二階経産相も聴取という検察、真の狙いは何か | 永田町異聞

二階経産相も聴取という検察、真の狙いは何か

小沢代表秘書の事件に関するテレビ報道はやや喧しさばかりが目立っていたが、今朝になってようやく画一性から脱した冷静な議論も見受けられるようになった。テレ朝・サンデープロジェクトが、「国策捜査」と批判する声も出ている検察の捜査のあり方や目的に焦点を当てたのはその一例だ。


この番組で注目されたのは、検察OBで、いまは大学の教授をしている郷原信郎の、以下の発言だ。


「実際には西松建設がお金を出していることを知っていても、名目上、政治団体から寄付を受けたのであれば、政治資金収支報告書に政治団体名を記載しても違反ではない。政治団体が実態の無いダミー団体で、しかも献金を受けた側がそのことを把握していたと立証されない限り、政治資金規正法違反とは言えない」


郷原は政治資金規正法がらみの捜査に何度も携わり、この問題に精通している。その郷原が、政治資金規正法は実質的な資金提供者を報告書に記載すことを求めておらず、今回のケースを虚偽記載という罪に問うのは難しいとしている。しかも「常識的には手をつける事件ではない」と明言しているのである。


ならば、検察がどういう理由で、この微妙な時期にいきなり強制捜査に着手したのか。虚偽報告などという微罪より、もっと大きな獲物を狙っているのだろうか。そんな田原総一朗の質問に対して、郷原は「この先に何があるのか全く想像がつかない」と首をひねる。


この件で、4日の当ブログでは、検察の見解について次のように書いた。


西松建設は「企業から政治家個人への献金」を原則、禁じている政治資金規正法の網の目をくぐる方法として「新政治問題研究会」、「未来産業研究会」という団体をつくり、会社のOBを代表に据えた。小沢一郎の「陸山会」はその二団体から計2100万円の寄付を受け、会計責任者である公設秘書、大久保隆規は、その通り03~06年の政治資金収支報告書に記載した。検察の見解は、大久保が実際には西松からの迂回献金と知りながら受け取っていたもので、ゆえに政治資金収支報告書は虚偽記載だというわけである。


ところが、郷原の話によると、大久保が実際には西松からの迂回献金と知っていても、それだけでは罪にならない。二つの政治団体に活動実態がないこと、加えて全くのダミーであるのを大久保が知っていたことまで実証せねばならないということになる。確かにこれは容易ではない。政治資金の法律に詳しい小沢一郎の強気の背景はそこにあるのかもしれない。


小沢と西松建設との、旧田中派以来とおぼしき癒着はもちろん批判されてしかるべきだが、法律は法律として別に考える必要があるだろう。


それにしても、毎度のことながら「政治とカネ」の疑惑が検察サイドから持ち上がると、メディアの報道合戦が過熱する。「特オチ」を恐れ、「特ダネ」を求めて社会部記者は検察幹部らに夜討ち朝駆けし、記事の質を度外視した“早耳競争”に狂奔する。テレビは、事件の劇場となり、政治の本筋が遠くにかすんで見えるようになった。


総選挙でこの国を変えたいと意気込んでいた人たちには、残念な状況であろう。自民党を中心とする今までの政治をそのまま続けるのがいいのかどうか、ここは冷静に考えたいところだ。


さて、東京地検特捜部は「なぜ小沢だけなのか」という批判に背中を押されるように、西松から献金を受けたとして名前の挙がっている自民党議員にも、捜査の手を広げる姿勢を示しはじめた。手はじめなのか、この人だけでお茶を濁すのか知らないが、和歌山の公共事業に絶大なる影響力を持つ経産相、二階俊博への事情聴取をする方針らしい。


二階の場合は、西松社員の個人献金を装ったカネを受け取ったり、3年間で計838万円分のパーティー券を複数回に分けて小口で買ってもらって、西松からの献金と分からないようにしていたようだ。


政治にカネがかかるのは間違いないが、個人献金だけの乏しい資金で活動している議員もいる。ただ、残念ながら、自民党の派閥で親分としての求心力を保つには、「若手のカネの面倒をみる」ことが不可欠という面も否定できないだろう。それと、地元有権者対策に大金を使う議員も多い。


たとえば、ある議員の後援会に入れば会費は5000円必要でも5万円の温泉旅行に夫婦で連れて行ってもらったり、会合に参加すれば弁当に1万円がついてくるといった、有権者側の期待もなきにしもあらずだ。政治家の金権体質の背景にはこうした一部国民の意識の問題もある。


ついでに、政治家のパーティーについてもふれておきたい。パーティーに参加する顔ぶれは、事業家や官僚のほか、いわゆる政治ゴロ、ブローカーといわれる胡散臭い連中も多い。政治ゴロは裏情報を持ち込んだり、何だかんだと理由をつけて政治家からカネのおこぼれにあずかるのが仕事だ。


秘書が手分けして2~3万円のパーティー券を2000~3000枚ほど売りさばいて五、六千万円を稼いでも、税金は一銭もかからない。世間一般から見れば何という特権階級だろう。


政治資金規正法は改正されるごとに厳格化されてはいるが、まだまだ抜け道は多い。政治家個人に対する企業の政治献金をなくすというのなら、完全にそれを一掃できる法律にしなければならないはずだ。


ところが、問題を本質的に解決する法律をつくるのを嫌うのも国会議員である。法律をきっちり整えすぎれば、自分たちの利権を失うから嫌だと考える政治家の何と多いことか。


こうした、日本の情けない政治体質を変えるために、われわれ国民は総選挙で権利を行使する必要がある。一回の選挙で劇的に日本の政治が変わることはないだろうが、いざ選挙になれば、変革へのきっかけをつくるのだという自覚をもって、冷静な判断のもとに一票を投じたいものだ。 (敬称略)


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