ダム建設凍結は「緑のダム」推進への第一歩
福祉政策には、社会保障と雇用という二つの柱がある。
そして公共事業には、モノをつくるということと、雇用を生み出すという、二つの側面がある。
すなわち、公共事業は福祉でもあるわけだ。
昨夜の報道ステーションで、月尾嘉男東大名誉教授がおおよそ以下のような趣旨の話をしていた。
エジプトに118あるといわれるピラミッド。どうしてこんなにつくったのか。
たとえば最初に建造を思い立った王が、技術者や労働者を集め、長年かけて一つ目のピラミッドを完成させる。
すると、ピラミッド建造の専門従事者チームとでもいえる集団ができあがる。
長い間、これで食べてきた人々を、完成後に失業させるわけにもいかず、雇用のために、ピラミッド建設事業が延々と続いていった。
つまり、ピラミッドの必要性よりも雇用を重視した政策だ。
日本のダム建設もこれに似て、ダムの必要性より地方の雇用対策という面があることは確かだ。その福祉的意義は否定しない。
しかし、道路もハコモノもダムも、つくり続けるには限界がある。あまり多くなると、その補修費、管理費だけで膨大な予算を食ってしまう。国全体としては、大きな負荷となるのだ。
なによりも、自然破壊は国の損失だ。ダムの場合、川の上流でできた土砂がせき止められて堆積し、下流から海岸へと流れる砂の量が減ることで、砂浜が侵食される。このため、突堤や人工岬の建設という別の公共事業が必要となる。
だから、治水利水にどうしても必要なダムは別として、事業確保と雇用を目的にした、工事のための工事はやめなければならない。
前置きが長くなったが、前原国交相が昨日、国直轄や水資源機構が進める56のダム事業について事実上、凍結する方針を示したことを評価したい。
6兆2000億円分の事業であり、継続すればさらにコストが膨らむのは確実と見られる。
昨今の節水技術の進歩で、水需要が減り、ダムの利水目的は薄らいだが、洪水対策、すなわち治水という面では効果がないとはいえない。ダム推進派はその点ををついて、凍結に猛反対するだろう。
それにつけても、民主党は「緑のダム」構想を、国民にもっとPRする必要があるのではないか。
森の再生である。日本の国土の73%は山地だ。
放ったらかしにされ、陽光が射し込まない森の土は、下草も生えず保水力を失い、やせ衰えている。豪雨時の土石流、がけ崩れの危険性が年ごとに増している。
森の保水力がもとに戻れば、ダムをつくるより、はるかに治水能力がある。
森の再生に投資し、そこに労働力が集まる条件を整えるのが将来の世代に対する政治のつとめであろう。
それと、農地の保護、拡大、農業者新規参入の促進だ。農地には治水の力も備わっている。
9月13日の当ブログで「農業政策の大転換」を訴えたが、その記事のなかで、減反による休耕田、耕作放棄地の増加、宅地転用などにより、この国の農地が減り続けている現状を書いた。
水を蓄え、食糧をつくる農地は「国民の命」そのものなのである。ゆめゆめ、マンションやパチンコ店に変えてもらっては困るのだ。
森と農地をよみがえらせ、年金、介護、医療を崩壊の淵から救い出すことに税金を使う。環境など成長分野の技術革新に重点投資する。そうしたパラダイムチェンジが政治に求められている。
贅沢でなくとも安心して生きられる社会にするには、人々が仕事を求めて集まってくる場所を変えねばならないし、変わらざるを得ないだろう。
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