公開前から気になっていた映画。
今は1人では出かける自信がないので、主人に連れて行ってもらいました(^◇^;)
ことごとく就職活動に失敗した青山隆が、やっとの思いで就職出来た所は、所謂「ブラック企業」と呼ばれる会社だった。
遅刻したら罰金、残業代も付かず、上司からは毎日容赦ないパワハラを受け続ける。
実家にはもう一年半も帰っておらず、送られてくる野菜や果物は殆ど腐らせてしまい、たまにかかってくる母親からの電話には一方的に八つ当たり。
必死で週末まで耐え抜き、やっと休日を迎えてもまた巡って来る月曜日に怯え・・・・・
そんな日々を送っている内に、隆は次第に心が蝕まれて行くのを感じていた。
ある日、いつものように上司に怒鳴られ罵られ、サービス残業を終えて帰宅するため駅に向かった隆。
無意識の内にホームに倒れこもうとしたのだが、間一髪の所で救った男がいた。
派手なアロハを来た関西弁の男は隆に、小学生の頃同級生だったヤマモトだと名乗る。
強引に居酒屋に連れて行かれる隆。
しかし男に全く見覚えがなく、当時の同級生にヤマモトの素性を確かめると、3年の時に転校していった山本と言う同級生がいた事が判明。
記憶の端にぼんやりと残っている山本と、目の前にいる山本の差に違和感を感じながらも、天真爛漫にまくし立てる山本のペースに引きずられ、隆も次第に気持ちが解れて行った。
休日、アパートに一人でいた隆は突然、木をよじ登って来た山本に窓から声をかけられる。
驚く隆を無理矢理外に引っ張り出し、コンビニのカートを許可なく使って坂を下り始める山本。
子供の頃にしかやらないような遊びに戸惑いながら、隆は久しぶりに見上げた空の青さに癒される。
月曜日から金曜日までのネクタイを隆に買わせ、営業に対する心がけや顧客に会う時の姿勢・話し方などを隆に伝授する山本は、昔堅い企業に勤務していた事があると話す。
腑に落ちないながらも、隆は山本にアドバイスされた事を反芻しながら実践して行く内、大きな契約をまとめる事が出来た。
少しずつ仕事に対して自信を付けて行く隆だったが、新規で取れた大きな顧客を発注ミスで怒らせてしまい・・・・・・・
ここ!と言う盛り上がりがあるワケでもなく、恋愛的要素があるわけでもなく。
阿須賀君扮する青山隆が、上司役を演じた吉田鋼太郎にひたすらパワハラを受け続けるシーンは、サラリーマン経験(現40代世代、30、20代世代でブラック企業勤務経験)がある方には、多少なりとも自分の経験と重なる部分があるかも知れません。
観てて辛いシーンの連続です。
常識ではない考えられないような社訓を毎日毎日唱えさせられ、罵声を浴びせられ、目に見える成績だけでしか人間的に評価してもらえない日々を送って行く内に、肉体的疲労以上に心を殺されて行く隆を、阿須賀君がセンチメンタルに、キュートに演じ切ってました。
ゴミ溜めと化した部屋に置かれたベッドの上で、下着姿で眠る事も出来ずに悶え泣く阿須賀君の太腿がムチムチで、ちょっとエロかった(笑)。
そんでもって、この映画の主人公でもある「ヤマモト」を演じた福士蒼汰君。
若手イケメン俳優として盤石な彼ですが、ごめんなさい私はこれまで一度も彼を「イケメン」として見れた事がないんです(^◇^;)
だけど。
この映画を観て、初めて福士君がイケメンに見えました!!
周りは黒だ濃紺だのスーツで固められてる中、目の醒めるような色合いのアロハシャツと短パン・雪駄履きで、太陽のような笑顔の福士君は眩しかった。
死人のような生活を送っていた隆の前に、突然降って湧いたように現れ、プライベートにグイグイ入って来る山本。
戸惑いつつも、彼の底抜けの明るさと優しさに救われて行く隆。
仕事に前向きになり、やっと取れた新規大型契約を、一度のミスで先輩の五十嵐が担当を引き継ぐ事になります。
自分のミスのせいで、尊敬する先輩までもが上司に叱咤され、顧客にも嫌な思いをさせられていると思い込んだ隆は、また元の生活に逆戻り。
「これ以上迷惑をかけてはいけない」と最低限の事しかせず、会社の中でも息を潜めるようになった隆は、とうとう五十嵐からも「死ね」とまで言われ、会社の屋上から飛び降りる決意をするのですが・・・・・
「大切な人をもう失いたくない」と言う山本の切なる願いと、隠された過去が少しずつ明らかになって行く部分は、ハンカチ必須。
「仕事、変えるか辞めるかしたらどうや?」
と話す山本に、隆は
「そんな簡単な事じゃない」
と言うのですが
「じゃあ、仕事より簡単な事って何や? 死ぬ事は、仕事辞める事より簡単な事なんか?」
と切り返され、返す言葉を見つけられません。
ここ↑、本当に重要なシーンだと思います。
この映画は、ブラック企業のパワハラの実態の一部を題材として用いていますが、深刻な社会問題の一つである「イジメによる自殺」にも通じる部分があると感じました。
集団生活の中で、パワハラにしろ何にしろ「イジメ」を受ける事は辛い。
誰にも相談出来ない、簡単に放り出せない。
わかります。ほんっとーにわかります。
だけど、だからと言って、死を選ぶ事は勇気ですか?
死ねば全てが終わると、本当に思いますか?
本人はそれで救われると勘違いしてるかも知れませんが、死んで魂は成仏出来ると思いますか?
遺された家族が、友人が、恋人が、どれだけ悔やんで悲しんで辛い思いをするか、考えての決断ですか?
誰かに相談する事
別の道に逃げてみる事
仕事を辞める事
死ぬ事は、こんな事より簡単ですか?
たくさんの希望と感動が、観終わった後にコブクロの歌う「心」と共に押し寄せて来ます。
生き方に悩んでる人達、年頃の子供を持つ親御さん達に、是非是非観て欲しい映画です。
エンディングで流れる、バヌアツ共和国の自然の美しさに、心が洗われました。
私的に、4.5の評価です。