愉快な散歩道は、それほど長くは続かなかった。
すぐ脇で繰り広げられるバカ騒ぎも耳に入らないのか、うつむきながら額に手を当てるテレビドラマの警部ポーズで歩いていクロルが、サラの右手をクイッとひっぱった。
「そろそろ、目的地に着くよ。ほら、見えてきた」
先頭集団の瞳が、鮮やかな赤を捕らえた。
* * *
木漏れ日の当たる小道が途切れ、突然目の前に広がったのは、明るい日差しと赤い花を中心に様々な花が溢れる広場。
しゃべりながら来たせいもあるが、本当にあっという間だった。
時間にすれば5分もかかっていないように思える。
中庭に出るとき、楽チンなぺたんこ靴に履き替えたサラは、用意してくれたデリスにあらためて感謝した。
大きく深呼吸するサラの隣で、あの日はパニック状態だったルリがほぅっと吐息をつく。
「すごい、花の香りね……」
小道の途切れた先は、ほんの少しなだらかな芝生、そのの突き当たりには、強い香りを放つ小ぢんまりとした花畑、左手には木のベンチと古いブランコの置かれた小さな高台がある。
陽だまりの中で、咲き誇る花々。
遠くには小鳥のさえずる声と、葉ずれの音。
サラはまるで楽園のようだなと、あの日も、そして今も思った。
続々と到着する同行者たちも「こんな場所があったとは」と驚きの声を上げる。
そんな中、デリスがぽつりと呟いた。
「ここは……まだ、残っていたんですね」
筋張った手のひらで口元を覆い、懐かしむような悲しむような表情で立ち尽くすデリス。
サラが質問しようとしたとき、クロルは「じゃあ、そろそろいいかなー」と言いながら、サラの手をポイッと離した。
相変わらず気まぐれで考えの読めないクロルは「皆もっとこっちに来て」とヒラヒラ手を振りながら、ツアコンのように全員を広場の中まで先導する。
サラはもちろん、王子や重鎮たち、しんがりを守っていたらしい国王もついていく。
全員が広場におさまると、かなりギュウギュウだ。
その集団から1人飛び出したクロルは、サラとエールがほんの少し語り合った、少し小高いベンチのある場所へ進んでいく。
泥で汚れた靴のまま、遠慮なく椅子の上に飛び乗ると、全員の表情を見渡した。
「父様も……うん、全員揃ったよね?」
じゃあこれから皆に問題を出すからと、クロルは笑顔で告げた。
明るい日差しを受ける美少年……なのだが、どことなく違和感があるのは、きっと瞳が一切笑っていないからだろう。
「まずは、最近この場所に来たことある人ー?」
クロルが「あ、僕たちは別だよ」というと、ビシッと手を上げたリグルが「先に言えよ!」と恥ずかしそうに引っ込める。
リグルの遠吠えを聞き流すように、クロルは顔を王城側へ向ける。
「庭師サンは?」
小道の出口に、遠慮がちに立っていた小柄な男が、クロルの鋭い視線を受けて、怯えたようにブンブンと首を横に振った。
「ふーん、来てないんだ。ま、そーだろうね。あの茨の道、久しぶりに人が通るって感じだったし」
庭師と呼ばれた初老の男は、重鎮たちに注目される中、日に焼けた顔を真っ青にしている。
サラの居る場所から見ると、その男は国王と月巫女のすぐ脇にいる……そのせいもあるのかもしれない。
「じゃあ、気分が悪くなった人、吐きそうな人、いたら正直に手を挙げてー!」
またまたツアコン風に、高らかに声を上げたクロル。
全員が、その意図のカケラすら推し量ることができず、ただクロルの微笑を見上げていた。
【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
ごめんなさい、今回の話ギリギリで続き書き直すことにしました。短くてスミマセン。なんか、話がどんどん説明調になってしまい……頭が溶けてるせいもあると思います。祝100回のはずが、呪100回に……キ○コさんが行列でこないだそんなベタなマチガイをしたと言って、シンスケにボコボコにされていた、あれを笑った呪いだと思います。
次回は、ちゃんとしっかりクロル君の質問編です。すみませんー。
