総務省官僚の思惑絡みで混迷する日本郵政社長人事 | 永田町異聞

総務省官僚の思惑絡みで混迷する日本郵政社長人事

日本郵政は、いちおう民営化して株式会社になったといっても、現時点では株の100%を財務大臣が保有する。株主が一人しかいない会社なのである。


その株主総会が6月末に開かれる。普通の会社なら、株主総会で選任された取締役会が選ぶ人物が、そのまま社長に就任する。ところが、日本郵政の場合は、それに加えて総務大臣の認可が必要だ。


つまり、財務相が株主総会で選任した取締役たちが、取締役会を開いて社長を選び、それを総務相が認可するという手続きをとることになる。


簡単に言えば、続投に意欲を燃やす西川善文社長がそのまま日本郵政のトップに君臨するためには、与謝野馨さんと鳩山邦夫さんのお許しが必要だということだ。


日本郵政株式会社。4つの事業会社を合わせたグループ連結の総資産327兆円、09年3月期の連結純利益4227億円。この民営化をめぐってはいまだに賛否両論がある。


今日のブログのテーマは日本郵政社長人事をめぐる権力争いという、いささか生臭い側面に絞りたい。


今、表面に出ているのはこういうことだ。昨日開かれた、日本郵政の取締役会は、西川社長を含む9人の取締役全員の再任を、株主総会に提案する方針を決定した。それを西川社長自らが記者会見して発表した。


これについて、当然、鳩山総務相の反応が報道各社の関心のマトとなる。かんぽの宿問題が発覚して以来、西川攻撃の手をゆるめず、麻生首相の暗黙の了解のうちに反郵政民営化キャンペーンを続けてきたからだ。


案の定、鳩山総務相は強い調子で持論を主張した。「日本郵政が国民の財産をかすめとって売り飛ばそうとした。(社長の)責任がないことを私が認めれば、正義を捨て去ることにつながる」


当然これは、西川社長の再任を認可しない意思を表明したと受け取れる。


ならば、株主の立場にある与謝野財務相はどうお考えか。以下のように述べて、いささか暴走気味の鳩山さんに釘をさした。「全ての閣僚は首相の指揮下にある。総務相の権限も内閣から付与されている」


「西川善文社長が辞めたら、もう民間には社長を引き受ける人などいない」と西川社長を援護する財界首脳に配慮した発言でもある。


ところで、鳩山さんはなぜ、こんなにも強硬姿勢なのか。かんぽの宿をめぐる諸問題は1月10日の記事 を参照していただくとして、今日は別角度、すなわち総務省官僚との共同戦線という視点から話を進めたい。


総務省は旧郵政・自治・総務の3省庁が統合してできたものだが、役所の人事、予算、組織というものは融合せず、割拠したまま残るのが通常であり、省庁再編が名ばかりとなるゆえんだ。


つまり、旧郵政・自治・総務の大きく分けて三つのグループが勢力争いをしているのが実情で、その象徴が、事務次官ポストをどのグループが取るかという、国民にとってはつまらない問題なのである。


現在の事務次官は自治省出身の瀧野欣彌。昨年夏の人事で郵政省出身の審議官、鈴木康雄が事務次官に就任すると見られたが、瀧野が留任、鈴木の昇格が見送られた経緯がある。


郵政省グループにしてみれば、小泉政権以来、郵政民営化への不満がたまっており、人事的にも不遇をかこつ声があった。


そこに、小泉・竹中改革に反発してきた麻生首相やその盟友、鳩山総務相が登場し、これまたうまい具合に「かんぽの宿」という格好の民営化攻撃材料があらわれたものだから、郵政系官僚は色めきたった。


「失地回復」を胸に、鈴木や、同じ郵政出身の審議官、寺﨑明らはさぞかし鳩山さんを持ち上げたことだろう。


西川社長を辞めさせ、後任社長に郵政出身の團宏明副社長が就けば、今後も影響力を及ぼし続け、郵政系官僚の天下り指定席にすることだって可能かもしれないのだ。


日本郵政の「悪」を打ち砕く正義の味方という鳩山さんの自己陶酔的な勢いに、鈴木審議官らの後押しが拍車をかけ、ブレーキが利かなくなった。そこで困った与謝野さんが前述の発言をして制御装置の役割を果たしたというわけだ。


ここまでくると、「鳩山邦夫もっとやれ」と思っていた麻生首相も、さすがに財界や党内の民営化推進派に配慮せざるをえない。そもそも衆院3分の2の再議決という、法案成立の「打ち出の小槌」を得たのは小泉さんの郵政選挙のおかげだった。


しかし、総務省出身の首席首相秘書官、岡本全勝や、郵政民営化反対の郵政族、山口俊一首相補佐官に取り囲まれているだけに、麻生首相も身動きが取れない。


いまのところ、世論の風向きを見ながら、日本郵政社長人事については態度をぼかすしかない、というのが実情だろう。


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