「NHKは政府の広報だ」と朝日新聞社会部が批判の論陣 | 永田町異聞

「NHKは政府の広報だ」と朝日新聞社会部が批判の論陣

朝日新聞社会部が久しぶりにNHK批判の論陣を張っている。記事の内容を要約すると下記のようなものだ。


「政府などの主催するシンポジウムの運営をNHKの子会社が受託し、それを教育テレビやBSの放送番組として全国に流している。発注側が暗黙のうちにテレビ放映を期待していると分かったうえで営業攻勢をかけている。これはスポンサーをつけず受信料で番組制作するのが建前の放送法に違反しているのではないか」


この記事が出たのが8月22日。署名記事であり、社会部出稿と分かる。23日に今度は社説で同じことを取り上げた。相当この問題を重要視しているとみえる。NHKが政府の広報に成り下がっていると言いたいようだが、もともとNHKにはそういう体質がある。NHK予算は官僚の審査を受けたうえで、国会の承認を得る必要があるから、政治権力とつながりやすい。


かつての会長、島桂次は宏池会系、海老沢勝二は経世会(平成研)系といわれた。朝日新聞とNHKはどちらも社員のエリート意識が強く、昔から関係が深い。朝日からは戦後、前田義徳ら3人を会長としてNHKに送り込んでいる。


ところが、5年前に朝日の社会部記者、本田雅和が「NHKは政治家の介入で慰安婦特集番組の内容を改変した」という趣旨の記事を書いたことから、「事実の歪曲だ」と反発するNHKと激しく対立、他のメディアを巻き込んで大騒ぎとなった。


安倍晋三、中川昭一による放送前の圧力があったのかどうか、圧力によって番組内容が変わったのかどうかということが、問題の焦点となり、結局、本田記者の取材に詰めの甘さがあったことを朝日は認めた。ただ、記事の訂正には応じなかった。


このとき朝日社内では、政治部を中心に社会部に対する批判の声が上がっていたが、本田記者に対する処分はおこなわれないまま時間が経過。世間の関心が薄らいだ2006年、本田は会員制読者サービス部門「アスパラクラブ」運営センターに移され、翌年には北海道報道センターへ左遷された。


本田が師と仰いでいた朝日の先輩女性記者、松井やより(故人)は慰安婦問題やジェンダーフリーの闘士として知られた人物だ。問題の「女性国際戦犯法廷」を主催したのは松井らの団体だった。現在の朝日の社会部に、そうした血脈が受け継がれているかどうか定かではないが、もしそうだとすれば、いまだにNHKと朝日社会部の間に確執が残っていないとも限らない。


今回のNHK関連の記事は、奥山俊宏記者らの署名入りである。奥山は「内部告発の力」という著書で知られ、偽装請負問題の取材にも奔走している。かなり筋金入りの社会部記者らしい。


NHKが子会社を隠れ蓑にして政府からカネをもらっていながら、それを視聴者に知らせないまま、政府広報の効果を持つシンポジウムの番組を流している。そういう彼らの問題提起はいちおう理解できる。


ただ、朝日の記事だけでは片手落ちなので下記のNHK側の反論にも目を通していただきたい。


「NHKの関連団体は、シンポジウムやフォーラムの受託にあたって、社会的に意義あるものに限って受注し、広く視聴者に見ていただくのがふさわしいと思われる場合に放送しています。放送の是非はあくまでNHK自身が判断するものです。NHKで放送することを約束して、業務受注のための営業活動を行うことはありません」(概略)


さてこれで奥山記者らが納得できるかどうか。少なくとも、放送するときには「○○シンポジウム実行委員会主催」とかでは不十分で、その実体である発注者名も明らかにしなければならないということだろう。


しかし、奥山記者は知っているだろうか。NHKが事実上のCM放送をしていることを。


たとえば、ある自動車企業の車を「NHKスペシャル」などの番組で使い、その会社から協賛金をもらうなど、子会社、孫会社を通して受信料以外のカネが流れ込んでくる。そのようなことが実際におこなわれているのである。


国民から受信料を徴収しながら、ファミリー企業を増殖させ、さまざまな方法でカネを稼ごうとする。それが、NHKの実態であり、官僚ピラミッド組織そのものだ。


奥山記者にはこのさい徹底的にNHK問題を掘り下げてもらいたい。さもなければNHKから激しい反攻を受けて追い詰められた5年前の“怨念”のなせる、単なるリベンジ記事と受けとめられても仕方がない。             (敬称略)


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