日米関係を冷静に眺めたい | 永田町異聞

日米関係を冷静に眺めたい

とかく、日米関係というと、メディアは普天間基地がらみのギクシャクを語りたがる。


ところが、北朝鮮と関係を深めるミャンマー軍事政権の脅威に、日米政府がいかに連携して対処しようとしているかについての報道には、あまり熱心でないようだ。


今月5日、知日派のカート・キャンベル国務次官補がミャンマー訪問後に日本に立ち寄り、岡田外相と会談したことは6日の当ブログでもふれた。


そのさい、米軍基地もさることながら、実は、ミャンマー問題が話題の中心だったことを昨日のサンデープロジェクトで、岡田外相が明らかにした。


一昨日(7日)の午後、鳩山首相とミャンマー軍政のテイン・セイン首相が官邸で首脳会談をおこなったが、それを前にしたキャンベル・岡田会談で、ミャンマーについて意見が交わされたとなれば、タイミングはぴったりだ。 


2007年に国交を回復して以来、ミヤンマー軍事政権と北朝鮮の急接近は、アジアの安全を脅かしている。米国がもっとも懸念しているのは北からミャンマーへの「核」技術移転だ。


現実に今年に入り、両国の軍事協力ぶりを伝える情報が、亡命ミャンマー人たちの組織「ビルマ民主の声」や、米政府系の「自由アジア放送」などから、次々と発信されている。


6月には、ミサイル開発に転用できる磁気測定装置をミャンマーに無許可輸出しようとした北朝鮮系の会社を神奈川県警が摘発した。米捜査当局との連係プレーがあったといわれる。


米国は民主化指導者、アウン・サン・スー・チー女史の軟禁を非難して経済制裁を続けているが、8月のウェッブ上院議員に引き続いてキャンベル国務次官補がミャンマーを訪問し、対話路線に転じる動きが出はじめている。


日米にとって、ミャンマー問題が一筋縄でいかないのは、中国が軍政の後ろ盾となっているからだ。


ミャンマーも、成長軌道を突っ走る中国には、貴重な地下資源の供給庫である。


日本はこれまで、ミャンマーに欧米のような経済制裁をせず、柔軟路線をとってきたが、スー・チーさんの解放を求める議連の副会長でもある鳩山首相は新政権のトップとしてどのような姿勢でミャンマー軍政との首脳会談にのぞむべきか、微妙な立ち位置であったに違いない。


ミャンマーに対する軟化路線の真意をはかる意味でも、オバマ政権ナンバーワンの知日派、キャンベル国務次官補との意見交換は新政権にとって必要なことだっただろう。


結局、鳩山首相はこれまでの政権より、一歩も二歩も踏み込んだ民主化要求を以下のようにテイン・セイン首相に突きつけた。


「2010年のミャンマー総選挙までにスー・チー女史ら政治犯が釈放されれば国際社会から評価される」


「言論・集会の自由など民主化を進め、総選挙が我々の期待する方向で行われれば、日本が様々な支援を強めていくことができる」


ミャンマーで20年ぶりという来年の総選挙が民主的な手続きでおこなわれることを条件に、支援強化を示唆した形だ。


しかし、民衆への圧政を続けるミャンマーの軍事政権がそうやすやすと、民主勢力に権力の座を明け渡すとは思えない。中国の存在が強気にさせているからである。


民主国家とはいえない中国が世界の資源を漁り、軍事国家である北朝鮮、ミャンマーを支え、核拡散の脅威をふりまいている。


そのような構図があるかぎり、米国が民主主義国家である日本との同盟を重視するのは当然のことだ。


経済的利益のために中国の成長に期待し、「米中接近」が進むのは仕方がないとしても、その一方で、日米があい携えて「チャイナリスク」に対する備えを怠らないようにしなくてはならない。


その意味で、普天間をめぐる米国防総省筋の苛立ちを、日米関係の全てと錯覚しない、バランスのとれた判断力がメディアにも日本国民にも求められるだろう。


日経の「どう見る日米関係」というインタビュー記事に、ハーバード大教授、ジョセフ・ナイ氏が登場している。キャンベル国務次官補の先輩格にあたる知日派だ。


日米関係がごたごたしているという質問に対して、彼はこう答えた。


「長い目で見れば心配ない。上り坂の中国、先行き不透明な北朝鮮への対応などの共通利益のうえに日米安保は成り立っている」


これが、もっとも冷静でバランスのとれた日米関係の現状分析だろう。


オバマ大統領はいま、アフガン追加増派を求める軍と、慎重な姿勢をとる側近との間で、悩みの真っ只中にある。


カルザイ政権の腐敗はひどく、国民の貧困がタリバンの勢力を増強する悪循環に陥っている。米国民の間にも、増派反対の声が高まりつつある。


テキサスの陸軍基地における、米兵の銃乱射事件で多数の死傷者を出す惨事も起きた。


こうしたなか、オバマ大統領は13日に来日する。国内外の難問にぶつかって人気急降下の大統領を迎えるのに、鳩山首相のソフトなキャラクターはうってつけかもしれない。


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