※本日より『探し物』の続編ファンタジー『拾い物』という短編が、アルファポリスさんの『WebコンテンツPickUP』コーナーに採用いただきました。
それに合わせて、内容を一部加筆修正しました。未読の方はぜひそちらでお茶を濁してください。いや、濁したいのは作者の方です、すみません……。
→ 【次の話へ】
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作者の短編&日々思うことを綴った『日常ブログ』もどうぞよろしくです。
すぐ脇で繰り広げられるバカ騒ぎも耳に入らないのか、うつむきながら額に手を当てるテレビドラマの警部ポーズで歩いていクロルが、サラの右手をクイッとひっぱった。
「そろそろ、目的地に着くよ。ほら、見えてきた」
先頭集団の瞳が、鮮やかな赤を捕らえた。
* * *
木漏れ日の当たる小道が途切れ、突然目の前に広がったのは、明るい日差しと赤い花を中心に様々な花が溢れる広場。
しゃべりながら来たせいもあるが、本当にあっという間だった。
時間にすれば5分もかかっていないように思える。
中庭に出るとき、楽チンなぺたんこ靴に履き替えたサラは、用意してくれたデリスにあらためて感謝した。
大きく深呼吸するサラの隣で、あの日はパニック状態だったルリがほぅっと吐息をつく。
「すごい、花の香りね……」
小道の途切れた先は、ほんの少しなだらかな芝生、そのの突き当たりには、強い香りを放つ小ぢんまりとした花畑、左手には木のベンチと古いブランコの置かれた小さな高台がある。
陽だまりの中で、咲き誇る花々。
遠くには小鳥のさえずる声と、葉ずれの音。
サラはまるで楽園のようだなと、あの日も、そして今も思った。
続々と到着する同行者たちも「こんな場所があったとは」と驚きの声を上げる。
そんな中、デリスがぽつりと呟いた。
「ここは……まだ、残っていたんですね」
筋張った手のひらで口元を覆い、懐かしむような悲しむような表情で立ち尽くすデリス。
サラが質問しようとしたとき、クロルは「じゃあ、そろそろいいかなー」と言いながら、サラの手をポイッと離した。
相変わらず気まぐれで考えの読めないクロルは「皆もっとこっちに来て」とヒラヒラ手を振りながら、ツアコンのように全員を広場の中まで先導する。
サラはもちろん、王子や重鎮たち、しんがりを守っていたらしい国王もついていく。
全員が広場におさまると、かなりギュウギュウだ。
その集団から1人飛び出したクロルは、サラとエールがほんの少し語り合った、少し小高いベンチのある場所へ進んでいく。
泥で汚れた靴のまま、遠慮なく椅子の上に飛び乗ると、全員の表情を見渡した。
「父様も……うん、全員揃ったよね?」
じゃあこれから皆に問題を出すからと、クロルは笑顔で告げた。
明るい日差しを受ける美少年……なのだが、どことなく違和感があるのは、きっと瞳が一切笑っていないからだろう。
「まずは、最近この場所に来たことある人ー?」
クロルが「あ、僕たちは別だよ」というと、ビシッと手を上げたリグルが「先に言えよ!」と恥ずかしそうに引っ込める。
リグルの遠吠えを聞き流すように、クロルは顔を王城側へ向ける。
「庭師サンは?」
小道の出口に、遠慮がちに立っていた小柄な男が、クロルの鋭い視線を受けて、怯えたようにブンブンと首を横に振った。
「ふーん、来てないんだ。ま、そーだろうね。あの茨の道、久しぶりに人が通るって感じだったし」
庭師と呼ばれた初老の男は、重鎮たちに注目される中、日に焼けた顔を真っ青にしている。
サラの居る場所から見ると、その男は国王と月巫女のすぐ脇にいる……そのせいもあるのかもしれない。
「じゃあ、気分が悪くなった人、吐きそうな人、いたら正直に手を挙げてー!」
またまたツアコン風に、高らかに声を上げたクロル。
全員が、その意図のカケラすら推し量ることができず、ただクロルの微笑を見上げていた。
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