エゴむき出しの自民党「麻生降ろし」 | 永田町異聞

エゴむき出しの自民党「麻生降ろし」

生きるか死ぬかのせとぎわで、人間のエゴはむき出しになる。自民党内の私欲渦巻く「死闘」は芥川龍之介の「羅生門」の世界を見ているかのようだ。


蛇を切って干し魚だと売っていた女が疫病で死に、羅生門の楼に横たわっている。飢え死にせぬよう、その女の遺体の髪を引き抜いてカツラにして売ろうとしている老婆がいる。


それを見つけた男が、その老婆に言う。「おれがあんたの着物を剥ぎとっても恨むまいな。そうせねばおれも餓死する体なのだ」


自民党は、安倍晋三、福田康夫と、総理の孫や子にして総理の器にあらざるものを総理にした。これでは選挙に勝てぬと、祭り上げたのが、これまた総理の孫、麻生太郎だった。


オタク文化の聖地やネット上で人気を博したこの男は、選挙の顔として登場し、解散すると偽って、総理のイスに座り続けたが、地方選の連敗で立場が危うくなるや、ついに解散を宣言した。


今ごろになって、彼の売っているのは人が欲しがる「干し魚」ではなく、「蛇」だったのだと、加担した責任を棚に上げて、大騒ぎが始まった。「蛇売り」では選挙に勝てず、失職する。「このままでは死屍累々となる」と大げさな言い草ではやし立てる者さえいる。


両院議員総会の開催を求める署名運動になだれ込む議員の波も、党とは別のマニフェストをつくって世間を欺こうとする動きも、どちらも見苦しく、この暑さの中、不快指数が増すばかりだ。


そして、恐るべき光景がテレビに映し出された。つい先日まで、味方を装っていた内閣の要、与謝野馨が、同じく閣僚の一人、石破茂をともなって、麻生官邸に乗り込んだ。むろん、暗に退陣を要求する話し合いをしたに違いない。


選挙にリスクのある消費税アップを麻生首相が宣言したのは、与謝野の強い進言があったからではなかったか。麻生首相があれほど頼りきっていた人物の背信の裏に、何が動き始めているのだろうか。


まさか、政治献金疑惑のある与謝野を総裁にして選挙を戦おうとする勢力があるわけでもあるまい。が、それでも麻生よりはマシと思うかもしれない。


自民党「夜の裏選対」、森喜朗、青木幹雄の二人のドンと、読売の総帥、渡邉恒雄は何かを画策しているのだろうか。


表向き、与謝野周辺は、東京都議選での惨敗にショックを受けたことを豹変の理由としているが、鋭い与謝野の目はそれだけで説明できるほど尋常ではない。


あさましい老婆と、老婆の着物を剥ぎ取る男は、いまの自民党には、うようよいる。


両院議員総会に必要な署名の数がほぼ集まり、週内に総会が開かれる可能性が出てきたという。


開催されれば、麻生退陣をあからさまに要求する声も噴出するだろう。


「自分は麻生政治の批判者だった、自民党を変えるために立ち上がった」と、総選挙で言い訳をするために、発言する議員もいるだろう。


もはや、全てが自分の身を守るために動いているとしか見えない。


選挙の顔として麻生総裁を選び、選挙協力を得るため公明党の定額給付金策をのみ、選挙に勝つため15兆円の大借金バラマキ補正予算を組んだ。


その自民党のセンセイたちが、選挙に勝つために、こんどは麻生総裁を引きずりおろそうと血まなこになる。


おまけに、連帯責任を負うべき閣僚までがその動きに参加しているとなれば、こんなスジの通らないことはない。


麻生首相ができのいいリーダーだとは、お世辞にも言えない。しかし、この人だけを悪者にして、今ごろになって「いい子」ぶるのは、品性下劣である。


昨夜の報道ステーションで、朝日の星浩編集委員は「ベンチでの殴り合いだけど、面白いから取り上げざるを得ない」とマスコミの報道姿勢の弁解をしていた。


グラウンドで民主党チームと野球をする前に、自民党チームのベンチ内で喧嘩をしている。そんなこと、本来は勝手にやらせておけばいい。


国民にとって大事なのは、グラウンド内で戦う本番の二大政党激突選挙である。


麻生降ろしに失敗したら、党のものとは別のマニフェストを掲げて戦う「ニセ改革派」がぞろぞろ出てくるだろう。違うマニフェストをつくるのなら、潔く離党して、新党を結成すればいいのだ。


カネがないというのはいい訳に過ぎない。離党した渡辺喜美らは資金不足に悩みながら、新党を立ち上げる準備を整えつつある。平沼赳夫の新党もできるだろう。


かつて44人を引き連れて自民党を離党した小沢一郎は、小沢自身と羽田孜が銀行から借金をし、新党の選挙資金を捻出した。


離党の覚悟などなく、保身のため内閣不信任案を否決する一方、寄ってたかって麻生首相を引きずりおろし、新しい総裁に顔をすげ替えたところで、国民の支持は得られず、むしろ自民党離れに拍車をかけるのがオチだ。


自民党の諸氏は党内という狭い世界で、無駄な労力を使うのはやめ、一刻も早く、総選挙で国民に向かい合うことだ。身を捨てる覚悟で開き直るしか、ほかに方法はないことを悟るべきである。


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