金子国交相、談合温床の高速道入札方式を復活 | 永田町異聞

金子国交相、談合温床の高速道入札方式を復活

18日告示とはいえ、実質的には選挙戦真っ盛り。普段ふんぞり返っていた大物議員が、汗だくで走り回って庶民にお愛想をふりまいてゆく。


毎度のこととはいえ、選挙のときだけは、センセイがたの低姿勢博覧会を、こちらは寝て見ることができる。


今回の総選挙はとくに、閣僚経験者クラスがバタバタ落選しそうな気配が濃いためか、自民党の派閥領袖もうかうかしていられない。


民主党の若い女性刺客に恐れをなし、巨体をゆすって地元、石川県内をまわるキングメーカー、森喜朗の姿が、昨夜のテレビに映し出されていた。


好みのタイプではないはずの舛添要一まで応援に呼ぶほどの防戦ぶりは、自民党の危機の象徴にも見えた。


ところで、特定産業を意識した今年度の大バラマキ補正予算でも分かるとおり、政権与党はその立場を利用して、税金を使ったさまざまな選挙対策をうってくる。


その驚くべき一例が、今日の朝日一面トップに載った記事だ。金子国交大臣の要請で、高速道路会社三社がコストを無視し、分割発注、地元建設業者優先の入札方式に変更したという。


行政を私物化し、道路公団民営化の精神を踏みにじる、自民党救済のための、あからさまな選挙対策である。くわしく説明しよう。


政府は補正予算で、東海北陸道、上信越道、館山道など全国六区間を2車線から4車線に広げるため、計3510億円を盛り込んだ。このうち東海北陸道は金子国交相の選挙区を通っている。


これら六区間の4車線化工事をめぐり、金子国交相は6月初旬、小沢敬一建設流通政策審議官に指示を出した。


高速道路会社に対し、「建設産業は極めて厳しい経済状況にある」として、次の二点を要請せよというものだ。「分割発注の推進」と「地域要件の設定」である。


「分割発注」は、規模や技術力で業者をランク付けし、工程や工区ごとに発注を細分化する方式だ。中小企業に受注機会を増やす効果があるが、たとえば、1㎞の道路を100m単位で別々の業者に工事させれば、機材のリースや運搬の回数が増え、それだけコストが余計にかかる。


「地域要件」は、一定の地域内に本社または営業所を置くことなどを入札参加の条件にするもので、参加業者が固定され談合の温床になりやすい。


この二つの問題については、旧日本道路公団の橋梁談合事件で公団副総裁が逮捕されたあと、当時の建設省が平成11年12月27日、都道府県知事あてに以下のような要請をしている。


「行き過ぎた地域要件の設定や過度の分割発注は、入札に参加するメンバーが固定化されること等を通じて入札談合を誘発・助長するおそれがあるなど、市場における競争が制限・阻害されること等につながるため、競争の確保に十分配慮すること」


にもかかわらず、今回、国交大臣がそれを覆すような圧力を、こともあろうに民営化した東日本、中日本、西日本の高速道路会社三社にかけ、それを各社が受け入れたのである。


これは、とりもなおさず、道路公団の民営化が名ばかりで、高速道路会社は依然として国交省の配下にあることを示している。


株主構成は国交大臣99.95%、財務大臣0.05%。政府丸抱えの会社に、逆らう力はない。


道路公団民営化のまやかしについては、5月11日の当ブログに詳しく書いたが、簡単におさらいをしておきたい。


民営化の目的は、もうこれ以上、高速道路建設に血税を注ぎ込まないようにするためだった。


本来なら、高速道路会社は自己資金と借入金で高速道路を建設し、料金収入を、借金返済と、新たな建設資金にあてればいい。


ところが、税金で高速道路をつくる仕組みは巧みに温存された。「合併施行方式」というやつである。表面の薄皮づくりを高速会社が受け持ち、饅頭本体のアンコは税金投入でつくる。つまり、ほとんどが税金で賄われるわけだ。


そして、高速道路会社自身が自己資金と借入金で建設する高速道路についても、完成後に道路資産と借入債務を「保有・債務返済機構」に移し、機構は会社から受け取るリース料で借金を返す仕組みにした。


どうして、こんなこみ入ったことをするのか。会社から自主性を奪い、国交省と、道路族が実権を握る国幹会議主導で、高速道路の建設をどんどん進めるためである。


金子国交相が今回おこなった「要請」という名の「命令」は、まさに道路公団民営化の欺瞞性を物語るもので、自公政権の国民に対する背信行為ともいえよう。


そして、その悪質な行政行為が、地方の土建業界の支持をとりつけるための実質的な選挙対策であることは疑う余地がない。


なぜなら、かつて政府が談合の温床として、都道府県に注意を促した「分割発注の推進」ならびに「地域要件の設定」を、地元建設業界救済のためという名目で、おおっぴらに復活させたからである。


こんなスジの通らない政策は、保身に躍起となった政治家の、混乱した脳みその中でしか、思いつくはずがない。


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