その意を受けて藤井財務相が動こうとしても、事務方の心は別の方角に向いていた。


税収が当初見通しより9兆円も落ち込み、国債発行も44兆円で歯止めをかけなければならない。その乏しい財源のなかでマニフェストをできる限り予算に盛り込むには、暫定税率維持しかない。


それが財務省官僚の考えだった。頼りにしたのは、当然、彼らが最高実力者とみなす小沢幹事長だ。


香川らが幹事長室に日参した成果があらわれたのが、「暫定税率維持」を含む12月16日の例の小沢要望だった。


要望を突きつけられた鳩山首相は、それでもまだ暫定税率廃止に執着したが、最終的には小沢の意見を受け入れ、「維持」に方向転換した。


財源確保がままならず、各省との調整が難航するなか、あくまで鳩山の意向を尊重し悪戦苦闘を続けた藤井財務相に、無力感が漂った。


高齢を理由に政界引退するハラを決めていたにもかかわらず藤井が財務大臣を引き受けたのは、鳩山の強い要請によるものだった。


西松事件に関する藤井のコメントをきっかけに、小沢と、かつてその忠臣といわれた藤井との仲は修復がきかないほど悪化していた。


そして、結局は小沢の意向に逆らえない鳩山への失望もあいまって、藤井の心がついに折れてしまった。


ざっと、以上のような藤井辞意に関する背景ストーリーを組み立ててみた。


一つ一つの事実の断片をつなぎ合わせるとこうなるし、今後さまざまなメディアで似たような報道がなされるだろう。


しかし事実の断片というものは、つながれてストーリーになったとたんに、限りなくフィクションに近くなる。


登場人物全ての心理や行動を把握している神のような存在がいない以上、真実は常に藪の中である。


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