うちに増子くんというスタッフがいます。
普段、病院からお電話があった場合、
時間帯によりますが、その日のうちにお運びして、
すぐに打ち合わせに入るケースが多いのですが、
彼の場合、
「お仕事をいただくことにはなりましたが、
打ち合わせは今日はしてきませんでした」
と帰ってくることが多いのです。
前々から、どうしたんだろう、
そのうち、聞かなければ、と思っていました。
彼もまた、お父様の葬儀を通じて、葬儀の道を志すことになった一人。
「人生の節目に立ち会う仕事=冠婚葬祭の仕事」を探して、うちに来てくれました。
以前は、ファーストフードのスタッフでした。
アルバイトから店長まで昇格して、合計10年ほどいたというから
相当なベテランですよね。
柔和な笑顔で「いい人」オーラが出ている感じ、
前の会社、彼がやめると聞いて困ったんじゃないでしょうか。
で、話を聞くなかでわかったことですが、
「喪主様が、お葬儀のことなど、
いろいろ考えられる状態になるまで、
お待ちしたかったのです」とのこと。
「確かにお葬儀なので、等しく悲しいことは確かなのですが、
お客様によって、打ち合わせの時の表情はさまざまです。
時折故人の思い出を語り始め止まらない方、本当に事務的な方・・・
それぞれ、故人様とのご関係がしのばれるというか・・。」
「中には、ショックが大きすぎて、あまりに急なことで、
現実を受け入れられない、打ち合わせどころではない方もいらっしゃいます。」
そんな時は、ドライアイスをあてて、日をあらためて伺うのだそうです。
お葬儀のことは、決してゆっくりはしていられないのですが、
それでも、一晩時間を作って差し上げることはできます。
「喪主さまが、決めることができる気持ちになるのを待つ」
彼なりの流儀だったんですね。