沖縄基地への強硬姿勢とオバマ政権の苦境
強く押せば、おとなしくなる。そこで引けば、ついて来る。ずっと、アメリカは日本政府を思うがままにコントロールし、従わせてきた。
オバマvs鳩山。お互い新政権だが、人づきあい、国づきあいは最初が肝心だ。
米国は主従関係を再度、両国間に刻印しておきたいだろう。日本とすれば、政権交代を機に属国扱いはやめにしてもらいたい。
さて、新政権どうしの駆け引きの第一幕は、普天間の基地問題だ。
鳩山政権が「在日米軍基地のあり方を見直しの方向でのぞむ」とマニフェストでうたったものだから、元CIAのロバート・ゲーツ国防長官はオバマ訪日を前にして、したたかに先手を打ってきた。
来日するや、いきなり岡田外相、北沢防衛相に、こう釘をさした。
「普天間の代替施設なしに米海兵隊のグアム移転はない」
米海兵隊の普天間飛行場をキャンプ・シュワブ(辺野古)へ移設する日米合意を守らないのなら、8000人の海兵隊とそのファミリーのグアム移転はやめにするという。
いわば、静かなる脅しである。グアム移転をやめたら、あんたところが困るだろう、と言わんばかりだ。
ただ、グアム移転を「沖縄の負担を軽くするため」というのは、米側の掲げる表向きの大義名分にすぎない。
むしろホンネでは、米兵ファミリーの家や施設、インフラを整備するコストの60%ほどを日本に負担させるおいしい計画だと思っているだろう。
世界のどこへでも迅速に戦力を投入できる態勢づくりのため、グアム移転は、すこぶる米側に都合がいい。いずれ、グアムを、海兵隊のみならず空軍、海軍も合わせたハブ(拠点)にしようとしているフシもある。
ゲーツがなぜわざわざ「グアム移転はない」と白々しく言い放ってまで、日本政府に圧力をかけるのか。
簡単に言えば、支持率が低下しつつあるオバマ大統領の苦境と無関係ではないだろう。
今もっともオバマ政権を脅かしているのは、医療制度改革の問題だ。
医療保険をうけられない低所得層への救済策と、その財源確保のための富裕層への増税策が、共和党や民主党保守派の強い反発を呼んでいる。
献金の力でアメリカの実権を握る白人富裕層は共和党のみならず、民主党にも強い影響力を持っている。
そして、彼らの巨大資本がメディアを系列化し、言論界を支配している。報道は右傾化し、オバマへの風当たりは強まる一方だ。
そうしたなかで、日本に新政権が誕生し、「対等な日米関係」の展開を模索し始めた。
鳩山政権の外交・防衛政策に対する米メディアの先走り的批判は、そういう文脈でとらえておかねばならないだろう。
もし、訪日するオバマが、合意ずみの米軍基地問題で日本に譲歩したら、共和党、民主党右派、そしてジャーナリズムのさらなる批判は避けられない。
ブッシュ政権時代にラムズフェルドの後任として国防長官になり、オバマ政権に交代しても引き続き同じポストにいるゲーツは、ことさら、その思いが強いだろう。
ここは日本に強い圧力をかけてでも、プレステージの高いオバマ訪日を実現せねばならない。そう考えてもまったく不思議はない。
この米国の強硬姿勢に、日本政府はどう対応するのか。気の早い朝日は「辺野古容認強まる」、日経は「方向性定まらず」などと、見方はまちまちだ。
朝日は、岡田外相の「県外移設を断念」との発言を重視し、日経は、同じく岡田外相の「嘉手納基地統合案」にこだわっている。
いずれにせよ、鳩山首相はまだ態度を鮮明にしていない。社民党や、民主党沖縄選出議員、地元住民らの反応をうかがっている様子だ。
沖縄に米軍基地の75%もが集中し、これまでの政府が沖縄県民の痛みを知りつつ放置してきたのは、どうみても公正とはいえない。
米ソ冷戦が終わって20年が経ち、基地のあり方を見直すという民主党のマニフェストは、政権交代を掲げた以上、当然の公約といえる。
一方で、日米同盟が日本外交の基軸であり、これを崩しては東アジア共同体構想もリアリティのない危険なものとなるのは確かだろう。
ただ、終戦から64年も経つというのに、日本人にはまだ米国コンプレックスが抜けきらないのか、自国の事情を述べ、意見を主張すれば、米国首脳に嫌われるのではないかという強迫観念が対米外交につきまとっているように思える。
個人どうしだと、なんでも「イエス」と言ってくれる都合のいい人は、甘く見られがちだ。国どうしは、そうではないのだろうか。
もちろん、明らかに日本が従属的だったこれまでの二国間関係を、一気に対等に変えようとしたら大きな摩擦を生み、得策とはいえない。
しかし、少なくとも沖縄の人々の痛みを日米間でもっと共有できるような、実りある対話を日米首脳が交わすことができるなら、一歩二歩と、前に進めるかもしれない。
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